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セブンススタイル  作者: ブレイブ
第四部、一章、アリシア・リィターニア
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二話、解放

オルゴンの町


騎士学校がある町では生徒が警備を担当する、その仕事は各クラスに十班ずつある班から一班が十日ずつ一回担当する事となっており、アリシアとニアとグレイの班三班はこの日が担当日だ。


アリシア達三班の担当場所は町の入り口、ここは人の往来が多く最も重労働な警備場所であるが、ここの担当を任せられると言う事はクラスで一番優秀な班と言う事であり、各クラスの班はここの担当に慣れるように努力をする。


「今日も馬車がいっぱい、ノルドン牧場の馬車来てないかしら?、ノルドンウィンナー美味しいのよねぇ」


ノルドンウィンナーとはノルドン牧場で作られた、ノルドン牧場の名産品だ、大変味がいいこのウィンナーはアルトシャーニアで一番の人気を誇るのだ。


「お前の好物だもんな」


「私も好きだけどね、噛んだ時にジャワって溢れ出す肉汁が最高だもん」


「だよねー、来ないかしらねー」


そう言って町の入り口にある手すりに座って人の往来の監視をしているアリシアは、ノルドン牧場の馬車を探し始める。


「そんな都合良く来たりなんてし・・・」


「来た!」


「!、マジかよ・・・」


噂をしたからとノルドン牧場の馬車が来たりはしないと言おうとしたグレイは、アリシアの声を聞き顔を上げる、すると本当にノルドン牧場の馬車がアリシア達の前を通り、町の中に入って行く。


「私は、求める、通信を、通信先はアイリス・リィターニア」


この世界は魔法は詠唱をする必要がある、詠唱は決まった言葉を言えば発動し、今回の通信魔法は私は(一人称ならなんでも良い)と求めると通信をと言う事で発動する、そして発動した後に通信相手の名をフルネームで言うと通信が繋がると言う仕組みだ。


「あら?アリシア、お弁当でも忘れた?」


通信が繋がるとアリシアの目の前にビジョンが現れアイリスの顔が映った、どうやらお茶をしていたようだ。


「・・・忘れてません」


と言いつつ慌てて鞄の中を手探りで探っているのは秘密である、今回は、忘れていなかった。


「あら珍しい」


「・・・、そんな事よりノルドン牧場の馬車が来てるの!、母さん!ノルドンウィンナー買っておいて!」


「はいはい、買っておくわ、他に欲しいものはある?」


「特にないかな、また後でね、母さん」


「ええ、それじゃ通信終わり」


アイリスがしたように通信を終える時は通信終わりと言えば、通信は終わる。


「私もママに頼んでおこっと」


「俺は良いや」


「何よ?グレイ、ノルドンウィンナー嫌い?」


「ちげーよ、うちには何本かあるから買う必要がないの」


「ふーん」




ピヨピヨと鳥の囀りが聞こえる昼下がり、アリシア達は弁当を食べながら、往来の監視をしていた、すると町の行商区が騒がしくなる。


「なんだ?」


「さぁ?」


三人は弁当を置いて行商区の方を見る、すると馬車がこちらに向けて走って来る、先程のノルドン牧場の馬車だ。


「あらアリシア」


「やっ母さん、・・・、!?」


自然な流れで馬車に乗っていたアイリスと挨拶を交わしたアリシアだが、良く良く考えるとノルドンウィンナーを買って欲しいと頼んだ母がノルドン牧場の馬車に乗っているのはおかしい、何かあったと考えるのが普通だ。


「いたいた!アリシアちゃん!、あなたのお母さんが泥棒に人質として攫われたわ!、早く追わないと何をされるか分からないわよ!」


アリシアが母が乗っていた馬車の後ろ姿を見ていると、背後から女性の声がした、ニアの母ラナだ。


「・・・、大丈夫じゃないかな」


「うん、騎士だった頃の渾名が鬼騎士なアイリスさんだし・・・」


「あらあらまあまあ言いながら帰って来るよね・・・」


「あなた達の言う通りあの人なら普通に帰って来るでしょうけど、丸腰なのよ!?あの人、万が一の事があるから・・・」


「父さんが言ってたけど、母さん、素手で盗賊の一団を叩き潰した事があるって・・・」


「良いから行きなさい!」


「冗談冗談、それじゃニア騎士候補生、グレイ騎士候補生、ここは任せますぞ」


「了解しました!アリシア騎士候補生」


「おーう!、行って来いアリシア候補生!」


軽いノリでニアとグレイにこの場を任せたアリシアは近くに止めておいた馬に乗り、鞭を叩くと走り去った馬車を追って町を離れる。




オルゴン平原


「ヘッヘッヘ、ここまで逃げれば大丈夫ですよね?ペルンのアニキ」


「おうロンド、これだけのノルドンウィンナーに人質だ、かなりの額の身代金が手に入るぜ!」


馬車を奪った犯人、ペルンとロンドはニヤニヤと笑い合う。


「ねぇねぇあなた達?」


「どうした?べっぴんさん?」


「逃げても無駄だと思うわよ?」


「なんでだ?、オルゴンの町からかなりの距離を離れたって言うのに」


「じゃーん」


二人の盗賊はもっと逃げた方が良いと言う、それを聞いたアイリスは先程のビジョンを二人に見せた、ビジョンはアイリスとは反対側を向いておりどうやらずっと二人の逃走ルートを映していたようである。


「こ、このアマ!!、なんて事をしてくれやがる!」


「すぐ消せ!」


「はいはーい、通信終わり」


アイリスは言われた通りビジョンを消すのと同時に、縄を解いた。


「「・・・えっ」」


かなりキツく縛った筈の縄が解けている、その事に驚いた二人は目を点にしてアイリスの手元を見る、そうしている間に馬の蹄の音が聞こえて来た。


「・・・、やっぱ一人で帰ってこれるじゃん・・・」


駆け付けたアリシアは縄を解き盗賊二人の目を点にさせているアイリスに呆れた視線を送る。


「まぁまぁ、一種のお勉強だと思いなさい、それじゃあ悪者退治、任せたわ」


「ええ」


アリシアは青い瞳で盗賊二人を睨み剣を引き抜く、その剣の名はエリシャディア、オーグルがアリシアの為に作らせた剣であり、王都の鍛冶屋がその技術を結集して作った最高品質の剣だ。


「へっ、ガキが見た目だけ派手な剣を持って粋がりやかって!」


「痛い目にあって貰うぜ!」


ロンドとペルンはそれぞれダガーと斧を構えると駆け出しアリシアに迫って来る、それを見てアリシアは剣を両手で握ると前方に突き出しながら口を開いた。


「解放!、エリシャディア!!」


「なっ!?、解放能力付きの剣だと!?」


一部の剣は「解放」する事で高い能力を発揮する、アリシアのエリシャディアもその機能を持っている、そして解放能力付きの剣は高い実力を持っているのと同時に剣が認めないと抜く事すら出来ない為、持っているものはあまり多くない。


「さぁ行くよ!、エリシャディア!」


剣の能力を解放したアリシアは駆け出しペルンと剣とダガーを合わせ合う、その次の瞬間アリシアの左手にもう一つの剣が召喚されアリシアは剣の腹でペルンを殴り彼を気絶させた。


「武器創造の能力か・・・」


「ええ、私の剣エリシャディアは私が思い描く武器を作り出す事が出来る、例えばこんな物もね!」


アリシアは左手に持つ剣を消してから新たな武器を創造する、すると大砲が現れドーンと弾が発射された。


「弾まで出せるのかよ・・・」


「こんなのはまだまだ序の口よ、少しだけこの子の本気見せてあげる!」


そう言ってアリシアは大砲を消すと、左手をロンドの方に突き出した、するとロンドを包囲するように剣が召喚され、彼を包囲する。


「まさか無数に武器を・・・」


「無数って訳じゃないかなぁ、私の魔力にも限界があるもの、でもあなた一人を相手にするならこれだけの武器があれば十分よね」


「あぁ十分さ、降参だよ」


「私賢い人は好きよ」


アリシアはそう言ってロンドに近付くと、縄で彼の手首を繋ぎ拘束した。


「・・・その顔、その剣の能力は武器の創造だけじゃねぇな?」


「ふふふ、企業秘密よ」


ロンドの言葉を聞き微笑むアリシア、ロンドは少女のその笑みを見て少しの間見惚れてしまう、アリシアはポカンとする彼を見て首を傾げた。


(モテるわねぇ、流石私の子)


アイリスは首を傾げる娘を見て、何故か誇らしげにうんうんと頷いていた。



オルゴンの町、騎士学校


アリシアは乗って来た馬を馬車に繋ぎ、元々繋がれていた馬も操作し、オルゴンの町に戻って来た、すると町の入り口でメッシュが待っており、アリシアは彼に二人の盗賊を突き出した。


「ご苦労さん」


「仕事ですから」


仕事ですからと言いながら見事なドヤ顔でしかも胸を張るアリシアを見て、メッシュはその頬を思いっきり突いてから去って行った。


「痛いなぁもう」


「痛いの痛いのとんでけー」


「わぁー痛くなくなった!」


ふざけ合う仲のいい親子の元にニアとグレイが近付いて来た。


「じゃれ合ってる所悪いんですけど、この子仕事あるんで貰っていきますね」


「ええー、お手柄をした後なんだからちょっとくらい休ませてくれても・・・」


「ダメだ、急に入ってくる人や馬車の数が増えたんだよ、二人じゃ手が足りないんだ」


「ちぇー」


口を尖らせながらアリシアは二人の友と共に仕事に戻って行く。


「頑張りなさいアリシア、ウィンナー焼いて待ってるから」


「うん!」


アイリスはそんなアリシアに声をかけ、アリシアは振り返って母の顔を見ると微笑みながら頷いた。

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