十五話、結婚式
ノースフィア本部奥地
ニヤニヤとした笑みを見せるホログラムのジューベルが見守る中、アリシア達はレギルス改に立ち向かう。
「はぁ・・・はぁ・・・」
アイリーンの治療は傷は治せても体力は戻せない、ここに来るまでの間にアイリーンの治療により傷は完治したが体力は戻っていないアリシアは肩で息をしている。
「・・・アリシア、後方で援護をお願いします」
「大丈夫よ、メア、なんとか持たせるから」
「でも・・・」
「ほら!、来るわよ!」
「ッ!」
明らかに辛そうなアリシアをメアが心配するが、レギルス改は両手に持ったビームライフルからビームを放って来た。
「防ぎますわ!」
アイリーンがビームを防ぐ、ビームの照射が終わってからアリシアはメアに笑いかけてから肩を叩くと走り出した、メアは目の前を走るアリシアを心配しつつも追って走り、二人はレギルス改に取り付いた。
「はぁ!」
「はぁぁ!」
アリシアとメアは同時に斬撃を放つが、レギルス改の装甲に弾かれる。
「ハハハ!、そのレギルス改の装甲にはフォトンリウムが使われている、貴様らの攻撃でも早々には貫けんぞ!」
「くっ、厄介ね!、アイリーン!同時にブラスターよ!、はい!」
「ええ!」
アリシアとアイリーンはタイミングを合わせ、レギルス改にブラスターを叩き込む、しかしレギルス改はビームシールドでその攻撃を防いだ。
「私の攻撃を防ぐなんてやるじゃない!」
(・・・マズイですね)
アリシアのブラスターを何度も目の当たりにしているメアだからこそ分かる、あのブラスターを防ぐレギルス改の性能の高さを、そんな高性能機相手にアリシアの体力が少ないこの状況では、何としてでも戦闘を早期に終わらせなくてはならない、そう判断したメアは全力で魔力を解放するとレギルス改に攻撃を仕掛ける。
「ゼロブレイカー!」
ガンブレードをゼロの魔力の大剣に変えたメアは、レギルス改に向けて振り下ろす、それを見たレギルス改を操っているパイロットは後退しようとしたが間に合わず、メアに左腕を奪われる。
「チィィ!、関節部を狙ったか!」
「はぁ・・・、はぁ・・・、やるじゃない!」
そう装甲にはフォトンリウムを使っているが関節にはフォトンリウムは使われていない、ならば関節を攻撃すれば攻撃は通ると言う事だ、普段のアリシアならこの程度すぐに思いつくのだが、疲れのせいで頭が回っておらず、思い至らなかったようだ。
「なら次に狙うのは股の関節よ!」
アリシアは若干フラつきつつも走り始め、ダークライジングブレイカーを発動させると、レギルス改の股と足の接続部を斬り裂いた、片足を失ったレギルスは倒れるかと思われたが、ブースターを吹かし浮く事で倒れるのを防ぐ。
「はぁ・・・はぁ・・・」
浮くレギルス改を見たアリシアはジャンプしもう一撃、加えようとしたが体が動かなかった、両手を地面に着き辛そうに息をするアリシアに、レギルス改のビームが迫る。
「させません!」
メアがその一撃を弾きアリシアを守った。
「ありがと、助かった」
「全く、だから後方で援護して下さいって言ったんです、ほら後一息です、トドメ刺しちゃいましょう!」
「・・・はぁぁ、ええ!」
息を整え立ち上がったアリシアはメアに手を差し出す、メアは微笑んでからアリシアと手を繋ぐとレギルス改に向けて走り出す。
「師匠の技で行くわよ!メア!、エクスプロージョン!」
「発射です!」
それはかつて金色の九尾と白髪の天使が放った技、その技はレギルス改に迫るとコクピットに直撃し貫いた、コクピットを失ったレギルス改は、ゆっくりと地面にへと落ち爆発する。
「今はここにいないから殺さないわ、でも覚えておきなさいよジューベル、いつかアンタを殺してやる!、絶対にね!」
「そ、その前に私がお前を殺す!、どんな手を使ってでもな!」
明らかにアリシアに怯えた様子の表情を見せたジューベルは消えた、それを見送ったアリシアはフッと意識を失い倒れる、メアとアイリーンは慌てて抱き止める。
「ふふ、お疲れ様でした、アリシア」
「はい、それでは帰りますわ、メア様お母様を背負ってあげて下さい」
「はい」
レギルス改に勝利したアリシア達はこの場を後にする。
首都アーシア、国会議事堂
ノーワンズホールでの戦いの後、本部が壊滅したと知った、残ったノースフィアの構成員達は降伏した、アリシアは全員の処刑をオラセンに申し出たが、オラセンは罪を償わせるべきだとこれだけは拒否し、捕らえた構成員達を全員牢屋に入れ拘束した、これによりノースフィアによる危機は収束したのである。
「納得いかないわ、あんな奴ら全員殺すべきよ」
「まぁまぁ彼等が降伏して来たのはこの国だし、アリシアの意見が通らないのは仕方ないわよ」
オラセンの決定に納得がいかないアリシアは拗ねている、それをニアがまぁまぁと言い慰める、するとアリシアはニアの柔らかい胸に顔を埋め甘え始めた、ニアは優しく甘えてくる母の頭を撫でる、すると扉が開く音がし、アリシアが扉の方を見るとオラセンがいた。
「あら、オラセン、何か用?」
「お礼を言いに来たのだよ、君達のお陰でノースフィアを潰せた、ありがとう」
「フン、一年後に敵となり戦う相手にお礼なんて言われたくないわね」
「はは、それでこそ君だ、それではなアトリーヌ帝国皇帝アリシア」
「ええ、また会いましょう?、ギグルス国首相オラセン」
空気の悪い挨拶を交わし合ったアリシアとオラセン、オラセンはアリシアと目を合わせてから去って行った、アリシアは彼の目が一年後は絶対に負けない、そう言っているのだと感じ、望むところだと思う。
「失礼します」
オラセンとの会話を終えたアリシアがもう一度ニアに甘えようとした途端、またドアが開き、メアが入って来た。
「どうしたの?、メア」
「今日が終われば、私達はまた敵に戻ってしまいますから・・・、少しだけでもお話をと」
「そうね、今日が終われば私達はまた敵、と言いたいところなんだけどね、私、あなた達を結婚式に招待しようと思ってるの、来てくれないかしら?」
「えっ!?、良いんですか!?」
結婚式に招待されると思っていなかったメアは驚いた表情で、アリシアの顔を見る。
「勿論、それで来てくれるの?来てくれないの?」
「勿論、行きます!」
「ふふ、ありがとう、待ってるわ」
「はい!」
メアを結婚式に招待し、嬉しそうに微笑むアリシアは、メアに微笑みかけてからこの部屋から去って行った、メアはアリシアの結婚式を楽しみにしつつ、自分もこの首都を後にしオルビアの町に戻って行く。
数日後、結婚式当日、帝都結婚式場
遂にアリシアとアルムスの結婚式の日がやって来た、ウェディングドレスを着たアリシアはアルムスと向かい合っている。
「アルムス・アトリーヌよ、そなたはアリシア・レイティスを妻とし、一生を共にすると誓いますか?」
「誓います」
「アリシア・レイティスよ、そなたはアルムス・アトリーヌを一生を共にすると誓いますか?」
「誓います」
「よろしい、それでは指輪の交換をし、誓いのキスを」
アリシアとアルムスのは指輪を互いの指に付け、沢山の臣民やメア達が見守る中、抱き合い見つめ合う。
「ふふっ、これからよろしくね、ダーリン?」
「ダーリンはやめろ」
「照れちゃって・・・、可愛いんだから、ほらキスしましょ?」
「ああ」
アリシアは目を閉じアルムスを待つ、アルムスはアリシアの小さな顔に手を添えるとアリシアとキスをした、そして二人の顔が離れた瞬間、式場に歓声が起こり、二人を祝福する拍手が起こった。
「・・・」
結婚した二人を祝福する者達の中で一人、グレイは複雑な表情を見せていた、シメラはそんな彼に寄り添い、腕に抱き着く。
「ねぇグレイ、こんな時に言うのはズルいと自分でも思う、でも私じゃダメかな?、私ね?ずっとあなたの事が好きだったの、だから・・・」
勇気を出せ、アリシアの言葉を聞いたシメラは勇気を振り絞りグレイに告白をした。
「ごめんシメラ、少しだけ考えさせてもらっても良いかな?」
「うん、良いよ、待つ」
グレイはシメラの告白を断らなかった、シメラはそれだけでも嬉しくて花のような笑顔を見せ、グレイから離れメア達の元に行った、グレイはそんな彼女を見送ると、アルムスの隣で幸せそうに微笑むアリシアを見つめ続けた。
第二部、六章、ノースフィアとの戦い編、完




