二話
フロスヒィー海岸
アリシアの命令通り、初期攻撃から三分後、追加のアテナ部隊が出撃をする、対するメイルス軍は初期攻撃に投入されたアテナ部隊だけでも、ドラス部隊で苦戦していると言うのに、更に敵機が増えた為、瞬く間にその数を減らして行く。
「こ、このままじゃダメだ!、れ、例の機体を投入しろ!」
「し、しかし、例の機体はドラス部隊が壊滅するまでは投入するなとの命令が・・・」
「早く機体を投入しないと押し切られるだろ!、僕は死にたくないんだ!、早く投入するんだ!」
「は、はい」
チームニの強さは自身が死なない為なら、他の将軍と交わした会議の内容すら容易に無視する所である、戦局が少しでも傾き自身が保有している戦力の中で投入可能な戦力があると言う状況なら投入する、敵は一気に増した戦力に押し切られ成すすべもなくなるのだ、そして戦力を全て投入しても負けるのならば、自軍が戦闘中でも逃亡する、それがチームニと言う男だ、しかし今回の敵はアリシアだ、そう易々と敵を逃す訳がない。
「敵が戦力を追加、識別番号と合致しない機体です」
アリシアの飛空挺に乗るオペレーターが識別番号と合致しない機体だと伝えて来た、それを聞きアリシアは顎先に手を触れる。
(・・・ギルスと共通点がある十中八九ギグルスの設計図を盗んで作った機体ね、ジューベルがメイルスに亡命するて見上げとして、ギグルスが開発していた機体の設計図でも渡した?、フン、気に入らないけど考える事は同じか、ギグルスが開発した機体こそ現状世界最高峰の機体ですものね、ここは来る戦争の為ギグルスの機体の設計図を盗み出していたお前を染めてあげるわ)
アリシアは宿敵の手腕を褒めつつも立ち上がり、命令をする。
「新型の性能は未知数よ、各機、二対一の状況にへと持ち込み油断せず仕留めなさい、ドラスやアミールは艦隊の砲撃により撃破、ファントム部隊は新型に集中しなさい」
新型がどれほどの性能か分からない現状、今後の戦いの為にもアテナを失いすぎる訳にはいかない為、アリシアは二対一の状況に持ち込み相手をするよう言った、優秀な帝国軍パイロット達は皇帝の命令を確実に実行し、二対一の状況に持ち込んで行くが・・・?。
「防護フィールド!?、攻撃が弾かれる!」
新型には防護フィールドが搭載されていた、その防護フィールドは強力なビームを放つアテナの攻撃すら防いでいる、二対一と言う状況に持ち込んだのに攻撃が通じないアテナ部隊達は次々と新型に落とされて行く。
「流石ザルムだ!、帝国の機体の攻撃を防いでいる!、やはり防護フィールドを搭載させて正解だった!、このまま行けば皇帝を僕が殺せる!」
機体に防護フィールドを搭載させた張本人であるチームニは、このまま攻撃が通じないのであれば勝てるのでは?、そう思い喜ぶ。
「防護フィールドキャンセラー発動」
「はっ」
チームニが喜ぶ中、アリシアは淡々と防護フィールドキャンセラーを発動するように言った、メイルスの専売特許は強固な防護フィールドにある、その為メイルスを落とすのであれば、防護フィールド対策は確実に必要となる。
必要事項を怠る様では戦争になど勝てない、その為アリシアは一年前から技術部にメイルス用の防護フィールドキャンセラーを作るよう指令を出し、技術部は半年前に皇帝の要望に応え、各艦に搭載出来る程の数の量産に漕ぎ着けていた、防護フィールドキャンセラーに難点があるとすれば一国全域を覆える訳ではなく、一戦場しか覆えない事、全七十隻ある飛空艇が計十五隻落とされただけで発動不可となる点である。
「ぼ、防護フィールドダウン!」
「な、なんだって!?」
束の間の喜び、チームニは防護フィールドがダウンしたと聞き顔を青くする、何故ならメイルスの最大の武器である、防護フィールドが帝国軍には通じなかったのだから。
チームニが顔を青くしている間に、アテナ部隊は防護フィールドを失ったザルム部隊を次々と落として行く。
「ま、まだだ!、歩兵部隊を投入し、敵艦隊を・・・」
「歩兵部隊を投入しても無意味です!、チームニ様!、敵艦隊が何故海の上から動かないのか考えて下さい!」
「くっ・・・」
部下の言葉を聞き、帝国の猛攻を受け焦っていたチームニは冷静となる、そして思い直す敵がファントムだけを投入し、海上から飛空艇を移動させない理由、それは歩兵対策であると言う事を。
「各ザルム!、二つ目の特殊兵装を使え!」
敵艦隊は叩けず、ファントム部隊は次々と落とされる現状、チームニに出来る手はザルムに四つ搭載されている特殊兵装に活路を見出す事であった、四つある特殊兵装のうち一つは防護フィールドで、既に使い物とならなくなっている。
チームニの命令を聞いたメイルス軍のファントム部隊は、第二の特殊兵装、クアッドキャノン、二機のザルムの出力を掛け合わせる事で増幅させた、強力なビームを放たせた。
「流石ギグルス設計の機体、やるじゃない」
クアッドキャノンで次々とアテナを落として行くザルム達、アリシアは敵機の性能の高さに関心をしつつ、通信を開く。
「お姉ちゃん?、キース?、準備は?」
『出来たぞ』
「ふふっ、分かったわ、そのまま待機してて」
二人は敵旗艦の背後に回り込めたようだ、アリシアはそれを聞き命令をする。
「旗艦に攻撃しなさい、ふふっ二人なら落とせるわよね?、期待しているわ」
「へっ、お任せあれ、だぜ皇帝陛下様」
「私も任されたと言おうか」
アリシアは二人の言葉を聞きニヤリと微笑んで見せた。




