四話
フロスヒィー海岸、帝国軍陣地
チームニ軍に勝利した帝国軍はフロスヒィー海岸に陣を敷いていた、皇帝の飛空挺の操縦席の窓からその様子を眺めるアリシアの元に、一人の騎士がやって来る。
「皇帝陛下、陛下に会いたいと言う近隣の住民がおりますが、どう致しますか?」
近隣の住民が会いに来た、そう聞いたアリシアはゆっくりと振り返る。
「そう、私が直接会いに行くわ、案内しなさい」
振り返ったアリシアは邪悪な笑みを見せていた、皇帝の笑みを見た騎士はこの時点で近隣住民の運命を察した。
「あ、あなたが皇帝アリシアですか・・・」
騎士と共に皇帝の飛空挺の外に出たアリシアは、近隣の住民がいる場所にやって来た、そこには一人の老人が立っていた。
「ええ、私がアトリーヌ帝国皇帝、アリシア・レイティスよ、それで?、あなたは誰で何の用かしら?」
アリシアは老人に何者なのかと用件を聞いた。
「私はこの近くのフロッタ村の村長です、あなたの他国でのお噂は聞いております、だからこそ直接あなたに頼みに来ました・・・、我々の村を見逃してはくれませんか?」
噂とはアリシアが一般人が住んでいるだけで、軍が駐留していない村や町すら躊躇なく滅ぼしている事である。
「私がお前の村を見逃して、何の得があると言うのかしら?」
「我が村で作った食料を提供致します」
食料を提供する村長はそう言った、それを聞いたアリシアは一瞬キョトンとした顔をする、そして・・・。
「あはっ、あっははは!、はぁーあ、笑わせてくれるわね?、メイルスの猿どもはどこまで馬鹿なのかしら?、私達は戦争に来ているのよ?、食料なんて豊富に用意して来ている事を想像出来ないのかしら?」
高笑いをした、そして剣を影から取り出すと老人に近付く。
「最後に何か言い残す事はあるかしら?」
「悪魔め・・・」
「ははっ、そうよ私は悪魔よ?、この世界全て支配するね?」
村長に悪魔と言われたアリシアは彼の言葉を肯定し、そして首を斬り落とした。
「そのゴミを片付けておきなさい、そしてフロッタ村を行くわ、敵国の癖に私に要求などした愚かな村はこの世界から消し去らないとね?」
「はっ、十五分で準備させます」
「ふふっ、私も同行するわ」
「はっ」
迅速な行動を見せる自身の軍に満足気に頷きつつ、アリシアは一つの村が滅びる様子をもうすぐ見れると、心を踊らせる。
フロッタ村
アリシアは帝国軍と共にフロッタ村にやって来た、帝国軍を見た時点でフロッタ村の者達は混乱し逃げ惑い始めた、その様子を見てアリシアは邪悪な笑みを深めた。
「やれ」
隣にアイリーンを伴うアリシアは腕を振るい帝国軍に攻撃を命じた、少女皇帝に忠誠を誓っている帝国兵達は、何の躊躇もなく村の住民を殺し家を焼いて行く。
「ふふふ、楽しそうですわね?、お母様?」
「当たり前でしょう?、ジューベルを匿った時点でこの国に住むゴミ共は同罪、ゴミが沢山死ぬ様子を見れて楽しくて楽しくて仕方がないわ」
フロッタ村の住民が死ぬ様子を見て楽しいそう言ったアリシアは、アイリーンを抱き寄せる。
「ふふっ、この昂りを収める為に、あなたの血を飲んでも良いかしら?、アイリーン?」
「勿論ですわ、お母様」
アイリーンは首筋をアリシアに見せ差し出した、アリシアは次々と殺されて行くフロッタ村の住民を眺めながらアイリーンと言う、極上の美酒を味わい始める。
「お母様?」
アリシアに血を吸われ頬を赤く染めるアイリーンはアリシアが杖を取り出し、右手を上げたをのを見て首を傾げる、一度アイリーンの首筋から牙を抜き目を合わせたアリシアはアイリーンに後ろを見るように促す、それに従いアイリーンは後ろを見る、アリシアはアイリーンが後ろを見るのと同時に無数の魔法弾を撃ち出し、魔法弾は正確に逃げ惑う住民達の心臓を撃ち抜いて行った。
「あぁ・・・、流石お母様ですわ、なんて素晴らしい・・・」
「ふふふ」
アイリーンの血を楽しむ為の余興を演じたアリシアは、この後も住民を殺しながら、アイリーンの血を味わった。
メイルス国首都
フロッタ村の惨劇はすぐさまメイルスの首都に届いた、自国の国民を残忍な手口で殺されたメルオルは憤っていた。
「許さん!許さんぞ!、悪魔め!」
「落ち着けメルオルよ」
「これが落ち着いていられるか!、我が国の大切な国民を殺されたのだぞ!?」
「確かに許せぬ事だ、しかしお前が憤り冷静な判断を失えばそれは皇帝の思う壺だ、奴はそれが目的で、先の戦争でも村や町を軍に襲わせていたのだろうからな」
「くっ・・・」
ジューベルが言った通り、アリシアが軍に一般人を襲わせるのは、敵国の首脳陣を怒らせ冷静な判断力を奪う為だ、ジューベルの言葉を聞いたメルオルは皇帝の策略に嵌り掛けていた事を理解し俯く。
「この戦争に勝てば奴に罪をいくらでも償わせる事が出来る、ククッ公開処刑と言う形でな、その時までは怒りを抑えよ、メルオルよ」
「分かった、すまない、ジューベルよ」
「うむ」
ジューベルはメルオルの肩を叩く。
「皇帝を捕らえる為にも次の手を打たなくてはな」
「あぁ、あれを使おう」
「うむ」
メルオルは次の手となる兵器の元にジューベルと共に歩いて行く。




