十二話
オルビアの町エンジェルズ
「メアちゃん、あの子と戦ってどうだった?」
飛空艇ごと転移しオルビアの町に戻ったメアに灯理がアリシアと戦ってどうだったか聞いた。
「強かったです、以前とは比べ物にならないくらいに・・・」
アリシアは明確に劣ると感じていたがメアもアリシアを以前とは比べ物にならない位に強くなったと思っていた、メアはアリシアに対して完全に剣の技量や体を自在に動かす技術で負けており、いくら魔力量が多くパワーなどで上回っていても、アリシアが少し魔力量を増し力を増しただけで、ひっくり返される差でしかなかったと言うわけだ。
「そっか、ねっメアちゃん、アリシアはこれからもっと強くなるよ、ならあなたはどうする?」
灯理はもっと強くなるアリシアに対してどうするのかメアに聞いた。
「私ももっと強くなります、剣の技量を上げて、アリシアに負けないくらいに!」
「ふふ、大正解、お母さんは忙しいから、私達が鍛えてあげよう!、ねっ!フィアちゃん!」
メアを鍛えるつもりの灯理はメアに向けてガッツポーズしてから、親友の顔を見る。
「えっ?」
すると親友は首を傾げていた。
「えっ?」
灯理もそれを見て首を傾げる。
「だって私達が師匠から任された仕事ってもう一人のアリシアさんの警護じゃないですか、なら二人共メアちゃんのトレーニング相手になってどうするんです?、誰がもう一人のアリシアさんを守るんですか?」
「だ、大丈夫だよ、地球なら・・・」
「ダメです!、私がメアちゃんのトレーニング相手をしますから、灯ちゃんはもう一人のアリシアさんの警護をして下さい!」
灯理はリーフィアの話を聞いて頷きかけたが一つおかしい事があるのに気付き、親友に質問する。
「ねっ、フィアちゃん、それって逆でも問題ないんじゃ?」
「うっ・・・、そこに気付くとはさすが馬鹿だけど偶に頭が回る灯ちゃんですね・・・」
「ほらー!やっぱり!、私これだけは引かないからね!、って誰が馬鹿だぁ!」
「私だって引きません!、それと灯ちゃんは馬鹿です」
「なーにぃ!」
ギャーギャー!とどっちがメアのトレーニング相手になるかの言い合いを始める灯理とリーフィア、メアはそんな正に誰が見ても親友と言い切れる二人の様子を見て、自分とアリシアもあんな風な関係に戻れるのだろうか?と思う。
「メア、あなたが何を考えてるか分かります、きっと彼女達のように、あなたとアリシアさんも戻れます、あなたが彼女を諦めない限りは」
「ウォーリーさん・・・、ありがとう」
ウォーリーの言葉を聞いたメアは頷く。
「はぁはぁ・・・、メアちゃん!決まったよ!、交代であなたの所に来るから!」
「はい!、だから頑張って強くなりましょう!」
肩で息を切らす二人は交代でメアのトレーニング相手をすると言う妥協案で納得したらしい、仲良く肩を組んで案をメアに伝えて来た、仲直りもしている所が流石は親友である。
「はい!、先輩!」
メアは愛理の弟子としては先輩である二人を先輩と呼ぶ、すると先輩か・・・良いなと九尾と天使は仲良く頷き合っている、そんな仲の良い二人を見たメアは改めて、二人のような関係に自分とアリシアもなってみせると誓うのだった。
皇帝の飛空艇、寝室
(また殺せなかった・・・)
寝室のベッドの上に寝転ぶアリシアはメアを殺せなかった理由を自問自答していた。
(まだ力が足りない?、いいえ、今回は勝った)
邪魔はされたが今回の勝利は間違いない、それもライアーンとスーレウムという切り札を使わずに勝った、完璧な勝利だ。
(なら邪魔をされたから?、いいえ、あの女二人が現れたとは言え、ライアーンとスーレウムを使えば全員、十分に殺し切れた、あれはただの私の判断ミス)
アリシアには分かった、灯理とリーフィアより自分の方が強いと、あの程度ならば二体の魔の者を使えば勝てた、撤退を選んでしまった自分のただの判断ミスである。
(そもそも、今までも十分に殺せる隙はあった、それなのに殺せていないのは・・・、私はまだあいつの友達でありたいと心のどこかでは思っている?、だからメアを殺そうとすると踏み止まってしまっている?、・・・)
この考えに至ったアリシアは俯く、そして探す、自分の中にメアとまだ友達で居たいと言う想いがあるのか?と、その結果、思い浮かんだのはメアが自分を兵器として見ていないのだとアリシアが思った、ホテルでのメアとの会話だった。
(ふふふ、あり得ないわ、何を考えているのかしらね?私は)
自分の考えをせせら笑うアリシアは、立ち上がり窓に近付き外を見る、すると紅い目をした自分が窓に映り込んだ。
「私は帝国の皇帝、こんなつまらない事を考える必要はない、邪魔をする者がいるなら排除する、ただそれだけよ」
窓に映り込む邪悪に笑う自分の顔を見たアリシアは窓から視線を逸らすとベッドに入り、夢の世界に旅立って行った。
メアを殺したいと思うアリシアと、アリシアともう一度友達になりたいと願うメア、二人の心は未だにすれ違ったままだった。
操縦室
紅いドレスを着たアリシアがモニターを見ている、モニターには残り四つの遺跡の場所が映し出されている。
「近くからだろ?、言わなくても分かってんよ」
「よく分かってるじゃない、ならお願いね」
言わなくても分かっているキースを褒めたアリシアは椅子の肘掛けを使い頬杖を着く、そして考えを巡らせる。
「ニア」
「なぁに?」
「この飛空艇のレーダーに奴等の飛空艇を常に監視させなさい」
「了解!」
ニアは早速、レーダー席に座り、メア達のメサイヤを監視するよう設定をした。
「終わったよー、でもなんで?」
「奴等は飛空艇を持っている、ならば邪魔者の動きを把握しておくのは必要な事よ」
「あぁ、そー言う事」
アリシアの言葉を聞いたニアは納得して頷く。
「さぁ、次の遺跡にはどんな魔の者がいるのかしら?、楽しみね」
アリシア達を乗せる飛空艇は次の目的地、ヤグラム王国に向かって行く。




