九話、闇の遺跡3
ミナック川近くの闇の遺跡
瘴気漂う闇の遺跡の階段をアリシア達は降りていた、一番下にまで来ると、扉があるアリシアはいつも通りに触れて扉を開ける、するといきなりレーザーが中から飛んできた。
「いきなり攻撃だなんて無粋ね」
ビルルとピーナに逃げられ機嫌の悪いアリシアはいきなり攻撃をして来た魔の者の攻撃を剣で斬り飛ばしながら無粋と言い、扉の奥を睨み付ける。
「お前なんていらないわ、力だけ貰う、二人共、手伝いなさい!」
そう言って階段を蹴り大きく前に向けて飛ぶと部屋の中に入って行くアリシア、キースとエリシアも二人を追って部屋の中に入った。
「甲冑を纏った巨大なオークか」
「・・・、目がイってんな、瘴気を吸いすぎたんだろう」
「ガァァ!」
巨大オークは瘴気を撒き散らしながらアリシア達に迫って来る、キースが炎を放ちその身を焼くがそれでも彼は止まらず、エリシアが足を蹴り飛ばしバランスを崩させた事で、顔からその場に倒れ、ようやく止まった。
「喰らえ、ダークライジングランス」
アリシアが倒れた彼に闇の槍を叩き込む、その槍は次々とオークに突き刺さって行く。
「流石うちの皇帝だぜ・・・、って、傷が治ってやがんぞ!」
「再生能力か、厄介だな!、しかし水属性には治癒を邪魔する能力もある!」
エリシアはそう言うと青黒い魔力を刀身に纏わせ、オークに迫る、完全に傷が治っているオークはエリシアに剣を振り下ろすがアリシアが弾いた。
「お姉ちゃん!」
「あぁ!」
エリシアはダガーをオークに突き刺す、そして傷の治癒の邪魔が出来ているか確認する為にもう一本のダガーで皮膚を斬り裂いた。
「治らねぇな、流石だぜ!エリシア!」
オークは傷付いた部分の治療をしようとするが、治らず首を傾げている、それを見たキースはエリシアを褒めつつ、傷口に炎を放ち焼いた。
「アツイ!アツイ!」
傷を焼かれ激しい痛みを感じたオークはキースを睨み巨大な闇の刃をキースに向けて放つ。
「ゲッ!、これはマズイ!」
「スーレウム」
アリシアはキースを守る為スーレウムを召喚する、召喚されたスーレウムは闇の刃からキースを守った。
「す、すまん」
「お礼なんていらない、それよりも二人の体の事もあるわ、あなたと私、三つのスタイルの力を合わせ、一気に仕留めるわよ、お姉ちゃんとスーレウムは魔力を練る間の時間稼ぎをお願い」
「任せよ」
「望むところだ!」
エリシアはスーレウムに飛び乗ると水の魔法を放ちながら移動し始めた、速く動くスーレウムの上に乗り四方八方から水をぶつけまくっているお陰でオークは身動きを取れていない。
「杖を持ちなさいキース、ダークライジングマグナムにあなたの炎で爆発性を加えた技を撃つわ」
「オーライ、俺の魔力好きに使え!」
「ええ、全部使ってあげる」
「それはやめて・・・、魔力欠乏症になっちゃう・・・」
「嘘よ」
「・・・」
キースは隣に立つ美少女をシラーと見つつ魔力を解放する、アリシアはその魔力を使いダークライジングマグナムに爆発性を加えてみせた。
「スーレウム!、退きなさい!」
「うむ!、正気を失った我が同胞を解放してやってくれ!」
「ええ!、行くわよ!ダークライジングマグナムバースト!」
オークの足元に魔法陣が現れ赤黒い弾丸がオークの体の中に撃ち込まれる、普段はそのまま貫通する弾丸はオークの中で爆発した、それにより下半身を失ったオークは地面に落ちる。
「お、おお・・・、ゾフィディアの子孫か?」
「そうよ」
「あ、ありがとう俺を狂気から解放してくれて・・・」
オークは瘴気に呑まれ狂気に堕ちた自身を解放してくれたアリシアに礼を言った。
「俺はお前とは行けん、しかし俺の力はお前と共にある、このオーレオンの力はな・・・」
そう言ってオーレオンはアリシアに手を差し向ける、アリシアは右手の紋章を出現させながら、送られてくる力を吸収した。
「ありがとうオーレオン、お前のお陰で私はまた強くなれた、この力、思う存分に使ってあげるから感謝しなさい」
アリシアは目を開けたまま絶命しているオーレオンの目を閉じてあげ、龍脈を解放すると、この場を後にした。
遺跡の入り口
「お帰りなさいませ、お母様」
「ただいま」
入り口に戻るとアイリーンが出迎えてくれた、アリシアは肩を叩くと、影の中からエリシアとキースを出す、二人共限界なのか青い顔だ。
「治療してあげて」
「はい」
アイリーンが無茶をした二人の治療を始めた、すると二人の顔色はすぐに良くなり全快した。
「ありがとなアイリーン」
「いえ」
「それで?アリシア、早速、ギグルスに行くの?」
「ええ、行きましょうかギグルスに」
アリシアは側近達と共にギグルスに向かう、未来のアリシアと会話をした日以降、一度も帰っていない故郷に。
ギグルス国、大統領の部屋
「・・・」
大統領は悔やんでいたレイティスの名を持つ少女がいると知り、兵器として利用出来るだろうと考えた結果、最大の敵を生み出す事になってしまった事を。
「何かお悩みかしら?」
その時だ背後から少女の声がした、大統領が振り返るとそこにはドレスを着た一人の美しき少女がいた。
「アリシア・レイティスか・・・」
「そうよ、初めまして」
大統領に名を呼ばれたアリシアはドレスの裾を掴み会釈した。
「何か用かな?」
大統領は机の下の銃に手を這わせながらアリシアに何か用か聞く。
「一つ聞きたいの、なんで私を兵器として利用しようとしていた癖に、この首都で私を育てなかったのかを、ね?」
大統領の手の動きを把握していたアリシアの手には銃が握られていた、アリシアは大統領にその銃を向けた。
「エンジェルズは当時としても最強の組織、あそこにいれば君は安全だ、そして兵器とするならば、愛情を受けて育てるべきではないのだよ、だから君を安全なあの町の孤児院に預けた」
「・・・」
「私が憎いかね?」
「当たり前でしょ!、お父さんとお母さんを帝国へのスパイ任務をエンジェルズに任せたのはあなただって私知ってるのよ!?、あの任務させなければ私・・・、私は!」
「親の愛情に恵まれる事が出来た?」
「そうよ!」
自身を睨み付ける少女を見て大統領は薄く笑う。
「いいや君はどうあろうと兵器になっていたよ、親元にいたとしても君には闇のスタイルの力、そして初代皇帝の子孫としての血が君にはあった、この時点で君は戦いから逃れる事は出来ん、君は産まれた時から、兵器、なのだよ」
「だからこそ完璧な兵器とる君をする為にもうすぐ迎えに行くつもりだったのに君は帝国に行ってしまった、実に残念だ、心の無い兵器として君には帝国を破壊尽くして貰う予定だったのに」
アリシアは大統領の話を聞いて思うこの男も自身の傀儡にした教皇と同じだと、バトルシア人を兵器としてしか見ていないのだと。
「残念だったわね?、その帝国を破壊し尽くす兵器になるはずだった私は、帝国の皇帝になったわ、アンタ達みたいなゴミを全部叩き潰し奴隷とする存在にね!」
「我々はただが小娘である君の奴隷になどなったりせんよ」
「ふふ、そんな事言っていられるのは今のうちだけ、早々に今の言葉を言った事、私を兵器にしようとした事、後悔させてやる!」
赤い瞳で大統領を睨み付けたアリシアは手に持つ銃を床に叩きつけるとどこかに転移して行った、それを見た大統領は力なく椅子に座り込む。
「全ては私のミスから始まっている、ならばもしその時が来れば・・・」
今の会話で敢えてアリシアを挑発していた大統領は、最後の言葉を言う前に口を閉じ天井を仰ぎ見る、その顔は誰が見ても疲れ果てたものであった。




