三話
フロスヒィー海岸
「ニア、これより私も戦場に出る、指揮を引き継いで貰えるかしら」
「了解、でもぉ、サポートはしてね?」
「分かってる」
ニアに指揮を任せ、アリシアは皇帝の椅子から立ち上がると、船内の格納庫に向かう。
「行くわよ、ゼウス」
シートに座ったアリシアは機体を起動させた、そしてカタパルトに機体を乗せ、戦場にへと出撃をする。
「識別番号確認!、皇帝戦用機、ゼウスです!」
「き、来たな!、攻撃を集中させるんだ!、いくつもの国を滅ぼした悪魔をここで仕留めるんだ!」
チームニはアリシアが乗るゼウスを見て攻撃を集中させて来た、アリシアはモニター越しに迫る弾丸やビームを見てニヤリと微笑んだ。
「本当に愚かね、臆病者のチームニと呼ばれるだけの事はあるわ、私は敵の戦力を引き付ける為の囮だと言うのに」
弾丸の嵐を余裕で避け続けるアリシアは、遂に敵のザルム部隊に取り付いた。
『母さん、その機体はゼウスの武装でも掠った程度では落とせないって、アテナの戦闘データから分かってる、だから注意してね!』
「了解」
ニアの言葉に返事をしたアリシアは、機体にビームブレイド試しに浅い踏み込みでザルムに斬りかかった、すると確かにこれまでの敵として対峙したファントム達は、掠っただけでも落とす事が出来たがザルムは落ちなかった、それを見てアリシアはギグルスの技術者達はやはり優秀だと思いつつも二撃目の斬撃で、ザルムを倒した。
「くっくそ!、なんとしてでも落とせ!」
ザルム達はアリシアのゼウスを囲むように動き、一斉に全弾発射して来た。
「ハハッ!、当たるわけないでしょ!」
迫るビームをビームブレイドで斬り払い、ミサイルは左手に持つビームバスターの弾を拡散モードにして全方向に撃ち纏めて叩き落とす。
「な、なんて腕だ・・・」
「ば、化け物・・・」
ザルムのパイロット達はアリシアの操縦技術を見て怯えた、怯えた敵を倒す事など容易い、敵のアリシアは怯えを感じたアリシアは愉悦の表情で敵が放つビームをギリギリで避けながら、一機ずつザルムを破壊して行く。
「く、くそっ!怯えるな!、皇帝アリシアを殺したと言う功績を上げるチャンスだぞ!」
たった一度の攻撃で自軍のパイロット達の怯えを感じたチームニは、自軍のパイロット達を焚き付けるが、一度消えてしまった火が再点火するまでは時間がかかる、その為ゼウスを囲んだザルムだけではなくその周囲でアテナ部隊を相手にしていたザルム達もアリシアに次々と落とされて行く。
その姿はさながら悪魔のようであった。
旗艦後方
海から浮上したエリシアとキースはフライトユニットを使わず、地上を歩きまずは旗艦の後方に繋がる森の中に入っていた。
「ここを左だ、その後は真っ直ぐ進めば、敵のどデカイ尻に出会えるぜ」
「フン、マヌケに尻を晒している奴は、私達て葬ってやらんとな」
「違いない」
エリシアとキースは定期的にレーダーを確認しつつ森の中を進む、しかし帝国軍と属国軍はメイルス軍の前方に展開しており、後方から攻撃される可能性は想定していないようで、後方を警戒しているファントムはいないようだ。
「後方がお留守だな、まっ仕方ないけどな」
「だな、我々帝国軍は今日この大陸に上陸した、ならば後方に敵はいないと考えるのは自然だ、フン、その考えが自分達の負けに繋がるとは考えてもいないだろうさ」
エリシアが敵の油断を無理もないと言った時、前方に明かりが見えて来た、森の出口が近付いてきたようだ。
「着いたな、これからどうするんだ?」
「こうするのさ」
エリシアはフライトユニットに取り付けられていた、チャージビームライフルを展開させた。
「へぇ、それうちの国の開発部が作った新型の武器じゃねーか、もう使えるのか」
「いや不完全だ、一機だけでは起動出来ん、だからお前の機体の魔導炉も使わせて貰う、ほらコードだ」
「はいよ」
キースはエリシアのアテナが手渡して来たエネルギーケーブルを手に取り、機体背部にあるコネクタに接続させた、するとエリシアのアテナのコクピット内モニターに、ケーブルが接続されたと表示されチャージビームライフルが起動した。
「よしよし、まずはどいつのケツを狙うんだ?」
「旗艦だ」
「いきなり本丸かよ・・・、お前らしいな」
「フン、司令塔がいる場所を狙うのは、戦闘の基本中の基本だろう」
自動ロックオンシステムにより、敵の旗艦がロックされた、エリシアは躊躇いもなくトリガーを引く、すると地響きを鳴らしながら、強烈なビームが砲口から発射され、旗艦に迫って行く。
フロスヒィー海岸
「あ、アラート!、後方より何者かにロックオンされています!!」
ビー!ビー!とロックオンされた事を知らせるアラートがチームニがいるブリッジに鳴り響く、次の瞬間、船に激しい振動が走った。
「つうううう!?、状況は!?」
「後方からの攻撃により、機体後部から前部にかけて貫通!、同時に火災発生!、残り五秒で艦のエンジンが停止します・・・」
「そ、そんな・・・」
自身が乗る旗艦のエンジン停止、それはこの場所での戦いでの敗北とほぼ同義であった、チームニはこの時に気付いた、目の前の戦場で複数のザルムを蹂躙している皇帝はただの囮だったのだと。
「くっくそ!」
後方からの攻撃がいつ来るか分からない、そう考えるチームニはブリッジから飛び出し格納庫に向かう、そしてザルムに乗り込むと旗艦から飛び出した、チームニは自分が死なない為に旗艦を放置し逃げ出したのだ、そしてチームニが旗艦を飛び出した瞬間、旗艦に次の砲撃が命中し旗艦が爆発した。
「死なない!、僕は絶対に死なないぞ!」
ザルムの全速力により戦場から離れて行くチームニ、後方からは次々と自軍の戦艦達が落ちて行く音が聞こえてくる、チームニはそれを無視して空を突き進む、その時だ真横を紫色の閃光が通り過ぎた。
「どこに行くのかしら?、チームニ将軍?」
チームニのザルムの真横を通り過ぎたのは、フォトンドライブを起動させたゼウスだった、ゼウスはチームニのザルムの前に出ると停止し向き直る、チームニは慌てて機体を宙で停止させ、震える腕で機体を操作しビームバズーカを構えさせた。
「に、逃げるんだよ!、悪いか!?」
「ええ、悪いわ、とても悪い事よ、だってあなたはここで死ぬべき人間ですもの」
「いやだ絶対に死なない!」
チームニはトリガーを引いた、しかしアリシアは巧みな操縦桿とフットペダルの操作で、ビームバズーカから発射されたビームを避けるとビームバスターでザルムの右腕を撃ち落とした。
「まだ!」
次にビームキャノンを撃とうとするが遅い。
「さようなら」
スピーカー越しに皇帝の冷たい声が聞こえて来た次の瞬間、チームニはコクピットを貫いたビームブレイドに一瞬にして焼かれ、消滅した。
「我が兵達よ!チームニ将軍はこの私!、皇帝アリシアが討ち取った!、残る敵を殺し尽くせ!」
「「おお!」」
皇帝が敵将軍を討ったと聞いた帝国兵達は更に勢いを増し、将と母艦を失い逃げ惑う敵軍を殲滅して行く。
「勝ったなアリシア、おめでとう」
「ありがとう、さっまだまだ敵はいるわ?、一緒に殺戮を楽しみましょう?」
「ああ、行こう」
姉妹は殺戮を楽しむ為、殲滅戦が行われている戦場に舞い戻って行く。
MX-16、ザルム
ザルムはレギルス、ギルスの兄弟機とも言える機体である、しかし兄弟機と言っても、どちらかと言えば、近距離戦向けな設計であるギルスとは違い、防御力を高める為装甲を厚くし、鈍重な機体重量となっているザルムは中距離から遠距離戦向けの機体となっている、基本設計はギグルス国だが、とある人物によりメイルスにその設計図が渡り、その折に四つの特殊兵装が追加された。
全長、20.8メートル
重量、106.2トン
動力炉、新型魔導炉×1
基本機体色、紫
武装、ビームバズーカ、ビームキャノン×2、ミサイル×10、ビームアックス、ビームシールド
追加兵装、フライトユニット
特殊兵装、防護フィールド




