六話、アリシアの怒り
ナスゥリア国、ナーレルの町
「・・・」
虚ろな目をした複数の者達が店に入って行く、彼等は小さな箱を持っている。
「お客様・・・、お荷物のお持ち込みはご遠慮くださいませ・・・」
店員が店に入って来た男に退店を促したその瞬間、箱の中の爆弾が爆発する、その爆発は店内を破壊し、中にいた店員や客は跡形もなく消し飛んだ。
その後も次々と爆発が起こり、しまいには軍基地に内部でも洗脳されていた兵士が同様の手口で爆弾を爆発させ軍基地も機能を失った、その後に町に潜り込んでいたノースフィアの兵士達は町を制圧する為に動き始めた。
ノースフィアの兵士達がテロ行為を始めてから遅れて数分後この町に到着したアリシア達は、戦闘を開始する。
「・・・」
戦闘を始めると早速、異様に身体能力の高い虚ろな目の男達がニアに飛びかかって来た、バトルシア人の洗脳兵士だ。
「私達バトルシアを兵器としか思ってない屑共め!」
メアは洗脳され利用されている彼等を見て怒りを見せつつ、同族殺しを行う、この状況で彼等を生かしながら戦えばやられるのはこちらだ、だからこそニアは生き残る為に仕方なく殺す。
「本当、この世界は間違っているわ」
利用されている同族を見て冷たい目を見せるアリシアは迫り来る同族を斬り伏せる、キースもエリシアもその表情は怒りの表情そのものだ。
「・・・」
メアはアリシア達の表情を見て何も言えなくなる、その理由は操られている同族を討つ彼等の辛さを想像してしまったからだ。
「放て!」
理性のある目をした隊の隊長らしき男が、砲台に繋がれたバトルシア人達に砲撃するよう命令をした、バトルシア人達は言われるがままに砲撃を放つ。
「ハァァ!」
闇の魔力を放出するアリシアはその砲撃を軽く斬り飛ばし防いだ、続けて手からブラスターをはなち隊長らしき男諸共、消し炭にした。
「まだまだ来ます!」
「任せて下さい!」
砲台がアリシア達を討つ為に次々と集結してくる、それを見たウォーリーが大量の水を発動させ、水の勢いで集まって来た砲台を転がした。
「消し飛べや!」
キースが炎を放ち、転がった砲台を焼き、バトルシア人達も焼き殺した。
「くっそ!、こんな事やらせやがって!許さねぇぞ!」
同族を殺したキースは怒りの声を上げる、アリシアもその怒りに同調し、この場にいる四人の帝国のバトルシア人達は圧倒的な強さでノースフィアを殲滅して行った。
「ヒッヒィィ!」
最後に残った立派な紋章を胸元に付けた今回の作戦を指揮していた男にアリシアが詰め寄って行く、男は怯えながら後退りし逃げようとするが、アリシアはガンブレードから弾を放って足を撃ち抜き、動けなくした。
「一つ聞かせてくれない?、あんた達とギグルスにどんな関係がある?、話してくれたら殺しはしないわ」
「は、話すものか!」
「・・・」
ギグルスとノースフィアの関係を聞かれた男は話すのを拒否する、それを聞いたアリシアは男の首を斬り飛ばし殺した。
(冷たすぎる・・・)
メアは男を殺したアリシアの冷たい瞳を見て身が凍り付くのを感じた、底知れぬアリシアの世界への怒りの感情をその瞳から感じたのだ。
「アリ・・・」
アリシアの瞳を見て何か言わないといけないさあ思ったメアは彼女に話しかけようとするが、その前にアリシアの端末にキンシオからの連絡が入り、アリシアは電話に出た。
「そう、分かったわ」
短い会話の後連絡を切ったアリシアはメアを見る。
「この国に奴等のアジトの一つがある、着いて来なさい、メア、私のこの世界への怒りの片鱗を見せてあげるわ」
ドロリと濁った瞳のままのアリシアはメアに着いて来いと言う、アリシアの冷たい目を見たメアはただただ頷く事しか出来なかった。
「良い子ね?メア、行くわよ」
メアが頷いたのを見たアリシアは闇のオーラを周囲に撒き散らしながら歩き始める、ノースフィアのアジトに向けて。
ナスゥリア国のノースフィアのアジト
敵など来るわけがないと油断し切っているノースフィアのアジトのボスはのんびりとコーヒーを飲んだいた、しかし彼の余裕は突然発生した振動に崩れる事となる。
「な、何だ!?」
アジトのボスは近くの構成員に何事か聞く。
「て、帝国の皇帝です!、帝国の皇帝が攻撃を仕掛けて来ました!」
「皇帝だと!?、何故この場所が!?」
アジトのボスが混乱している間に振動が更に激しくなる、何が起こっているのか確認する為に外に出たアジトのボスが部屋の外に出た瞬間、地下にある広大なこの施設の天井が吹き飛んだ、そして七体の巨大な魔物がアジト内に舞い降りて来て、破壊活動を始める。
「に、逃げろ!、あんな巨大な魔物が七体もいる!、勝てるわけがない!」
アジトのボスは部下達に逃げるよう命じるが、それは叶わない命令だ、何故なら構成員や兵士達は動く暇もなく、魔の者達の攻撃に焼かれて行くのだから。
アジトのボスが自身の部屋の前で呆然と自身が任されたアジトが蹂躙されているのを見つめ続けてていると、突然静かになる、魔の者達が全ての構成員と兵士を狩り尽くしたのだ。
バハムートの肩に仲間達と共に乗り、魔の者達がアジトを蹂躙する様子を見せ付けられ俯くメアを、横目で見てからアリシアはアジトのボスの前に舞い降りた。
「私が何故、あなたの顔を知ってるのか、聞きたい?」
アリシアはアジトのボスに生き残らせた理由を聞く、アジトのボスは従った方が良いだろうと判断し頷く。
「あなた賢いわね、これが理由よ」
そう言ってアリシアは端末の画面をアジトのボスに見せる、そこにはアジトのボスの顔写真が表示されていた。
「帝国の皇帝である私があなたを、この写真をこの子達に見せて、わざわざ生き残らせるよう命令してあげたのよ?、感謝してくれるわよね?」
「は、はい、ありがとうございます」
アジトのボスはアリシアに礼を言いながら頭を下げる。
「足りないわね、皇帝陛下は?」
「!、ありがとうございます皇帝陛下!」
「ふふ、そうよ、それで良いの」
アリシアの冷たい声を聞き慌てて言い直しもう一度頭を下げた男を見て、彼をあざ笑うアリシアは、男を蹴り飛ばし、顔を踏み付ける。
「ねぇ、私、知りたい事があるの、あなた達ノースフィアと、ギグルスにどんな関係があるのかしら?」
「そ、それは我がノースフィアの一番の機密です!、話せません!」
アリシアは早速、ギグルスとノースフィアの関係を男に尋ねるが男は言わない。
「お前に拒否権があると思うの?」
怒るアリシアは何度も男の顔を踏み付ける、あっという間に男の顔は血だらけとなって行った。
「さて、もう一度聞くわ、お前達の組織とギグルスの関係を話せ」
「ぎ、ギグルスのふ、副大統領です、彼の元に行けば分かります」
「ふぅん、副大統領か、分かったわ、話してくれてありがとう」
アリシアは情報を話してくれた彼に優しく笑いかけると、顔を踏みつけていた足を外し、立たせてやる。
「み、見逃してくれるのですか?」
「ええ、だから早く行きなさい?」
「ありがとうございます!」
「・・・」
この時男は一つのミスをした、それに気付いたメアはバハムートの肩から飛び降り、アリシアの元に駆ける。
「さっきも言ったわよね?、皇帝陛下って言葉が足りないって」
しかしメアがアリシアの元にたどり着く前に、アリシアは手を振るう、すると七体の魔の者達が同時に光線を放ち、男は跡形もなく消し飛んだ。
「さぁ?、次はギグルスの副大統領の元に行きましょうか、着いて来るのは、メア、あなただけよ、他の者達はバハムート達に乗って帝国に帰りなさい」
そう言ってアリシアは後ろに近付いていたメアの手を掴むと転移して行った、残されたニア達はアリシアに言われた通り魔の者達に乗って帝国に戻る。




