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セブンススタイル  作者: ブレイブ
第三部、三章、あの日が来る
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四話、あの日が来た

教国


アリシアに洗脳され自由な思考を奪われている教皇は、それでも高揚感を感じていた、その理由はこの日、己の主人がこの世界全ての王となるからだ。


「・・・始めよ」


虚ろな目の教皇は帝国に従わない各国にある教会に繋がっている通信機に向けて、始めろと告げる。


「さぁアリシア様、我等が皇帝陛下よ、世界をその手に・・・」




風の国ローラン、属国軍陣地


属国軍兵が監視用に建てた櫓の上に二人の少女と一人の女が建っている、怪しい笑みを見せるアリシアと、ワクワクした様子のニアと、訝しげな表示見せているイブリサだ。


「始まった」


王都の様子を見るアリシアは属国軍が手を出していないのに、王都から火が上がったのを見て微笑む、火は次々と起こり、王都内からは混乱した声が聞こえて来た。


普通は何もしていないのにおかしいと疑問に思う状態で、怪しげに笑うアリシアを見て、イブリサは皇帝が仕掛けた仕込みが発動したのだと思い質問する。


「陛下?、一体何が?」


「ふふっ、教国よ、イブリサ」


「陛下が己の物にしたと言う、あの国がどうかしたの?」


ただ教国と言われても何がなんだか分からないイブリサは更に質問した。


「聖教よ、この世界に生きる者達の大半が信仰するあの馬鹿馬鹿しい宗教を利用したの、邪教と名を変えさせてね」


アリシアはここで言葉を切り邪悪な表情を見せながら腕を開く。


「邪教を信仰する彼等にはね、こう伝えられているの、帝国と皇帝アリシアを信仰する信者達よ、皇帝の為に功績を上げよ、さすればお前達に無限の富が降り注ぐとね」


「無限の富とは私の帝国の臣民となる権利を得る事、つまりこの部隊の指揮者であるあなたよりも上の身分を手に入れられると言う事よ」


各国で豊かな暮らしをしているわけではない信者達には、帝国の臣民達が皆豊かな暮らしをしている事を教えてある、貧しい暮らしをし自身の国の上層部に不満を持っていた元聖教の信者達は、臣民となり豊かな暮らしを得る為、今日、功績を上げ臣民となる為に総決起したのだ。


「私だって欲しい臣民権を功績を上げれば得れる・・・、邪教の信者達が必死になるわけね」


「勿論、あなた達兵士にもこの権利をあげるわ、イブリサ、既に功績を上げているあなたは私直々にここであげる、あなたは今日から私の国の臣民よ」


「!、ありがとうございます!」


この場で臣民権をアリシアから与えられたイブリサは嬉しそうな表情を見せた後、ハッとした表情でアリシアに向けて跪く。


「顔を上げなさいイブリサ、そして兵士に伝えなさい、この日、功績を上げれば臣民と慣れるとね」


「はい!、皇帝陛下!」


アリシアに対する忠誠が薄かったイブリサは、アリシアから直々に臣民権を与えられた事により、アリシアに対する忠誠を強固なものとしていた、アリシアに強い忠誠を誓うイブリサは恭しくアリシアに頭を下げると、兵士達にアリシアの言葉を伝える為、櫓から降りて行った。


「さぁローラン王?、絶望なさい、民だけでなく、兵士すらも裏切る目の前の現実にねぇ?」


「あはっ、早く王様の顔を見たいわ、母さん、今どんな顔してんだろ」


「ふふっすぐに見れるわニア、イブリサが私の元に戻ったらすぐに出撃するわよ」


「うん!」


世界を己の物としかけている邪悪な皇帝は櫓から降りて己の機体にへと向かう、この世界への復讐の第二段階が始まった事への高揚感を感じながら。




王城


王はただただ呆然と、テラスから街に火を付け邪教を信仰しない者へ襲いかかる民や、嬉々として街に火を付ける兵士達を見ていた。


「ジークアトリーヌ!、見つけたぞ!、王よ!」


「き、騎士団長・・・」


王は背後に現れた騎士団長の口から発せられた言葉を聞き目の前が真っ暗になったような錯覚を感じた、自分への確かな忠誠を誓っていた筈の目の前の男すら、自分を裏切るのかと思ったのだ。


「覚悟!」


帝国臣民となる夢の為、王に斬りかかる騎士団長、もう少しでその切っ先が王に触れると言う所で、彼は斬り裂かれ倒れた。


「大丈夫ですか?」


「ああ・・・」


騎士団長を一撃で葬り去ったのはメアだった、その背後には愛理とファーリーもいる。


「国王・・・、我々の国は・・・」


「・・・、完全な敗北だよ・・・、ファーリー、私の国は我等の民と、我等の兵士、そして帝国の属国となった国から送られた兵士達によって滅ぼされる・・・、ははは笑えるだろう?」


絶望し切った国王は力なく椅子に座る、ファーリーはそんな彼を見て彼に近付くと肩を叩いた。


「君達は逃げろ、先程ギグルスから連絡が入ってね、あの国も民による反乱が起こったようだが、軽度の反乱で鎮圧は確実に出来ると言っていた、帝国にこの世界を支配させるわけにはいかない、その為の反抗の兆しとしてギグルスに逃げ延びてくれ」


「し、しかし!」


「命令だファーリー、・・・私の最後の命をどうか聞いておくれ・・・」


「くっ!、分かりました・・・」


国王の命令はファーリーにとっては絶対、ファーリーは王を見捨てる事となるこの命令を、悔しそうに受け入れた。


「メア殿、そして魔王殿よ、ファーリーを頼む、そしてこの世界を帝国から守ってくれ」


「はい・・・」


「うん・・・」


国王からこの世界を任された二人は辛そうな表情で頷く、そしてメアは理解していたアリシアが言っていた言葉の意味を、側近をニアしか読んでいない意味を、側近を全員呼ばなくてもアリシアにとってこの戦いは確実に勝てる戦いであったのだ。


「それでは行け、そしてギグルスの反乱の鎮圧を手伝ってやってくれ、あの国の戦力を失わせるわけにはいかない」


「分かりました、・・・、どうかご無事で・・・」


この日、王は国と共に死ぬそれが分かっていてもファーリーは、王に気休めにしかならない言葉を伝えるしかなかった、王は力なくファーリーの言葉に頷き、ファーリーはそれを見て涙を流してから手を差し出しているメアの手を取り転移して行った。


「さぁ、私は最後の戦いの準備をしよう、かかって来るがいいさ皇帝よ」


王は鎧を着込む為、王座を後にする。




属国軍陣地


「来たわね、イブリサ、私に同行なさい」


「はっ!」


アリシアから同行するよう命じられたイブリサは見事な敬礼をした、アリシアはそれを見て満足気に頷くと、ゼウスに乗り込み起動させる。


「王都内での敵と味方の判別は、兵士や機体の胸のマークでなさい、教国からの伝令で信者達には胸に私の国の国旗を付けるように伝えてあるからそれで分かるわ」


「了解です、陛下」


「はーい」


「それでは行くわよ」


アリシアは属国軍陣陣地を後にし、機体をゆっくりと歩かせ城壁を破壊しようと何度も攻撃をしているアテナ部隊に近付いて行く、アテナ部隊のパイロット達はアリシアのゼウスを見て、臣下の礼を取ると、左右に分かれゼウスが行く道を作る、その道はアリシアがこの世界のほぼ全てを手に入れた事を祝福する花道のようであった。


「フォトンドライブ、発動」


城壁の前に機体を立たせたアリシアは、ゼウスに追加装備された特殊モード、フォトンドライブを発動させる、その瞬間機体が紫色に光り輝き、全ての性能が三倍にまで向上した。


「ふふふ」


アリシアは楽しそうに笑いながら、紫色に光り輝くゼウスにビームバスターを構えさせる、そしてトリガーを引くと、ビームバスターの銃口から恐ろしい程までの威力はビームが発射され、数百機のアテナでも破壊出来ていなかった城壁を大きくくり抜いて跡形もなく消し去った。


「行くわよ、ニア、イブリサ、侵攻するよう部隊に伝えなさい」


「承知致しました」


アリシアは通信機越しに部隊に命令をするイブリサの声を聞きつつ、属国軍の先陣を切ってフォトンドライブを切り通常出力に戻ったゼウスで、王都の中に侵入した、その瞬間、ゼウスが皇帝専用機だと知る邪教の信者達が歓声をあげた。


「陛下よ!、皇帝陛下がお越しになられたわ!」


「我々の活躍を見てもらわなければ!」


「ジーク!アトリーヌ!」


「ジーク!アリシア!」


ゼウスを見て士気を上げた信者達は歓声を上げながら、更なる破壊活動に勤しんで行く。




「皇帝め!、喰らえ!」


王城に向けてゆっくりと機体を歩ませニアとイブリサと共に進んでいたアリシアのゼウスに、一機のジームが攻撃を仕掛けてきた。


「させないわよ」


イブリサが盾でその攻撃を防ぎ、ニアが正確にコクピットを刃で貫き仕留めた、アリシアは優秀な側近と臣下の活躍を見たアリシアは、口を開き・・・。


「よくやったわ」


労いの言葉を掛けた。


「いえ」


「えへへ〜」


イブリサは謙遜した様子で返事をし、ニアは嬉しそうな声を出した、アリシアは二人の個性を微笑ましく思いつつ、機体を歩ませ遂に王城の前に辿り着いた、そこにはなんとか王城内の裏切り者は排除したのか、複数のジームが待ち構えていた。


「邪魔ね」


邪魔者の姿を見たアリシアは再びフォトンドライブを発動させた、そしてビームバスターからビームを撃ち、目の前の敵を薙ぎ払う、その一撃でアリシアを邪魔するジーム達は跡形もなく消滅し、アリシアの行く手を阻む者は居なくなった。


「イブリサ、ここで機体を降りる、私とニアの機体をお願い」


機体のコクピットを開けたアリシアは、イブリサと連絡を取る為耳に通信機を付けながら、彼女に機体を任せると伝えた。


「はっ」


イブリサはその言葉に返事をする、それを聞いたアリシアは機体から飛び降り、ニアも機体から降り近付いて来た。


「さぁニア、王に会いに行きましょう」


「ええ、母さん」


皇帝と皇帝の娘は、王に会う為、王城の中に入って行った。

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