二話、地球へ
アトリーヌ城、皇帝の執務室
「良し!、終わり!、これで行っても良いわよね?、あなた!」
大量の資料へのサインを済ませたアリシアは、夫の前に行って仁王立ちすると、DIVAを探しに行っても良いか聞いた。
「よかろう、ただ一つだけ言っておくぞ、アリシア」
アルムスは自身の前で仁王立ちする妻に近付き抱きしめる。
「未来のお前は、DIVAに体を乗っ取られたと聞く、そしてDIVAの元に向かうと言う事はお前にもその可能性があると言う事だ、だから絶対に体を奪われるな、お前と言う愛する妻を私は失いたくない」
「ありがとうアルムス、私もあなたの事愛してる、だから約束するわ、DIVAに体を奪われたりなどせず、DIVAを手に入れてここに帰ってくると」
「ああ」
必ず帰ってくるとの妻の言葉を聞いても不安気なアルムス、そんな彼を見たアリシアはとある事を話す。
「そもそも、私、まだあなたとの子を作ってないわ、子を作るって言う女としての一番の幸せを体験してないのに、この私が体を奪わせたりするわけないでしょう?」
「子か、そうだな私もお前との子が欲しい」
「うん!、私は私のまま必ずここに帰ってくる!、だから帰って来たら私とあなたの赤ちゃんを作りましょう」
「うむ、待っているぞ、アリシア」
「ええ!」
最後の言葉は頬を染め恥ずかしそうにアリシアは言った、アルムスはそんな妻が堪らなくなるほどに愛おしくなりギュッと強く抱きしめた。
「それじゃ行ってくるわ、アルムス」
「ああ、行って来い、アリシア」
アルムスとの子が欲しい、そう思うアリシアは愛する夫が待つここに必ず帰るそう誓ってから彼から離れ、側近達を引き連れ地球に向かって行った。
地球
DIVAを探す為の出発点としてアリシアが選んだ地球の太平洋の海上に浮かぶ、光学迷彩で周囲の風景に溶け込み、その姿を隠しているアリシアの飛空艇の中でアイリーンが目を閉じて魔力を探っていた。
「どうかしら?、アイリーン」
「・・・、もう暫くお待ちを・・・」
ゼロの魔力を探しているアイリーンは暫し待つようにアリシアに伝えた、既にアイリーンは微弱だがゼロの魔力を感じており、後はその方角を探るだけとなっていた、しかし宇宙は広大である為、中々に方角を掴み切るのは難しい。
「今回は姉さん頼りなのが辛いところねぇ」
「そうね、あとでたっぷりとご褒美をあげなきゃ」
ご褒美と聞いて、目を閉じて魔力を探っていたアイリーンは、目を開けてパァァと嬉しそうな表情を見せる。
「集中なさい」
「はい・・・」
集中しろと母に言われたアイリーンは、嬉しそうな表情からシュンとした表情になり、また魔力を探り始める。
「アリシア、今の所、この世界のワールドセイバーが私達を察知した様子はない、しかしこの飛空艇の魔導炉を起動させればすぐにバレるぞ、この魔力のない世界で魔力を発すればすぐに察知されるからな」
「大丈夫よ、お姉ちゃん、この機体には宇宙用装備としてワープ装置が搭載されている、DIVAがいる場所までの距離によっては数度のワープが必要にはなるでしょうけど、察知されたとしても先にワープした私達が先手を取れるわ」
帝国はいずれ直面するであろう人口問題の事を考え、宇宙技術の発展にも資金を投じている、その一端がこの機体の宇宙用装備として追加されたワープ装置である。
「そうか、・・・、誰が追って来ると思う?」
「そんなの決まってる、この地球の最大戦力である、師匠よ、後は師匠が必ず呼ぶ筈の、メア達ね」
「またあいつらかよ、しつけぇなぁ」
キースが何度も戦っているメア達がまた追って来るだろうと聞き、面倒臭そうな表情を見せた、それもそのはず、最早腐れ縁と言えるほどにアリシアとその側近と、メアとその仲間達は戦っているのだから。
「確かにね、良い加減に仕留めたい所だけど、今回は無視よ、構っている暇はないもの」
「はいよ、奴等を殺すのは今後の戦争の時、だろ?」
「ええ、だから今回は私もメアを見てもあいつに拘らない、あくまでもDIVAを優先するわ」
「あいつを殺したいって言うお前がそう言うんだ、俺も無視するよ」
キースがアリシアの言葉に頷いた時、アイリーンが目を閉じながら立ち上がる。
「見つけたの?」
「はい」
そう言ってアイリーンは真上を指差す、その先がDIVAが潜む場所なのだろう。
「なら操縦席に座りなさい、あなたの脳を測定し、距離を算出してくれるわ」
「了解です」
アイリーンは操縦席に座る、するとすぐにコンピューターがアイリーンの脳を測定し、アイリーンが見つけたDIVAが潜む場所までの距離を算出し、画面にはDIVAが潜む場所までのワープ回数が表示される。
「七回、およそ三つの銀河を超えた先にDIVAは隠れているんだな」
「みたいね、アイリーン、操縦席から離れなさい、キース、操縦を早速向かうわよ」
「おう」
アリシアの言葉に従い操縦席に座ったキースは、魔導炉を起動させる、そして機体を浮遊させると宇宙に向けて加速させ、皇帝の飛空艇は宇宙と言う名の大海原にその一歩を踏み出した。
「それじゃ行くぜ!、ワープ!」
宇宙に出た飛空艇をキースはワープさせる、その瞬間ワームホールが現れた、キースはワームホールの中に機体を飛び込ませ一回目のワープをした。
天上界
かつての仲間達を誘い、メア達の世界でメサイヤの換装作業の手伝いをして貰っている愛理は、天上界で長年戦っていなかったラフォリアの鈍りをなくす為、彼女と鍛錬をしていた、すると愛理が持つワールドセイバーの端末に連絡が入る。
「ええ、分かったわ」
連絡を終えた愛理はラフォリアの顔を見る。
「・・・、やはりですか?」
「ええ、アリシアの世界の飛空艇の魔導炉の反応を地球で感知したみたい、・・・、私が見つけられないのにあの子はどうやって・・・」
愛理は自分にはDIVAを見つけられなかったのに、アリシアは見つけたのを疑問に思い俯いて考え込み始める、そんな親友を見てラフォリアはその肩を叩く。
「考えても仕方ないですよ、そんな事よりもメサイヤの元に向かいましょう」
「うん、鈍りは解けた?」
「はい、あれだけスパルタで挑まれればすぐにそんな物なくなりました」
愛理は鈍りまくっているラフォリアに対し本気で挑みかかっていた、そんな彼女に対しラフォリアは全力で立ち向かい、その力を存分に発揮出来るようになっていた。
「良し!、それじゃ行こうか!」
「はい!」
かつての英雄達は手を繋ぎ合うと転移し、メサイヤの元に向かう。
ギグルス国、首都アーシア、飛空艇ドック
ここは首都アーシアにある飛空艇ドックのうちの一つ、普段は別の機体の製造が行われるここにメサイヤがいた。
「師匠」
愛理が転移して来ると、その姿を見たメアが近付いて来る。
「換装作業はどう?、終わった?」
「はい、終わりました」
「優秀だね、それじゃ早速行こう、アリシア達が私の世界に現れたの」
「・・・、アリシアはDIVAを見つけたと言う訳ですか・・・、分かりました、メサイヤを起動させます」
メアは宇宙仕様となったメサイヤに乗り込んで行く、愛理は機体に乗り込む前にかつての仲間達と、向き合う。
「さっみんな、久し振りのフォックステイル復活だ!、頑張ろう!」
愛理に声をかけられた、愛理のかつての仲間、レベン、麗蘭、ケーニ、蒼狐、未来の灯理、そして相棒ラフォリアは力強く頷く。
「無限の彼方にさぁ!、イテッ!」
「いきなり何を言おうとしてるのかしら!?、私の幼馴染は、変な事言ってないで早く乗りなさい!」
ハハッ!と笑われそうなセリフを口走りそうになった愛理の頭を叩いた麗蘭は、愛理に早くメサイヤに乗るように言う。
「相変わらずだなぁお前は」
「成長が見受けられませんよね、初めて会った頃からずっと精神年齢が子供です、愛ちゃんは」
「仕方ありませんよ、それが愛理ちゃんです」
「だよねー」
「・・・」
次々と愛理は子供だと言う仲間達の中で、特にレベンが呆れて頭を抱えているのを見て拗ねた愛理は、プクーと頬を膨らませ・・・。
「な、何さ!、私、子供じゃないよ!」
「はいはい」
尻尾の毛を膨らませムキーと怒る、そんな彼女の背中をラフォリアははいはいと言いながら押し、飛空艇の中に押し込む、暫くプリプリと怒っていた愛理は、メアの機体を動かしますよ?との言葉を聞き黙る、振動で舌を噛みたくないのだ。
「それではメサイヤ発進!、地球に向かいます!」
「転移は私がするねー」
未来の灯理の転移で地球に転移したメサイヤは、アリシアの飛空艇を追いかけ始める。




