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セブンススタイル  作者: ブレイブ
第三部、三章、あの日が来る
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一話

アトリーヌ城


教皇との会話を終え帝国に戻って来たアリシアは上機嫌な様子で夫の元に向かい膝の上に座った、アルムスは妻を背後から優しく抱きしめ腹に触れる。


「出来ているといいのだがな」


「ふふっ、きっと出来てる、私とあなたの初めての赤ちゃんはね」


アルムスの言葉を聞き顔だけをアルムスの方に向けて頬を赤く染め、可愛らしく微笑んだアリシアは、腹に触れているアルムスの手に自分の手を合わせてからキスをする。


「ねぇあなた?、一番苦戦している戦場はどこだったかしら?」


アルムスとのキスを終えたアリシアは、属国軍が一番苦戦をしている戦場について、夫に聞いた。


「ローランのロースルーの丘の戦いだ、そこには風のスタイル使い、ファーリーがいてな、奴の風の力に阻まれ、属国軍は攻めあぐねているようだ」


「ファーリーか・・・」


ファーリーの名を聞きアリシアは緑色の長髪を持った彼の姿を思い出す、そして思う、メアを殺せなかった憂さ晴らしには丁度良い相手だと。


「お前はどうせこう言う、ちょっと行ってくるとな、止めはせぬが怪我はするな、良いな?」


ファーリーの事を思い出し邪悪な笑顔を見せたアリシアを見て、アルムスは妻の頭を優しく撫でてから、怪我はするなと伝えた。


「分かってる、それじゃまた後でね、あなた」


「うむ」


夫の膝の上から飛び降りた少女皇帝は、ローランを侵攻している属国軍に対してちょっとした手助けをしてあげる為、ローランに向けて転移して行った。



ロースルーの丘


アリシアの属国にならなかった国への方針が支配から殲滅へと変わった事により、属国軍の動きは変わっていた、このロースルーの丘に攻め込む前、見かけた村を彼等は警告もなしに攻め込み滅ぼし物資を略奪したのだ、好きに殺し犯し奪えと言うアリシアの命令に従って。


物資と複数の女を得て士気の上がった属国軍は、その勢いのままロースルーの丘を突破しようとしたが、そこにファーリー率いる軍勢が来襲し、前衛に立つファーリーを含めた魔導士の集団の強力な風の魔法に苦戦し、攻めあぐねているのだ。


「数日振りね?、ローラン侵攻軍総大将、イブリサ」


「こ、皇帝陛下!?」


ローラン侵攻軍総大将イブリサのテントの中に数人の兵に案内されたアリシアが入って来た、皇帝の姿を見たイブリサは、慌てて立ち上がるとアリシアの前に行き臣下の礼を取る。


「い、一体どう言った要件かしら?、支配戦争から殲滅戦争に切り替える準備だけでも大変だったのに、これ以上私に何か頼み事でも?」


若干棘のあるイブリサの言葉を聞きアリシアはこのように言われるのは当たり前だと思う、自分のワガママで支配戦争から殲滅戦争に切り替えさせたのは事実だからだ、だからこそ苦労をかけた将達を労う為ここに来たのだ。


「あなたが苦戦していると聞いたから助けに来てあげたの、さぁ?私は何をすれば良い?イブリサ、一度だけ私にあなたが命令をする事を許してあげるわ?」


「一度だけ・・・、なら私の軍が攻めあぐねる原因となっている、敵軍最前線の魔導士部隊を崩してくれるかしら」


「あら?崩すだけで良いの?」


「はい、陛下にあまり大きな借りは作りたくはないもの」


「賢いのねあなた」


皇帝に借りを作らないと言ったイブリサを賢いと称したアリシアは、その頬に手を触れさせた、皇帝に触れられたイブリサは目の前の紅い瞳をした少女の美貌に、同性と言えど見惚れてしまい、ほぅと息を吐いた。


「こ、これでも、総大将をやっているのだもの、当たり前よ」


「ふっ、そうだったわね」


アリシアに見惚れていたイブリサは顔を振るって気を取り直すと、誇らしげに胸を張った、アリシアはそんな彼女を見てクスクスと笑ってから背を向ける。


「それでは行ってくるわ、イブリサ、あなたの命令通り最前線の魔導士部隊を崩し、あなたの軍の為に突破口を作ってあげる」


「感謝致します、皇帝陛下」


杖を右手に持ちテントを後にしたアリシアは先に高台から確認しておいた、戦場の最前線に向けて転移した。




「くっうううう!」


属国軍の兵士達やファントム達は、どうにか目の前から壁のように迫る風を突破しようと走るが、五百メートル程まで距離を詰めた所で限界が来て吹き飛ばされて押し返されてしまう、強力な風は完璧に敵軍の侵攻を食い止めると言う役目を果たしていた、アリシアがこの戦場に現れるまでは。


「魔力量が少なくなった者から控えの者に交代をするのを忘れるな!、魔力欠乏症を起こしては意味がないのだからな!!、・・・?、あれは・・・」


魔導士達には後退するように命じるが自身は後退する気は一切ないファーリーは見た、一人の黒いドレスを着た見知った少女が戦場に現れるのを。


「皇帝となってしまったあの時の彼女、アリシア・レイティス・・・」


今となって分かる事、それはファーリーが感じた不穏な力は確かにアリシアの中に存在していたと言う事だ、その力とは闇のスタイルの力である。


「御機嫌よう、風のスタイル使いファーリー」


ファーリーが自分の名を口にしたのを聞いたアリシアは、薄笑いを見せながらスカートを持ち上げ会釈をした。


「皇帝がこの戦場に来るとは思っていなかったよ、全軍!油断をするな!、油断をした瞬間、やられるぞ!」


ファーリーが部下達に警告をする。


「あはっ、油断をしていてもいていなくても、関係ないわ、あなた達は私の力に平伏しその命を失うのだから」


そう言ってアリシアは杖を振るう、すると十個の魔法陣が現れ、すぐ様ブラスターが放たれる。


「!」


ブラスターはファーリーの真後ろに着弾する、ファーリーは慌てて振り返るが、彼の背後にいた彼の部下の魔導士部隊は全滅していた。


「・・・、そ、そんな・・・、これでは属国軍の侵攻を止められない・・・」


風の防御が無くなったのを目の当たりにしたファーリーが絶望する。


「やりすぎちゃった、反省しなきゃね」


「本当よ!、やりすぎよ!、大きすぎる借りになっちゃってるわよ!、これ!?」


アリシアを追って最前線にやって来たイブリサは、アリシアが魔導士部隊を全滅させてしまったのを見てアワアワと混乱している。


「安心なさい、ちょっとイライラしていた結果の私のミスだから、小さな借りと言う事にしておいてあげる、そんな事よりも今がチャンスよ?、部下に命じ、奴等の殲滅を命じなさい」


イブリサは隣に立つ皇帝の顔を見て息を飲む、殲滅を命じるようイブリサに言ったアリシアの表情やその体から発せられる闇の魔力は恐ろしいほどまでに邪悪であり、人はここまで邪悪に染まれるのかと思ってしまったからだ。


「全軍進軍!、皇帝陛下ぎ切り開いた道を進み、敵を殲滅せよ!」


「「おお!」」


皇帝の姿を見て士気を高め、イブリサの言葉を聞き更に士気を高めた属国軍は、イブリサを先頭にしてローラン軍に向けて雪崩れ込んで行く。


「くっ!、撤退!、撤退だ!」


ファーリーは慌てて撤退を命じるがもう遅い、ローラン軍は属国軍に飲み込まれ一方的な殲滅が始まったからだ、それを見てアリシアは・・・?。


「ふっふふふ、そうよ!、私に従わなかった愚かな敵を殺し尽くせ!、あはっ!あっはははは!」


次々と殺されて行くローラン兵を見て楽しそうに笑っていた。





イブリサのテント


ロースルーの丘の戦いはそれまでの苦戦が嘘のように属国軍の圧勝で終わった、大量の兵を失ったローラン軍は、各地の戦いから撤退をし王都に戦力を集め始めているようだ。


「イブリサ、早速借りを返させてあげる、私をこのまま同行させなさい」


一国が滅びる様子が見たいアリシアは、イブリサに自身の同行を許すよう言った。


「勿論よ、陛下」


「いい子ね」


「あなたの力は強大、そして同行をして貰えばその力を振るって貰えるかもしれない、同行を断る方が馬鹿だと私は思うわ」


「ふふ、気が向いたら戦ってあげるわ、それでここお風呂はあるのかしら?、汗を流したいのだけれど」


「私用の移動式浴場車があるわ、使って」


「ありがとう、ありがたく使わせて貰うわ」


アリシアはイブリサの移動式浴場車に向かいつつ、イブリサの軍の戦力を更に底上げする為、ニアを呼ぶ、そして母に呼ばれ上機嫌なニアに自分の体を洗わせた。

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