第二部、五章、皇帝と闇の遺跡編プロローグ
アトリーヌ城、皇帝の部屋
皇帝の部屋でもいつもアルムスに任せていた執務をしているアリシア、アルムスからの教育を受けており、頭脳面でも強化されている少女は難なく執務をこなしていた。
「手伝いましょうか?、お母様?」
「いいわ、それよりもあなたはゼロの魔力をうまく使えるようになりなさい、メアには劣るとはいえ、あなたもゼロの魔力の使い手、少なくとも今の私よりは強くなれる筈だわ」
「分かりました」
アイリーンはそう言うと一時中断した瞑想を再開し、己の魔力を高める作業を再開した、暫くその様子を見つめていたアリシアは、視線を逸らすと執務を再開する。
「アリシアよ、グルムデン王国の王がここに訪れるようだ、予定に入れておいてくれ」
暫く文字を書く音が部屋に響き続けていたが、アルムスが部屋に入って来て、グルムデンの王が帝国に訪れる事を伝えて来た。
「ふふ、また一つ、私の国に屈する国が出来たってことかしら?」
執務を中断し、未来の夫の顔を見たアリシアは満足気に微笑む。
「そうなるだろうさ」
「ふふ、その国も全てが帝国の戦力となる、ならば寛大に出迎えないとねぇ?、アルムス、用意しておきなさい」
「承知した」
「それと闇の遺跡は?」
「四つ見つかった、向かうか?」
「いいえ、私には執務があるもの、もっと見つかってからにするわ、そうね取り敢えず七つ見つかったら教えて」
「承知した」
アルムスはアリシアの言葉に頷くと、執務机に近付いて行く、それを見たアリシアは立ち上がり目を閉じる、アルムスはそっと少女を抱きしめるとキスをした。
「それと、一つ不穏な噂がある、聖教が邪教と変わった事により好機と判断した、無宗教推進組織が各地でテロを画策しているようだ」
「へぇ、生意気ね?、我が帝国を信仰する邪教を受け入れないなんて、闇の遺跡を探すのと並行して、そいつらの情報も集めておきなさい、尻尾を出せばすぐに叩くわ」
「承知した」
「・・・、承知した承知したって他に言う事はないのかしら?、全く・・・」
「お前は美しい」
「なっ!?」
いきなり美しいと言われたアリシアは顔を真っ赤にして俯く、暫くしてから顔を上げるとアルムスは照れる自分をニヤニヤと見つめていた。
「もう!、さっさと行きなさい!」
「ククッ、承知した」
「ッー!」
アリシアとのやり取りを楽しんだアルムスは楽しそうな顔のまま部屋から出て行った、揶揄われたアリシアは不満げな顔で未来の夫の背中を見送り、彼が部屋から出て行くと執務を再開する。




