十五話、闇の遺跡5
オルオルの平原の闇の遺跡
アイリーンを連れたアリシアが闇の遺跡の通路を歩いている。
「・・・」
アイリーンは隣を歩くアリシアをチラチラと見ているが、アリシアは素知らぬ振りだ。
(ニア様と言う眷属が増えたからか最近イジワルです)
二人きりになったのに構ってくれないので、ムムムとアリシアの顔を見つめるアイリーン、その視線に耐えきれなくなったアリシアは吹き出した。
「笑わないで下さい!、最近ニアばかりに構って、私に構ってくれない事、怒ってるのですよ!?」
アリシアに笑われたアイリーンはプリプリと怒る。
「ふぅん、ならアイリーンは私に何を望むのかしら?」
「血が飲みたいです!」
「ふふ、良いわよ?」
そう言って首筋をアイリーンに見せるアリシア、それを見たアイリーンはパァァと顔を輝かせアリシアに近付くが・・・?。
「ヒャッ!?」
アリシアはアイリーンの手を掴むとそのまま押し倒した。
「それじゃあなたの血を頂くわね」
「ちょっまっ・・・、んん!」
血を頂くと言うアリシアの言葉を聞いて、アイリーンが抗議をしようとしたが、その前にアリシアがアイリーンの首筋に噛み付き、血を吸い始める。
「んっ、後で、んん!、私も血を吸いますからね!」
「わふぁってふ」
血を吸いながら喋った為、アリシアの息がアイリーンの首筋を擽りアイリーンはブルルと身震いする。
「ふぅー、やっぱりあなたの血が一番ね」
「・・・」
母に自分の血が一番、そう言われてアイリーンは喜び嬉しそうに微笑む、そして物欲しげな瞳でアリシアの顔を見つめる。
「良いわよ、おいで」
「はい!」
アイリーンは踊るようにアリシアに抱き着くと、その血を吸い始めた。
遺跡の入り口
「これは!、アリシアの血の匂い!」
遺跡の中から漂ってくるアリシアの血の匂いに敏感に反応した、アリシアに今回は外で待ってなさいと言われたニアは、自分も母の血を貰う為に遺跡の中に入ろうとしたが、エリシアに止められた。
「やめておけ、待っていろと言われただろう」
「むー」
エリシアに止められたニアはなら血を寄越せとエリシアを見る。
「ほら」
「ありがと」
エリシアは首筋を露わにした、それを見たニアはエリシアの首筋に噛み付き、姉妹である為か、アリシアと近い味をした血を吸い始める。
オルオルの平原の闇の遺跡
アリシアの血を飲めてウキウキなアイリーンは、ご機嫌な様子でアリシアの腕に抱き着き鼻歌を歌っている。
「さぁ開けるわ」
扉の元に辿り着いたアリシアは扉に触れて魔力を扉に吸わせた、すると扉が開き、これまでと同じ円型の広場が見える。
「・・・」
部屋の中に居たのは闇の魔力を放つゴーレムだった、侵入者を感知し起動した彼は、早速光線を放ってきた。
「ゼロシールド!」
今回、アイリーンを連れて来たのはゼロの魔力を使っての戦闘の練習をさせる為でもある、アリシアがそれを聞いているアイリーンはゼロの魔力のシールドで、光線を止めた。
「ピピピ!」
攻撃が防がれたのを見たゴーレムは腕をアリシアとアイリーンに向けて飛ばして来た。
「ダークライジングソード」
闇の遺跡を周り力を増しているアリシアは闇と雷の斬撃で容易く腕を斬り裂いた、斬り裂かれた腕は二人の背後で爆発する。
「ゼロバスター!」
アイリーンは剥き出しとなった腕の接続部を狙い、ゼロバスターを撃つ、しかしゴーレムはシールドを張って防ぎ、背中のハッチを開けるとそこからレーザーを放って来た。
「レーザーか、でも・・・」
アリシアは横目でアイリーンを見る、母の視線を受けて頷いたアイリーンは、ゴーレムを同じく手から無数のレーザーを放ち、迫るレーザーとぶつけ合わせ全て消滅させた。
「アイリーンがいる限り、近接戦を仕掛けないとお前は私達に勝てないわ」
「ピピピ!」
アリシアの言葉を聞いてか、状況を見てかは分からないがゴーレムが走り出し、二人に迫って来る。
「そして接近すれば私がいる、だからね?、お前の勝ちはないの、お分かり?」
迫るゴーレムを見て薄く微笑むアリシアは剣に闇を纏わせ長い刀身を作り上げると振り下ろした。
「ピッ・・・ピピ・・・」
その攻撃により真っ二つに斬り裂かれたゴーレムは爆発し消滅した、この瞬間、アリシアの右手のマーク内の数字が4から5となった。
「あはっ、お母様のお力がまた強くなりましたわ」
「ふふ、そうね」
アリシアの力が強くなったのを感じたアイリーンは嬉しそうに抱き着く、アイリーンを優しく抱きしめるアリシアは、更に強くなった自身の力を感じ満足気に微笑んだ。
遺跡の入り口
アリシアとアイリーンが遺跡の入り口に戻って来ると、ニアは不満そうな顔をしてアリシアに近付いてきた。
「お姉ちゃんに血をあげたんでしょ?、なら私にも頂戴」
ニアはアリシアの血をご所望のようだ。
「駄目ですわ、ニア様は最近何度もお母様の血を吸っています、第七真祖そして皇帝の娘として我慢を覚えるのも必要ですわ」
しかしアイリーンがアリシアの前に出てそれを阻止する。
「お姉ちゃんは関係ないでしょ!、アリシアに聞いてるんだもん!、ねぇ?アリシア?」
「ふふ良いわよニア、来なさい」
「やった!」
アリシアに血を吸う事を許可されたニアは嬉しそうにアリシアに駆け寄って行く、しかしニアは気付いていなかった、アイリーンがニヤリと微笑んでいたのを、アリシアに近付いたニアはアリシアに押し倒され地面に押さえ付けられる。
「あ、あれ?」
押し倒された意味が分からないニアは首を傾げる。
「私、確かに良いわよって言ったわ、でもよーく意味を考えなかったのは失敗ね?、ニア、今のは私に血を捧げても良いわよ?って意味よ、ねぇ?アイリーン?」
「ふふ、はいその通りです、お母様」
ニアが自分の血を欲しがるだろうと予想していたアリシアはアイリーンと打ち合わせをし、このイタズラを仕掛け成功させたのだ。
「ひどーい!」
アイリーンとアリシアに嵌められたニアが、涙目で文句を言うがアリシアは無視し、ニアの血を美味しく頂き始めた。
結局血を貰えず拗ねるニア、アリシアはそれを見てクスクスと笑いながら、飛空艇に戻って行く。




