三話
朝、アリシアとメアの部屋
アリシアが朝起きるといつも感じる事がある、それは右腕の重さである。
「へへ〜、アリシア〜」
右腕の重さの原因はメアである、髪色以外アリシアにそっくりなこの少女は、寝た当初は自分のベットで寝ているのだが、いつの間にかアリシアのベットに入り込んできて腕に抱き付いて来るのである。
(普段はしっかりしてる癖に寝てる時はこんな感じで、可愛いのよねメアって)
メアの頬をツンツンと突くアリシア、するとムーと言いながらメアが身を捩りアリシアの腕を離した、自由になったアリシアは立ち上がってキッチンに向かい、朝食を作り始めた。
今日の朝食はバターを塗った食パンにベーコン付きの目玉焼きとコーヒーだ、二人はエンジェルズの心得その三、食事を摂る際は必ず感謝せよ!に従い、手を合わせて頂きますをしてから食べ始める。
「ねぇ、メア」
「ん?、アリシアのご飯美味しいですよ?」
「あ、ありがと、・・・ゴホン、今日も昨日会った殺人鬼、出たのかしら?」
メアに話しかけるなり自分の料理が美味しいと言われたアリシアはキョトンとした顔でありがとと言いすぐに頬を真っ赤に染めそっぽを向いた、メアはそんなアリシアを見てクスクスと笑う。
「彼のあの様子ならば恐らくは・・・、エンジェルズから夜や明け方は外に出るなと警告されているのに外に出ている人が大勢いると聞いていますから、被害者も増えてしまっているかもしれません・・・」
「警告は出せても、家を出る事を禁止する事はエンジェルズには出来ないのが歯痒いわ、それが出来るのは町議会よ」
「でも町議会は動かない・・・」
エンジェルズはオリビアの町の町議会に夜中の外出禁止令を出すように言っているのだが、町議会の老人達は腰が重く、中々外出禁止令を出さない。そのせいで殺人鬼による犠牲者がどんどんと増えているのにも拘わらずだ。
「町議会の奴らが何もしないのなら、私達がやるまでよ、そうでしょ?メア」
「はい!、ならば今日は町の見回りですね!」
「ええ!」
この日やる事を決めた二人の少女は急いで朝食を食べ切り、服を着替えてから寮を出た。
オリビアの町
「ここね」
「はい・・・」
予想通り、夜から明け方に一人、犠牲者が出ていた、現在二人は犠牲者が亡くなっていた場所にいる。
「ここで亡くなった人も体をバラバラにされていたって話よ」
「殺すだけでは飽き足らず、自分が殺した人の死体を弄ぶなんて本当に下劣です」
「そうね、だからこそあいつを絶対に捕まえなきゃね」
「はい」
二人は周囲を見渡し、殺人鬼が殺しをしてからどちらに逃げたのか考える、アリシア達の後方は人通りの多い通り、前方は通路が続いている。
「人通りの多い通りには出ないはず、ならこっち更に路地裏の奥に入ったはず」
「そして道は三方向に分かれている、前方の道は遠くの方に別の通りが、左手は行き止まり、右手はマンホールが見えますね」
「マンホールか・・・」
マンホールが気になったアリシアは側に寄るとしゃがんで見る。
「見てメア、人通りが少なくて埃っぽいお陰かしらね、手の跡が残っているわ」
「確かに、つまりは・・・」
「奴はここから地下に潜りどこかに逃げた、ふふん、奴の手口の一つが分かったわね、恐らくは毎回、マンホールから地下に入って逃げているのでしょう」
マンホールの蓋に手を掛けアリシアは蓋を開けた、すると地下に続く梯子が見えた。
「どうするメア?、行く?」
「行きましょう、手掛かりは出来るだけ多く得るべきです」
「よし!、なら地下探索と行きましょうか」
アリシアとメアは梯子を降り、オルビアの町の地下に入った。