十三話、首都攻略戦2
メイルス国首都
「キルシオ・グリムデン、グリムデン王国の王、黒魔導士、アリシア・レイティスが強い信頼を置いている男か、敢えて聞こうか、何故いくつもの国を滅ぼした悪魔のようなあの女に一国の王であるお前が何故従う?」
「我が国の為だ、あのお方は約束してくれた、帝国の属国となれば私の国で発生している疫病を解決してやろうと、そして彼女は約束を破らないお方だ、実際に我が国の疫病の解決の為の資金と人材を無償で提供して下さった、その資金と人材のお陰で我が国で発生していた疫病は解決してな、彼女には感謝しているよ」
キルシオの国、グリムデン王国では疫病が発生していた、その内容は酷い発熱からやがて魔力欠乏症となりそのまま衰弱死すると言う病気だ、アリシアは自身の帝国の属国となったグリムデンの為に選りすぐりの医師団を送り、見事解決してみせた。
「・・・、属国とならなかった国に対しては悪魔だが、属国となった国には救世主と言うわけか」
「そうなる、属国となった国の中には弱小国もあったが、彼女はそんな国の発展の為の資金も提供している」
「フン、あの女が貴様らの国達に対し善行を行なっていたとしても、我が国にとっては最悪の存在である事は変わらん、なぜなら我が国はあの女の帝国軍に侵攻をされ、首都にまで攻め込まれているのだからな!、儂は絶対に帝国を許さん!、そしてその帝国に付き従うお前も同罪だ!、その罪!、その命で償え!」
ホーエンはキルシオに向けて大量の水流を放って来た、対するキルシオは手を前に突き出してから拳をグッとにぎる動作をする、すると地面から雷が突き出し、水流を消滅させた。
「チッ!、これだから雷使いは!」
ホーエンは一撃にして雷を消滅させてみせたキルシオの足元から水を放出させ彼を地面に打ち上げた、そして勢い良く彼に水を叩きつけ地面に落とす。
「くうぅ!、お前こそ、その水のコントロール!、見事だ!」
キルシオは敵を褒めながら、駆け出しホーエンに接近すると雷を纏わせた拳を振るう、水属性のホーエンでは雷属性の攻撃は全てかなりの痛手となる攻撃となる、ホーエンは振るわれたキルシオの拳を大きく後方に飛んで避け、水の槍を放った。
「お前が槍なら私も槍だ!」
対するキルシオも槍を放ち、水と雷の槍がぶつかり合った、二つの属性の槍のうち雷の槍が打ち勝ち、ホーエンに命中する。
「ぐぅぅぅ!」
雷の槍はホーエンの右腕を吹き飛ばした、老兵は右腕から血を撒き散らしながら、続け様に水の攻撃を放つが、全て防がれ撃ち抜かれ、追い込まれて行く。
「お前では私には勝てんよ、老人、終わりにしよう」
終わりにすると言ったキルシオは拳を手の甲に叩きつける動作をする、するとホーエンの足元から雷の柱が立ち上がり、老兵は雷の柱に巻き込まれた。
「む、無念だ・・・」
雷の嵐に取り込まれ全身から血を流すホーエンは力なく倒れ絶命する、それを見たキルシオは帝国軍の勝利の為に再びメイルス兵達との戦闘を始めた。
「チッ!、流石に敵が多い!、だかなんとしてでも抜けるぞ!、キャンベル!」
「ええ!」
キャンベルとエリシアは空を飛び、砲台に取り付こうとしていた、しかし二人の行く手には大量のザルム、中々前に進めない、その時だった。
「!」
バハムートが現れ、二人の行く手を阻むザルムをまとめて焼き払った。
「すまないな、アリシア・・・」
エリシアはこの場にはいない妹に感謝をし、敵が立て直す前に砲台に取り付く。
「ハッチが開いた!、ミサイルが来るわよ!」
「ミサイルなど構うな!、砲口にありったけの弾を叩き込め!」
二人は砲撃が発射される可能性を顧みずに砲口の前に機体を向かわせると、言葉通りのありったけの攻撃を叩き込む。
「魔力反応!、発射されるわ!」
「任せろ!」
エリシアは機体を砲口の中に飛び込ませ、砲口の奥にビームブレイドを突き刺した、突き刺された場所から魔力が漏れ出しているのを見たエリシアはそこにビームを撃ち込む。
エリシアのアテナの攻撃により、魔導砲は爆発した、しかし爆発しながらも魔導砲はビームを放ち、エリシアはアテナごとビームに巻き込まれる。
「そんな!!、エリシア!?」
それを見ていたキャンベルは叫び声を上げた。
「安心しろ、私はアリシアの為に、親の仇を取る為に、簡単に死んだりはしない」
「!」
エリシアの声を聞きキャンベルがその姿を探すと、キャンベルのアテナの真下でエリシアが手を振っていた、エリシアはビームが放たれ機体が耐えているうちに転移しビームの放出から逃げ出していたのだ。
「驚かさないでよ!、死んだかと思うでしょ!」
「すまん・・・、生きていたのだから許してくれ、それでは私は首都の中心に向かう、お前はこのまま敵ファントムの撃破を継続してくれ」
「分かったわ」
エリシアの言葉を聞いたキャンベルは機体を反転させると、ザルム部隊を襲っているバハムートと並び攻撃を始める、それを見たエリシアは妹と共に両親の仇を取る為、首都の中心部に向かって行く。
国会議事堂
「魔導砲沈黙!これにより戦力の45パーセントを消失しました・・・」
「魔導砲がやられた・・・だと・・・」
虎の子の魔導砲が大した戦力を上げれずに落とされたと聞いた大統領は項垂れた、魔導砲が破壊された時点でこの国に勝ち目などもうないからだ。
「降伏しましょう!、そうすれば!」
「奴は我々の降伏を受け入れるような女ではない!、攻撃を続けろ!」
降伏しようと言う兵に降伏などあり得ないと叫び却下したメルオルの肩をジューベルが叩く。
「メルオルよ、地下に行こう、アレを使いここから逃げるのだ、我々が生きていれば後から幾らでも巻き返せる」
「・・・、分かった」
ジューベルの言葉を聞いたメルオルはそっと司令室から抜け出し、彼と共に地下に向かい始めた。
地下
「先代大統領達が作った避難路をこんな形で使う事になろうとはな・・・」
「そのおかげで我々は生き残る事が出来るのだよ、それではお前達、あの女が来れば殺せ、いいな?」
「・・・」
ジューベルが命令を下したのは300人はいる洗脳バトルシア人だ、彼は確実にこの通路を突き止め追ってくるアリシアを止め時間稼ぎをする為、ここに彼等を配置した。
「では行こう」
「ああ」
メイルスを見捨てた大統領と黒魔導士の憎しみを一身に受ける男は地下通路を進み始めた。




