十二話、首都攻略戦1
クレーター3
衛星兵器を用いて首都への進軍の妨げとなるクレーターの中に作られた各都市を落としたアリシアは、ドラグーンの爆発により部隊が集結するには丁度いい場所となっているクレーター3にメイルス侵攻軍全てを集めていた、これからアリシアはメイルスでの最終決戦の為に、兵達の士気を上げる為の演説をする。
「おはよう、我が臣民達」
愛機ゼウスの掌の上に乗るアリシアは、黒いドレスのスカートの裾を持ち上げ、臣民達に会釈をした。
「これから我々はメイルス首都に進軍し、この国を完全に落とす、我々バトルシアを奴隷として扱っていたこの国をね」
臣民達は皇帝の言葉の中のバトルシアを奴隷として扱っていたとの部分を聴くと、口々に怒りの声を上げ始めた、アリシアはその言葉に耳を傾ける為目を閉じ暫く臣民達の怒りの声を聞く、そして手を上げた、すると臣民達は黙る。
「あなた達の無念は分かる、私も我々バトルシアを奴隷として扱っていたこの国を憎んでいるもの、だから過去のバトルシアの為にも、この国を完全に潰すわよ!、ついて来なさい!、この私、黒魔導士アリシアにね!」
臣民達について来いそう言ったアリシアはゼウスに乗り込み、空に飛び立った。
「「皇帝アリシアに勝利を!」」
「「我等が黒魔導士に勝利を!」」
「「全ては我等バトルシアの為に!」」
アリシアの言葉を聞き士気を最高潮にまで上げた臣民達は、次々と自身の愛機や母艦である飛空艇に乗り込むと、先頭を切ってメイルス首都に向けて進軍をするアリシアを追って空に飛び立つ。
「ふっふふふ、待っていなさい、メイルス、私の最強の軍が、お前達を殺すのよ!」
「そしてジューベル!、お父さんとお母さんが死ぬ原因となったお前は、お前だけはこの手で殺す!、覚悟しろ!」
心も体も闇に染まり切っている少女は自身の種族の仇であるメイルスを滅ぼす為に、親の仇を討つ為に、メイルス首都に向かう。
メイルス国首都
帝国軍がメイルス国首都に到着した、するとクレーター近くの地面が左右に開き多数の砲塔が現れる、これこそがメイルスの秘策、衛星兵器と同等の威力を持つ魔導砲だ。
『陛下!、あの兵器から強力な魔力を感知、すぐにでも発射可能と判断!』
「了解」
メイルスの秘策を前にしても焦りを見せないアリシアは、龍脈の魔力を使い帝国軍全軍を覆えるだけの強力なシールドを張った、その直後、魔導砲からビームが発射される。
魔導砲から放たれたビームは激しい炸裂音を鳴り響かせアリシアのシールドに激突した、しかしアリシアの龍脈の魔力を用いたシールドは強力な一撃に耐え切って見せ、少女は帝国軍全軍を守り切って見せた。
「あの兵器には確実に再チャージ時間がある!、全軍進軍!、まずはあれを壊せ!」
「チッ!、あれに耐え切るとは!黒魔導士の名を名乗るだけはある!、全軍!何としてでも魔導砲を守り切れ!、進軍を始めた時点で次はあのような防御は出来ん!、それまで守り切れば我が方の圧倒的に有利が確定する!」
アリシアとメルオル、帝国軍とメイルス軍を指揮する両者の命令が交差する、その命令により両軍は進軍を開始し、帝国軍は魔導砲を守る為、メイルス軍は魔導砲を守る為に動き始めた。
「チームニ、ダリア、ゴルハゴズ、と言う三人の賞を殺した貴様ら帝国軍を私は絶対に許さん!、報いを受けよ!、喰らえ!」
メイルス軍の先頭を走る六の将ホーエンが、腕を振るい大量の水を召喚し、帝国軍に差し向けた。
「ふふん!、こういう魔法には私の魔法っ!、やぁぁ!」
アリシアに続き進軍をしていたキャンベルがアテナを一時着陸させるとアテナを通して地面に魔力を流した、すると土壁が現れホーエンが放った水流を妨害する、妨害された水は今度は逆にメイルス軍に襲いかかった。
「チィィ!」
ホーエンは自軍に迫り来る水を慌てて消した、そして今度は水の塊を帝国軍の上空に出現させると、槍の形に形成し、槍の雨を帝国軍に向けて降り注がせる。
「これは私の出番!」
「俺も手伝うぜ!」
今度はイブリサとキースが上空に向けて炎を放出し、降り注ぐ水の槍の雨を蒸発させて防いだ。
「これ以上は広範囲攻撃をさせん!、六の将ホーエン!、お前の相手をさせてもらおう!」
キルシオがホーエンの前に立ちはだかる、ホーエンは水属性であるのに対し、自身は雷属性であり、水属性は雷属性に弱いと言う特性から判断した行動だ。
「雷属性か!、だが負けぬ!」
「水属性では私には勝てん!」
ホーエンとキルシオ、二人の将の戦いが始まった。
キルシオがホーエンの足を止めたお陰で、帝国軍は更なる進軍が可能となった、防護フィールドを使えないザルムではアテナを止める事は出来ず、圧倒的に有利である帝国軍は徐々に魔導砲との距離を詰めて行く。
「させませんわよ!、次弾発射まで後、十分、それまでは持たせてみせますわ!」
一の将ヘルレサが、地面から植物の根を出現させ、進軍するアテナや帝国兵達を捕らえ締め殺して行く。
「キース!、また私達の出番よ!」
「おう!」
先程組んだ時から行動を共にしているイブリサとキースは頷き合うと、またも炎で植物の根で拘束されている帝国兵やアテナを救出した、そしてそのまま二人は機体から降りてヘルレサの相手をする。
「木を操る能力は風属性の一部、あなた達の炎属性では相性が悪いですわよ?」
「だから二人でやんのさ」
「そうよ、私達ほどの実力者なら、相性の悪さ程度、ひっくり返せる!」
「フン!、その自身、木っ端微塵に壊してあげますわ!」
ヘルレサは二人の炎使いに向けて、木の根っこを差し向けた、二人は炎で木を消滅させる。
「もう木は通じませんか、なら風です!」
次にヘルレサは風の刃を形成し、キースとイブリサに差し向ける。
「よ、避けろ!」
「分かってるわよ!」
風属性の攻撃に炎属性の攻撃を当てると威力が増大してしまう、その為炎属性の者が風属性の者を相手にする時はとにかく敵の攻撃を避けまくり、攻撃を当てる隙を見つけなければならない、これが炎属性を持つ者の中での常識だ。
キースとイブリサ、二人の炎使いによる、風属性の使い手ヘルレサの隙を探し攻撃を当て打ち倒す戦いが始まった。
「・・・、二人の将を実力者によって阻む、流石は黒魔導士アリシアだ、そして僕の前にも敵が現れた」
五の将、アダズの前にニアとアイリーンが立ち塞がる、光の魔法を使うと噂の彼の相手は闇の魔力を使うニアと、闇の魔力を用いての戦闘も一応は行えるアイリーンならば有利に行えるとのアリシアの判断である。
「そして二人とも闇の力の使い手、僕の弱点だ、でもね!、君達にとっても僕の光の魔法は弱点だ!、この戦い、勝たせて貰うよ!」
「ふふっ」
勝たせて貰う、そう言ったアダズを見てアイリーンは怪しく笑う、やはり彼は自分が光の属性を持つ事に気付いていないと思い、それが可笑しかったのだ、暗黒聖女アイリーンは更に戦闘を楽しむ為、敢えて光の魔法を使い、アダズの攻撃を止めた。
「なっ!?、光の魔法・・・」
「私の顔を見て気付かなかったのです?、私が聖女アイリーンだと、そこそこ有名だと思っていたのにショックですわ」
「・・・、僕は世間に疎くてね!、でも負けないよ!」
アダズはどうやら本当にアイリーンの顔を知らなかったようだ、彼は誤魔化すかのように杖を払うと光の矢を二人に向けて差し向ける、しかしその攻撃はニアの闇の魔力により掻き消された。
「ふふ、光の魔法も使えるアイリーンがいる時点で私達の勝ちはほぼ確実、ふふ勝たせて貰うわよ?」
「くっ!」
勝たせて貰う、その言葉を今度はニアが言い返した、アダズは頭の中で勝つ方法を考えながら、まずは逃げの手を打ち、時間稼ぎを行う。
「キャンベル、私とお前はあの砲台の破壊が仕事だ、やるぞ」
「もっちろん!、任せて!」
エリシアとキャンベルはアリシアから魔導砲の破壊を命じられていた、二人はその命に従い、部隊を率いて、砲台の破壊作戦に当たる。
首都内部
ゼウスのビームと周囲のアテナからのビームで扉を破壊し、首都の内部に入り込んだアリシア、そんな彼女の前に、セブンジェネラルズのリーダー、グレイルが立ちはだかった。
「黒魔導士アリシアよ、私は君との一対一の剣のみ立会いを所望する、どうか引き受けてくれないか?、この戦いの間は他の者に攻撃をさせないと約束しよう」
グレイルはアリシアのゼウスに剣を向けながら、一対一の立会いをアリシアに要求して来た。
「ええ、良いわよ」
強者との戦いを望むアリシアとしてはこの申し出を断る理由などない、アリシアは機体から降りるとグレイルの前に行き、影から剣を取り出した、そしてガンブレードをガンモードにするとチャージされている魔法弾を全て撃ち出し、剣のみの戦いの準備を済ませた。
「これで私のガンブレードは弾を撃たない、ふふ、正々堂々の戦いをしてあげるわ」
「ありがとう、素晴らしい戦いをしようじゃないか!」
「ええ!」
アリシアとグレイルは同時に駆け出し剣と剣を合わせる、黒魔導士と七将軍のリーダーの戦いが始まった。




