十話
ギグルス国、オマリワ山脈
「来なさい、レグルスフレイム」
ここはオマリワ山脈、ギグルス国の南にある山脈で、ここの中腹にノースフィアのアジトがある、アジトの前までメア達を引き連れてやって来たアリシアはレグルスフレイムを呼んだ。
「あら?アリシアちゃん、お仕事?」
「ええ、そこの扉を破壊してくれる?」
「コレね、任せなさい」
レグルスフレイムは腕を振りかぶると、アリシアが壊せと言った扉を殴り付けた、すると扉は一撃で吹き飛び、アジトの入り口が開いた。
「て、敵襲!」
吹き飛んで来た扉に潰されなかった兵士達が叫び、他の仲間に敵の襲撃を伝えている、それを聞いた他の兵士達がアリシア達に向かって来る、先のソルの襲撃から更に敵が来るのを予想していたのか動きが早い。
「帰っていいわ、レグルスフレイム」
「はーい」
「さぁみんな?、踊りましょう?」
レグルスフレイムを帰したアリシアは顔だけをメア達に向け、怪しい笑みを見せる、そして剣を引き抜いたアリシアは、剣に闇の魔力を溜めながら斬りかかった。
「ダークライジングブレイカー!!」
アリシアは闇の雷の斬撃を横振りに振るう、その一撃だけで敵の兵士が大量に消し炭となった。
「ゼロショット!」
アリシアの横に並ぶアイリーンがゼロの魔力の弾丸で次々と敵兵の頭を撃ち抜いて行き、エリシアとニアは接近戦で次々と敵兵を斬り殺して行く、続けてキースが口から炎を吐き、入り口の兵士を焼き殺した。
「たった五人で、これが皇帝アリシアと四人の側近の力・・・」
「なんて強さだ・・・」
ノースフィアの兵士達が皇帝とその側近の強さを見て怯えた。
「フン、僕達は宗教などない世界を作る為にノースフィアに入ったんだろう?」
「なら怯えてどうする!、戦え!」
その瞬間、アジトの奥から二人の少年の声、以前アリシアを見ていた二人だ、二人はアリシアに向けて同時に斬りかかるが、メアがその斬撃を受け止めた。
「皆さんは兵士達の相手を、この二人は私とアリシアで引き受けます!」
「分かった!」
メアの言葉を聞いたグレイ達は、キース達と共にノースフィアの兵士達の相手を始めた。
「勝手に何を言ってるのかしら?」
勝手に二人の少年とメアと共に戦う事にされたアリシアは、メアを不満げに見つめる。
「いいじゃないですか、一緒に戦って下さいよ」
「・・・、はぁ、仕方ないわね、良いわよ」
メアはそれを聞いて振り返り、笑顔で一緒に戦おうと言う、その笑顔を見たアリシアはため息を吐いてから、メアの横に並び肩を叩く、メアはアリシアに微笑みかけてから、少年二人を振り払った。
「闇と雷のスタイル使いと」
「ゼロのスタイル使いの私達があなた達の相手をしましょう、あなた達の名前は?」
メアはこれから戦う二人の名前を聞いた、アリシアが隣で敵の名前なんてどうでも良いわよと言ってるが無視する。
「ラーギと」
「ラーサさ!」
「これから君達二人を」
「殺す男さ!、しっかりと名前を覚えてね!」
双子の兄弟、ラーギとラーサはそう言うと息のあった動きでアリシアとメアに斬りかかって来た。
「行くわよ、メア」
「はい、アリシア」
アリシアとメアはキン!と良い音で剣を合わせあってから、同時に駆け出した。
「「ツインソード!」」
アリシアとメアに迫った双子の兄弟は、二人の魔力を完全に同調させる事で威力を引き上げる技、ツインソードを放つ。
「ダークライジングソード!」
「ゼロソード!」
アリシアとメアも同時に魔力を纏わせた斬撃を放ち、二人と二人の斬撃が交わり合う。
「やるね!」
「流石は皇帝と・・・、誰?」
交わり合った斬撃は相殺され消えた、それを見た双子は一度後ろに下がり、兄がやるねと褒め、弟が二人を評価しようとしたが、メアの顔を知らなかったようで首を傾げた。
「メアです!」
アリシアのように世界に顔を公表していないので、知らない方が当たり前なのだが、それにプンスカ怒るメアは名乗る。
「ええっと、メアだ!」
弟は名前を聞きわざわざメアの名を言ってくれた、テロ組織のノースフィアに所属している割に意外と性格は良いようだ。
「ありがとうございますぅ!」
「子供か」
「うっさいです!」
「・・・」
それを聞いて子供のように唇を尖らせているメアを見て、アリシアが子供かとツッコミを入れるが、メアはうっさいと言った、アリシアはそんなメアを呆れた視線で見つめ、いつの間にか左手に持っていた杖から容赦のないブラスターを放った。
「うわわ!凄い魔力!」
「でも僕達のツインユニゾンなら」
「余裕さ!」
ツインユニゾンそれが双子の能力だ、双子は再び魔力を合わせ同調させ合うと、アリシアのブラスターを斬り裂いた。
「へぇ、やるじゃない」
「確かに、アリシアのブラスターは簡単に防げるものではありません、凄いです」
アリシアとメアは軽くブラスターを防いで見せた二人を褒めた。
「お褒めに頂きありがとう!」
「次はこっちから行くよ!」
双子は剣を合わせ合う、すると魔力が溜まっていき光線が放たれた。
「メア、任せた」
「ええ!?」
アリシアはメアに光線の対処を任せると、後ろに下がる、メアは仕方無しにシールドで二人の光線を防ぎ、メアが防ぎ切った瞬間、アリシアが駆け出し、二人の少年に斬りかかる。
「くっ!」
「ッ!」
双子は二人でアリシアの斬撃を止める、それを見たアリシアは予想通りと、杖でラーギを殴り飛ばし、ラーサを蹴り飛ばし、双子を別方向に吹き飛ばす。
「あなた達の弱点はバラバラにされる事、でしょう、だからそうさせて貰ったわ」
「くっそ!」
「合流すれば良いだけさ!」
「させると思います?」
バラバラにされた双子は合流しようとするが、メアがラーサの前に立ちはだかり阻む、アリシアはメアの動きを横目で見てから、ラーギにダークチェーンを放った。
「くっ、解けない!」
「ふふっ、一人では何も出来ないあなたじゃ私の鎖は解けないわ、さようなら」
アリシアがラーギの体を剣で斬り裂く。
「ラーギ!、くっそぉ!どけぇ!」
「・・・申し訳ありませんが、テロ行為を行い罪のない人々を殺す、あなた達に容赦をするつもりは無いんです、だから退きません!」
ラーサは斬られた兄の元に駆け寄ろうとするが、メアは退かない、そして動揺しているラーサはミスを繰り返し、遂にメアの斬撃を足に喰らい倒れる。
「うっ!」
「終わりです」
メアが剣を振り下ろす、その瞬間にメアの前にピーナが現れ、メアの斬撃を受け止めると、メアを蹴り飛ばした。
「ピ、ピーナ・・・」
「今の内に逃げて」
「分かった・・・」
ラーサに逃げるよう伝えたピーナはアリシアに斬りかかる。
「やっと見つけたわよ!」
一度敗北した相手を見たアリシアはラーギを放置し、怒りのままにピーナに斬りかかる、その間にラーギとラーサは逃げた。
「私はアンタにもう会いたくなかったよ、あの時に死んだと思ったのに・・・」
「ハッ!、吸血鬼があの程度で死ぬものですか!」
ピーナと押し合うアリシアはさらに力を込める。
(何この力!?、あの時とは比べ物にならない!?)
ピーナはアリシアのパワーに驚く、それ程に二十の魔の遺跡を周り力を完全にしたアリシアのパワーは高いのだ。
「はぁぁ!」
「くぅぅ!?」
あっさりとアリシアに押し切られたピーナは尻餅を突く、紅く目を光らせながらピーナに接近したアリシアは彼女の顎を蹴り上げ宙に浮かせると、魔力の塊を打ち込む、魔力の塊を喰らい吹き飛んだピーナが壁に激突し、更に追撃をしたアリシアの蹴りが鳩尾に喰い込み、ピーナは口からダラダラと血を流した。
「あはっ!、弱いわねぇ!、私を倒した時の力はどうしたの!?」
「くっそぉぉぉ!」
アリシアに挑発されたピーナは力を振り絞り、アリシアの顔を殴った。
(嘘!?、効いてない!?)
その攻撃すらアリシアには通じず、殴ったのに痣すら出来ない、アリシアを超えた力を手に入れたと思っていたピーナは驚く。
「あなたは知らないでしょうけど、私は世界各地の遺跡を周り、更なる力を手に入れているの、だからあの頃の私と比べたら別次元の強さになっているわ、ふふっあなたじゃ私には二度と勝てない!」
驚いた表情のピーナの顔をアリシアは杖で殴る、するとピーナの顔に痣が出来た、続け様にアリシアはピーナの顔を蹴り飛ばし、もう一度ピーナの顔を杖で殴る、たった三回の攻撃でピーナの顔は酷い有様となった。
「く、くそ!」
それでも諦めないピーナはアリシアに向けて剣を振るうが、アリシアは余裕で避け、ピーナの剣を自身の剣で叩き折った、ピーナは折られた剣を見て遂に絶望してしまった。
「うわぁぁぁ!?」
絶望し怯えるピーナは逃げ始める、その姿にバトルシア人としての本能が刺激されたアリシアは、楽しそうに笑いながらピーナを追い、追い付くと肩を掴み引き止めた、そして・・・。
「苦しみながら死ね、ダークライジングブラスター!」
至近距離でダークライジングブラスターを放つ。
「あああああ!?」
全身をブラスターに焼かれるピーナは何とか転移魔法を発動させ逃げ出した。
「チッ、逃げられたか」
ピーナが逃げたのを感じ取ったアリシアは舌打ちをする。
「やりすぎですよ・・・」
今のアリシアなら負けないと戦闘を見守っていたメアは、やりすぎだとアリシアに言う。
「フン、アレは私を一度負かせた奴よ?、今のだけでも甘いくらいだわ、さっこのアジトを完璧に潰すわよ、メア」
「・・・はい」
アリシアとメアはノースフィアのアジトを壊滅させる為、仲間達を追ってアジトの奥に進んで行く。
ノースフィア本部
「ピーナ!」
ボロボロになったピーナに彼女に助けてもらったラーギとラーサが駆け寄ってくる、アリシアとメアに付けられた傷がない為、既に治療されているようだ。
「随分とやられたな、皇帝か?」
「ええ、凄く強くなってた・・・、お願いエルセーム、このままじゃビルルの仇を取れない、だから私をもっと強化して!」
「良いのか?、これ以上は寿命が縮むぞ?」
「構わない!」
「分かった・・・」
エルセームはしっかりと自分の目を見てくるピーナを見て、更に強化して欲しいと頼むピーナの頼みを受け入れた、双子はそれを聞き何かを言おうとしたがピーナに睨まれ、黙る。
(待ってなさいよ!皇帝!、更に強くなって絶対に殺してやる!)
エルセームに連れられ強化カプセル室に向かうピーナの瞳はアリシアへの憎しみに染まっていた。
オマリワ山脈のアジトのボスの部屋
「いくつかのアジトの場所を示した、情報はありますけど」
「本部の場所を示した情報はないですわね」
このアジトを壊滅させたアリシア達は、ボスの部屋に入り、情報を探っていたが、あったのは別のアジトの情報だけだった、本部の情報はない。
「別に構わないわ、本部の情報が見つかるまでこのまま敵のアジトを潰して回るだけですもの、さっアーシアに帰るわよ、大統領と作戦会議をしなくちゃね?、ねっ?、メア」
「はい、この数は私達だけでは手が足りませんから、ギグルス軍の力も必要です」
アリシア達はアジトから離れ、大統領と作戦会議をする為、首都アーシアに帰って行った。




