三話
私にはいつも見る夢がある、その夢の中の私は黒いドレスを着ていて、私と同じ顔をした女の子を勇者として任命するの。
会った事がない筈なのに夢に現れて、そして夢を見て目を覚ます度に懐かしい気持ちになる、その子を私はずっと探しているんだ、でも・・・探し続けていても私はメアに会えない・・・。
リィターニア家、居間
今日もいつもの夢を見たアリシアは寝間着から制服に着替え朝食を食べる為居間にやって来た、居間には既に両親がおり、和やかに会話をしながら朝食を食べている。
「おはよ、父さん、母さん」
アリシアは両親に近付くと二人に朝の挨拶をする、そして椅子に座るとメイドが朝食を置いてくれた、メニューはバターを塗って焼いた食パンに目玉焼きにベーコンとコーヒーだ。
「おはよう」
「おはよーう」
両親は一人娘の朝の挨拶に優しく微笑みながら言葉を返した。
「アイリスから聞いたぞ?、馬車を奪って逃走した盗賊を捕らえたそうだな、お手柄じゃないか」
「騎士として当たり前よ、それに母さんが乗ってたしね」
「・・・、おいアイリス何の話だ?」
「もう!何で言っちゃうの!アリシア!」
前日、盗賊達に攫われた事を夫に隠していたアイリスは頬を膨らませながら大きな声を出す。
「あー、ごめん、盗賊に攫われた事、隠してたんだ・・・」
「アイリス、後でたっぷりと話そうじゃないか?」
「・・・はい」
頬を膨らませた様子から一転、夫の言葉を聞きシュンとした様子になったアイリスは、小さく頷いた。
「とにかくよくやったなアリシア」
「えへへ」
シュンとしている妻から視線を逸らし娘を見たオーグルはアリシアの頭を撫でる、憧れである父に頭を撫でら褒められるアリシアは頬を染めつつ嬉しそうに微笑んだ。
「あっ、そろそろ家を出なきゃ、行ってきます!」
居間の中の時計を見て登校しなくてはいけないと思ったアリシアは朝食をかっ込み、椅子に立てかけておいた剣とメイドが持っていた鞄を持つと居間を後にしようとする。
「弁当を忘れているぞ」
「あー!、ありがと!父さん!」
そして今日も弁当を忘れそうになったアリシアは、慌てて居間の机の脇に置かれている母が作った弁当を手に取り、鞄に入れると部屋から出て行った。
「さて話をしようじゃないか?、アイリス?」
「はい・・・」
娘を見送ったオーグルとアイリスによる、それはそれは楽しいお話が始まった。
オルゴン騎士学園
アリシアは前方に見えるオルゴン騎士学園の敷地内の馬車道を歩いていた。
「おうおう!、今日も乳でけーな!、アリシア!」
背中から強い衝撃を感じた後、一人の少女がアリシアの目の前に現れる、名はシールス・フィザオン、アリシアに続き二番手の実力を持つ、アリシアのライバルと言える存在でありアリシアの幼馴染のうちの一人だ。
「痛いわねぇもう、おはよう」
「おはよう!」
アリシアはシールスに叩かれ痛む背中をさすりながら挨拶をする、シールスはアリシアの胸を揉みながら挨拶を返した。
「触らないでくれないかしら?」
「いいじゃねーか、減るもんじゃあるまいし、それに良く聞くじゃねぇか揉んだらデカくなるって」
「迷信です、それに痛いからやめて」
「へいへい」
シールスは柔らかく揉み心地の良いアリシアの胸から渋々と手を離した。
「それでよ、聞いたぜ?アリシア、聖騎士大会に出るんだってな?、ライバルであるあたしを差し置いて先に出やがってよぉ〜、悔しいじゃねぇかこのやろー」
そう言って今度はアリシアの張りよく形の良い尻を撫で始めるシールス、尻を撫でられゾワワと身を震わせたアリシアはシールスの手を叩こうとするが、シールスはヒョイっと叩かれる前に手を引っ込めた、その結果アリシアは自分の尻を自分で叩く事になる。
「マ・ヌ・ケ」
「ッー!、上等じゃない!、私を怒らせた事後悔させてやるわ!」
明らかに挑発した顔でマヌケと言って来たシールスを見てカチンと来たアリシアは、剣を引き抜く、シールスもそれを見て彼女の髪と同じ赤い剣、ボルケード、を抜くと構えた。
「おうおう、今回はあたしが勝ってやるぜ!」
「ハン!、学園に入ってからの通算246戦中、122勝目は私が貰うわ!」
「良いや!、私が今日で121回目の勝ちを貰うんだ!、絶対に負けねぇ!」
同時に駆け出した二人はカキン!と甲高い音を立てて剣と剣をあわせ合う、それを見て三年生と二年生はいつもの事だと素通りし、学園トップの二人が戦い始めたと一年生はギャラリーをする。
力を込め押し合う二人の幼馴染、同等のパワーを持つシールスと押し合っていてもどうにもならないと思ったアリシアは口を開く。
「解放!、エリシャディア!」
「こっちだって!、解放!ボルケード!」
二人は同時にエリシャディアの力とボルケードの力を解放する、その瞬間エリシャディアは金色に光り、ボルケードはその刀身から炎を撒き散らした。
「テェイ!」
「ウォォ!」
二人は同時に剣を引き、二人の中のルール、相手の剣を手から取り落とさせたら勝ちと言うルールに従い、相手の手から剣を取り落とさせる為、もう一度全力の斬撃を放つ。
「ッ!」
「くっ!」
全くの同威力の二人の斬撃は二人の体を同時に後方に下がらせた、アリシアは地面を滑りながら左手にダガーを創造するとシールスに向けて放り投げる。
「はっ!」
シールスはボルケードの能力、炎を放出と言う能力を使い、飛んで来るダガーを炎で消し炭にした。
「相変わらず、凄い火力ね!」
「へっへ!、お前の武器創造もすげーよ!」
二人は互いの能力を褒めながら再び接近する、シールスは剣を振り上げ、アリシアは盾を召喚すると、シールスの剣を盾で止めた、しかし止めた瞬間から盾が溶け出した。
「やぁぁ!」
アリシアは左手に感じる熱さに耐えながら、右足を振り上げる、右足はシールスの右手を捉え、シールスは剣を取り落とした。
「あー!くっそぉ!、盾で防がれた時点でやっちまったって思ったんだよぉ!」
シールスは自分のミスを口にし悔しそうな表情を見せた。
「あなたの炎はとにかく馬鹿火力だから、すぐに溶かされないか?って言う賭けに勝った形だけどね」
「・・・、次はもっと火力高めで行ってやる」
「フン、ならもっと強度の高い盾を創造するわ」
ライバル同士チリチリと火花を散らし二人は睨み合う。
「まーたやってたのか、飽きねぇなぁお前らも」
「ここ最近はマシよ、酷い時なんて休み時間毎にやってるんだし」
「制服が破れちゃって先生に良く怒られてたよねー」
最後の言葉はアリシアのもう一人の幼馴染、シメラの言葉である。
「今は休み時間毎になんてやってないから良いだろ・・・」
「そうよ、あの頃みたいな子供じゃないもん私達」
ライバルと言えど仲のいい二人は幼馴染達の言葉を聞き、肩を組みながら言い訳をする。
「いやいや、あんた達は子供よ子供」
「うんうん、ブラックコーヒーも飲めない子供舌だもんね二人共」
「その癖辛い物は食べれるんだぜ?、変な奴らだよ」
「あー!煩い!、行くぞ!アリシア!」
「ええ!」
幼馴染達の揶揄いに我慢出来なくなったアリシアとシールスは肩を組みながら学校の方に走って行く、グレイ達は幼い頃から変わらない二人を見て苦笑すると、二人を追って学園に向かって行く。




