十三話
ヤグラム王国、オルオルの平原
「強そうな魔物だらけだな」
瘴気漂うオルオルの平原には強そうな魔物が闊歩している、それを見たエリシアは腕試しをしたいようで、アリシアに良いか?良いか?と視線を送って来ている。
「勝手にしなさい」
「よーし!」
アリシアに許可を貰ったエリシアは魔物達の中に飛び込んで行き喧嘩を売ると戦いを始めた、圧倒的に数で勝る魔物達は、素早いエリシアを追い切れておらず、次々と倒されて行く。
「どっちが魔物なのかしらね」
「エリシアじゃない?」
「ですよね」
「お前らなぁ・・・」
エリシアを魔物だと言う女性陣の意見を聞き、キースはエリシアが戦う様子を見る、血塗れになりながらバトルシア人としての本能を存分に満たし笑顔で戦う彼女を。
「すまん、ありゃ魔物だ」
「誰が魔物だぁ!、後で覚えておけよぉ!」
「なんで俺の声だけ聞こえるの・・・」
「普段、私達をエッチな目で見てるのが悪いんじゃない?」
「私もそう思う」
「ですよね」
「・・・」
女性陣の意見を聞きキースは思う、ここにいる女性陣達が皆美少女なのが悪いのだと、それに加えて皆巨乳と来た、見ない筈がないとキースは思う。
「反省してないみたいよこいつ、どうしてやりましょうか?」
「喉乾いてるのよねぇ、私」
「私も喉乾いてます」
「あら?、私もよ?」
そう言って顔を見合わせる三人の美少女、猛烈に嫌な予感がしたキースは方向転換をし逃げ出そうとするが、その前にアリシアのダークチェーンに捕まった。
「お、お手柔らかに?」
「大丈夫よ、多分」
「死なない程度に吸うから、多分」
「安心してください、えっと、多分?」
最後のアイリーンはアリシアとニアのノリがイマイチ分からなかったので首を傾げながら言った。
「いーやぁぁぁ!」
キースの悲鳴が響く。
「さーて、キース!誰が魔物だ!ってどうした・・・?」
魔物を狩り尽くしたエリシアがキースの元にやって来る、すると彼は立ち枯れた木のようになっていた為、どうしたのか聞く。
「ひっ!」
エリシアの顔を見たキースは慌てて逃げ出した。
「ちょっとやりすぎてね、吸血鬼がトラウマになったみたい」
「何をしてるんだ・・・」
「だってあいつ、私達をエッチな目で見てくるじゃない、そのお仕置き」
「あぁ、そう言う事か、なら仕方ない、寧ろ私も血を貰おうか?」
そう言ってニヤリとキースを見るエリシア、その顔を見たキースは猛烈な勢いで闇の遺跡がある方向に逃げ出して行った。
「これで十分に反省しただろう」
「・・・そうかしら、そう言えばお姉ちゃん、私のパンツ何枚か無くなってるのだけれど、古くなってるから捨てたの?」
「えっ?、あ、あぁそうだ!、ボロボロだったからな!」
突然のアリシアの質問にエリシアは咄嗟にキースを庇う、これ以上は流石に可哀想だと思ったからだ。
「ふぅん、やっぱりあいつが盗んでたんだ」
(しまった・・・、さてどうしたものか・・・)
「な、なぁ?アリシア?、パンツくらい許してやれ、私達が美人すぎるのが悪いんだ、だから奴も欲望を抑え切れないんだよ」
「あら以外、あいつを庇うのね?、好きなの?」
「そんな訳ないだろう」
即答である。
「ただやりすぎは良くないと言う話だ、今日はもう許してやれ?、なっ?」
「仕方ないわねぇ、今日の所は許すわ、でも次はないわよ、ってあいつに言っておきなさい」
「あぁ」
(女皇帝のパンツを盗んでこれで済んだ事が奇跡だぞキース・・・、下手をすれば打ち首だ・・・)
この後、アリシアのパンツや下着が盗まれる事はなくなったようだ、同時に城のメイド達の下着が盗まれる被害も、少し、だけ減った。
アリシア達が殺風景な平原を歩いていると、血を大量に吸われた状態で走ったせいで力尽きたらしい、キースが倒れている。
「お姉ちゃん、こいつ馬鹿すぎて、まだパンツの事怒ってたんだけど許しちゃったわ」
「ははは・・・、ほら起きろキース」
「え、エリシア・・・」
「全く・・・」
キースを助け起こしたエリシアはアイリーンを呼び治療の魔法をかけてやるように言った、アイリーンは仕方なさそうにキースに治療魔法を掛ける。
(さっきはあんなに即答した癖にお姉ちゃんったら、ふふ)
エリシアの様子を見て何か察したらしいアリシアはニアを見る、するとニアはウィンクして来た、それを見てエリシアの何かを完全に理解したアリシアは、姉の邪魔をしない事にする。
「この馬鹿者め、こんな状況で走るから倒れるんだぞ?」
「すまん・・・」
「それに、女性をいやらしい目で見るのもやめておけ、だからこうして強烈な仕返しに合うんだ、まぁやりすぎたアリシア達も悪いんだが」
そう言ってエリシアは妹とニアを見るが、二人はそっぽを向き知らん顔した、やはり似た者同士な二人である。
「ごめん、エリシア、言っていい?」
「なんだ?」
「お前らが美人で巨乳でスタイル良いのが悪いんだよ、そりゃ見るって」
血が少なくなりすぎている影響で正常な判断が出来ていないキースはついつい本音を暴露した。
「はぁー、馬鹿者め・・・」
しかし、それを聞いてもエリシアは大きなため息を吐いたが怒らなかった、二人の会話を聞いていたアイリーンはエリシアの顔を意外そうな表情で見つめる、普段なら怒ったはずだからだ。
「・・・、なんだアイリーン、その意外そうな顔は?」
「今ので怒らないんだなって思いまして」
「仕方ないだろ?、この馬鹿者は血を吸われすぎてまともではない、ならある程度は許すさ」
「・・・」
ある程度は許す、そう聞いたキースは、エリシアの胸を鷲掴みにし揉み始めた、ある程度とエリシアは言っているのに限界突破するそれがキースと言う男である。
「ッー!、くっ!、ううっ!、この馬鹿者め・・・」
「!?」
これでもエリシアはキースを許した、それを見たアイリーンがまたもや驚く。
「見てアリシア、あの雲ハートマーク」
「あら、素敵ね」
岩の上に腰掛けるアリシアとニアは仲良く様々な形の雲を眺めていた。
「いつまで揉んでいる!、この馬鹿者め!」
「グホォ!?」
結局キレた。
ノースフィア、アジト
「ピーナ、怪我はどうだ?」
「エルセーム・・・、うん、もう大丈夫」
「良い薬になっただろう?、殺されなかっただけでもマシだと思え」
金髪の青年エルセームはピーナの肩を叩く、しかしピーナは納得がいっていないらしく、不満そうな顔をしている。
「なんだその顔は?」
「なんでもない」
「・・・、とにかく皇帝にはもう手を出すな、良いな?」
「はいはい」
エルセームの忠告を聞き手をヒラヒラと振るピーナ、彼がドアを閉めた後、暫くしてから扉に向けて枕を放り投げた。
「ほんとうっざい!、あれだけやられてやり返さないわけないじゃん!、みんな!行くよ!」
ピーナは大量のぬいぐるみを引き連れて部屋から出る、そしてワイバーンを使いアリシアの元に向かって行った。
「ピーナ?、体はどうだい・・・、!?」
数分後、ビルルがやって来る、しかし部屋の中にピーナはいない、それを見た彼は慌ててエルセームの元に走って行った。




