十一話
クレーター3
エリシアとキースはアリシアの使い魔達と共に進軍をしていた。
「一方的だな、アリシアの予想通り、首都を守る為に都市とそこに住まう市民を捨て、都市駐留軍を少しだけ残り、大半の戦力は首都に向かわせていると言う訳だ」
「首都さえ守り切って、それで俺達帝国軍に勝てばやり直せるからな、フン、俺らバトルシアを奴隷として扱ってたこの国らしいぜ、人の命が軽い」
アテナに乗りメイルス国に対しての皮肉を言うキースに、中破状態から修理された同じくアテナに乗るエリシアは、機内のモニター越しに同意し頷いた。
「国の上層部は国民を守るのが仕事だ、アリシアなら絶対に臣民を見捨てたりはしない、自国の国民を見捨てたこの国はこの時点で終わりだ」
「おう、終わりたい奴はさっさと終わらせてやろうぜ」
「だな」
会話の為一時攻撃を止めていたキースとエリシアは、メイルス国の上層部が見捨てた国民達をその毒牙にかけて行く。
「見ろ、動きの良い兵がいる、十中八九、同族だろう」
「チッ、また同族殺しかよ、クソッタレ!」
二人が進軍していると、洗脳バトルシア人と思わしき部隊が、キルシオの部隊の腕章を付けた者達を襲っている様子に出くわした、この都市を見捨てた者達はせめての戦力として彼らにとって一番価値の低い部隊である洗脳バトルシア人部隊を残して行ったのである。
「戦闘中に洗脳を解く暇はない、やるぞ、キース」
「分かってるよ、クソ・・・」
エリシアの言葉を聞いたキースは暗い顔でトリガーを引き、洗脳バトルシア人達をビームで蒸発させた、暫くトリガーを引き攻撃力の高いエリシア機とキース機の二機を破壊しようと迫って来る洗脳バトルシア人を撃ち続けていると、キルシオから二人に向けて通信が入る。
『エリシア様!キース殿!、警戒を!、地下から高出力魔導炉の反応があります!』
キルシオからの通信は警告だった、二人はすぐさま空に飛び立つ、するとドラグーンが地面を突き破り、都市内部に現れる。
皇帝の飛空艇
「あれは・・・、まさか!、全軍撤退!、急ぎなさい!」
ドラグーンが現れたのを見たアリシアは、メイルス国が何をしようとしているのかを察し、部隊を撤退するよう命じる、それを聞き受けたキルシオ、イブリサ、キャンベルは部下達に撤退命令をし、帝国軍は迅速に都市から脱出を始めるが・・・。
クレーター3
都市から脱出をする帝国軍、ドラグーンはそんな彼等を嘲笑うかのように自爆をした、その結果逃げ切れなかった二万人程の帝国兵が爆発に巻き込まれ消滅した。
「なんと卑怯な!、自国の国民を見捨てるどころか、ドラグーンの自爆に巻き込ませて帝国兵共々消し去るとは!」
ドラグーンの自爆に巻き込まれその命を失った帝国兵達の為に怒るエリシアは、メイルスに対しての怒りの募らせる。
「こんな手を使うなんてね、やってくれたわ」
怒るエリシアのアテナの肩にアリシアが転移して現れた。
「アリシア・・・」
大切な臣民やその候補である帝国兵を失ったのはどうせ大した戦力はいないと油断していた自身の失態だ、ならばアリシアはその失態を皇帝として返上しなくてはならない、アリシアは自身の飛空艇に通信を入れる。
「首都以外の残り二つの都市を衛星兵器で破壊する、どうせ奴等は同じ手を使って来るわ、ならばその前に手を撃つわ」
『はっ、攻撃開始前に都市の防護フィールドを停止させる為、飛空艇を向かわせます』
「お願い、フン、正面から攻めると言う優しい手を折角使ってあげていたのに、私を怒らせる事になるからこうなるのよ、メイルス!」
メイルス国首都
「作戦は成功です!、帝国軍の戦力低下に成功致しました!」
観測士が作戦の成功を大統領に伝える、それを聞いた大統領は国民を見捨てると言う愚策を使う価値があったと思い、囮となってくれた国民達に感謝をした。
「まっ、待ってください!、残り二つの都市に帝国の飛空艇が迫っています!、防護フィールド消失!」
しかし大統領の喜びはたった数秒で終わる事になる。
「なんだと!?、あの二つの都市にも囮と罠を仕掛けていたのだぞ!?」
大統領は残り二つの都市にも国民と言う囮とドラグーンを仕掛けていた、帝国軍が何をするつもりなのかは分からないが、このままでは失敗する可能性があると思い焦る。
「くっ!?」
窓から激しい光が舞い込んで来た、衛星兵器がクレーターに向けて降り注いだのだ、これにより大統領の思惑は完全に潰えた。
「残りはこの首都だけ・・・、なんとしてでも守らなくては・・・」
国民を犠牲にして都市を守る為の戦力を集めるだけの時間稼ぎをするつもりだった大統領は、その目論見が外れ、焦った顔で椅子から立ち上がると、命令を出しに部屋を後にした。
クレーター3
「ごめんなさい、私のミスだわ」
都市の破壊に成功した後、アリシアはキルシオ達を集め、彼等に今回の失態を謝っていた。
「陛下が頭を下げる事などありません!、我々が地下にも警戒をしていれば、もっと早くに帝国軍を都市から逃がせた!、これは警戒を怠った我々のミスです!」
キルシオが必死になって自分達のミスだと言う。
「いいえ、私のミスよ、私が総指揮官としてここにいる時点でね、だから次はもうミスはしない、と約束する」
力強い瞳でミスはしないと言ったアリシア、それを聞いたキルシオ達は頷いた。
「奴等に猶予を与えるつもりはない、早速、首都に向かうわよ、皆、準備を始めなさい」
「「はっ!、我等が黒魔導士に勝利を!」」
アリシアの命令を聞き、帝国軍は首都攻略戦の準備を始めた。




