七話、フロスヒィー海岸の戦い1
フロスヒィー海岸
帝国兵やアテナ部隊と共にアリシアは森からやって来る、メイルス軍を相手にする為、進軍している。
「お母様?、今回も龍脈をお使いに?」
「勿論、それが戦闘による一番被害が少なく済むもの」
龍脈から召喚される魔物は召喚時の代金であるアリシアの魔力さえ尽きなければ、多数の魔物を召喚出来る、その為、戦力の消費の事を考えても、コストがアリシアの魔力だけである闇の魔物はどんどん使って行った方が良い。
「さぁ、おいで、闇の魔物達」
漆黒の鎧騎士の姿をイメージしたアリシアは右手に持っていた杖を振るう、すると様々な武器を持ったその数二万体の鎧騎士が召喚された、少量の魔力でこれ程の戦力を召喚するアリシアは、自ら名乗った黒魔導を司る存在である黒魔導士の名を体現していると言えるだろう。
「行け」
次にアリシアは左手を振るった、すると鎧騎士達は武器を天に掲げてから一斉に森に向けて突進して行く、敵は絶望するだろう、前方から来る圧倒的な数の戦力を見て。
「帝国兵、そしてファントム部隊も彼らに続け、前方から来る愚か者達を撲滅するわよ」
「はっ!」
魔力さえ尽きていなければこれ程の戦力を単体で行使出来るアリシアは、アトリーヌ帝国の歴代の皇帝の中で正に史上最強の皇帝と言える、そんな史上最強の皇帝と共に戦える事を誇りに思う、帝国兵達は声を張り上げ、先頭を行くアリシアとその側近と共に鎧騎士達を追い森の中に入って行った。
海上
「お前の妹ってさぁ、どんどん強くなるよな」
「そうだな、だが世界を一つ手に入れるにはあれほど強くないと行けないのさ、あれほどに強くなったあいつを私は誇りに思うよ」
アリシアが鎧騎士達を召喚する様子を空から見ていたエリシアは、あれほどの力を持った妹を誇りに思った、そして思うあれ程の力があるのならば、自分達姉妹の、両親を奪ったこの世界への恨みは必ず晴らせるだろうと。
「皇帝陛下からこっちのファントム部隊の指揮を任された、指揮官様よぉ、作戦を始めようぜ」
「あぁ、分かっている」
自分専用のアテナに乗るエリシアは森の中に入って行く妹から視線を逸らし、背後から迫って来る敵のザルム部隊に攻撃命令を出す為、口を開く。
「黒魔導士アリシアの姉である、私が告げる、全軍前方から迫る敵との戦闘を開始、誇り高きアトリーヌ帝国軍の力をメイルスの猿共に見せつけてやれ!」
「猿共か、良いねぇ!」
エリシアの命令を聞き、帝国軍のファントムは帝国軍の飛空艇に搭載された防護フィールドキャンセラーの影響で防護フィールドが使えない、ザルム達を次々と撃破して行く。
「チッ、防護フィールドが使えなければザルムはただの鈍重な機体・・・、帝国のアテナと相性が悪すぎる・・・」
ゴルハボズのファントム部隊を借り受ける代わりに自分の歩兵部隊を彼に貸し与え、この戦いに加わっているダリア将軍は、帝国のアテナと自軍のザルムの相性の悪さに舌打ちをした。
「しかし、防護フィールドさえ使えれば、奴等の攻撃はこちらのザルムに通じないっ!、全軍!、なんとしてでも敵部隊を突破し、敵軍の飛空挺を撃破しなさい!」
勝つ為にダリアは防護フィールドキャンセラーが確実に搭載されているであろう、帝国軍の飛空艇の撃破命令を出した、それを聞いた兵士達はなんとかアテナ部隊を突破しようとするが、機動力で負けているザルムでは中々突破出来ない。
「・・・、開発部はザルムの軽量化を行なうべきね、私が前に出るしかない!」
このまま後方に控えていても勝機は訪れない、そう判断したダリアは、前線に出て次々とアテナを撃破し始めた、自分でアテナ部隊を突破し飛空艇を破壊し、防護フィールドを復活させるつもりなのだ。
「その花のマーク、ダリア将軍だな?」
しかし破竹の勢いで進軍するダリアの目の前にエリシアが立ち塞がった、キースはいない。
「そちらこそ、その機体、そちらさんの皇帝陛下のお姉さんのエリシアさんじゃない」
「ほう?私の名を知って貰えているとは・・・、光栄だと言わせてもらおう」
挑発し合う二人の女、二人は同時にビームブレイドとビームアックスを抜くと斬りかかった。
「レイティス、その名を持つ者を生かして来たからこそ、この世界は半分以上が帝国の物となってしまった、ならばレイティスの名を持つあなたは私がここで殺す!」
「いいや?死ぬのはお前だ、そしてレイティスの名はこれからも受け継がれる、私とアリシアの手によってな!」
皇帝の姉エリシア・レイティスとセブンジェネラルズの一人ダリアの戦いが始まった。
森の中
帝国兵達とアテナ部隊は森の中で散開し各個敵兵の撃破を始めていた、ニアとアイリーンを率いるアリシアは、迫る敵兵を次々とその剣で斬り伏せていた。
「つまらなそうね、母さん」
「こいつら歯応えがないもの、弱すぎるわ」
帝国軍の兵士達はアリシアが練度を上げろと指令を出した為、一般兵は流石に皆アリシアに手も足も出ないが、騎士クラスならば数分はアリシアと打ち合える練度を得ている、しかしメイルスの兵は上位の階級章を付けている者ですら、アリシアと戦うには全く話にならないレベルだ、これではアリシアとしては全く面白くない。
「下がっても良いかしら?後方から指揮をするわ」
「まぁまぁ、お母様が前に出ている事で士気が上がるのですから、つまらなくてもここにいて下さい」
「あなたがそう言うのなら」
後方に下がると言うアリシアをアイリーンが宥め、アリシアは仕方ないと言った顔でアイリーンの言葉に頷いた、その時だ、右方向から魔力の塊が飛んで来た。
「・・・」
アイリーンを下がらせ、アリシアは剣で軽く魔力の塊を弾く。
「ガハハ!、今の攻撃を防げる者は中々にいない!、流石は皇帝の名を名乗るだけはあるな!」
「獅子のマーク、ゴルハボズか」
魔力の塊を放ったのはアリシアを視認し攻撃を仕掛けたゴルハボズだった、彼が近付いてくるのを見たアリシアは、楽しめそうな敵が来たと思いつつ、彼に剣を向ける。
「いかにも、俺の相手をして貰いたい」
「良いわよ、ニア、アイリーン、彼と戦うから邪魔が入らないようにして貰える?」
「分かったわ」
「はい、お母様」
母が楽しめるようにと、ニアとアイリーンは言われた通り周囲の敵の排除を始めた。
「俺の兵を物のように排除せよと言うか、黒魔導士アリシアよ」
「物?、違うわ、あなたの兵はゴミよ?」
「言ってくれる、俺が愛する兵達をそのように言ったお前を俺は絶対に許しはせんぞ!」
大剣を掲げ、ゴルハボズは様子見としてアリシアに斬りかかる。
「こんな様子見の攻撃、一撃で死にたいのかしら?、最初から本気を出しなさいな」
対するアリシアは左手に魔力を纏わせると、振り下ろされた斬撃を受け止めた、そして敵に本気を出せと言う。
「ククそうだな、今の無礼を謝ろう」
「ふふ、許してあげる、さぁ仕切り直しをしましょう?」
「うむ」
アリシアはゴルハボズの大剣から手を離し、ゴルハボズは剣を引いた、そして両者は距離を取って向き合う。
「アトリーヌ帝国皇帝、黒魔導士アリシア」
「メイルス国、セブンジェネラルズ、ゴルハボズ」
「行く!」
「いざ尋常に勝負!」
同時に名乗り同時に前にへと飛び出した二人は、一気に距離を詰めガンブレードと大剣をぶつけ合った。




