二人の少女の出会い
とある王国に一人の王女様がいました、その少女の名はメアリ・アルビオンと言います、美しい金の髪を持つメアリは両親に可愛がられ、国民にも愛され育ちました、しかしある日・・・。
王国は謎の集団の手により炎に包まれたのです、メアリの両親は娘を逃し、自分達だけはお城に残りました、自分達を囮にし騎士と共にお城から逃げたメアリを確実に生かす為に。
「おや?、君達の娘はどこに?」
「残念ながらここには居ない!」
王国に炎を放った者達のリーダーが邪悪な笑みを浮かべながらメアリについて聞きます。
「チッ逃したか・・・」
男はメアリの両親に向けて魔法を放ちました、強く抱き合ったメアリの両親は娘が強く生きる事を信じ男の魔法に焼かれて行きました。
たった一日でアルビオン王国が滅びたこの日を人々はこう呼びます、アルビオンの悲劇と。
十年後、ギグルス国、オルビアの町
「おーい!おっちゃーん!いる!?」
カウンターの前に一人の茶色い髪を持つ少女がいる、少女の名はアリシア・レイティス、魔物の討伐からスパイ業務までなんでもござれな組織、「エンジェルズ」の新人エージェントだ。
アリシアがいるこの場所は組織の本部ロビー、少女は仕事を貰う為、早起きをして寮から出て来たのだが、いつも仕事をくれる男が出てこない。
「しーごーとー!しーたーいーん!だーけーど!」
「うるせぇ!、そんなに大声出さなくても聞こえてる!」
「やっと出て来た、起きてるなら早く来なさいよね」
「新人の癖に何様なんだお前は・・・」
「何様って?、アリシア様だけど?」
「・・・」
ふふんと胸を張るアリシア、男、ビラスは少女を呆れた様子で見つめる。
「何よその呆れた目・・・、それで?、仕事は?」
「あるぜ」
「ふっふっふ、未来の大エージェント、アリシア様が今日受ける依頼は何かしら!」
ノメッツの雑貨店
「いやぁいつもありかどうねぇ、アリシアちゃん」
「良いのよ、ノメッツさん、小さい頃からお世話になってるし」
ここはノメッツの雑貨屋、様々な便利グッズを売っているエージェント御用達の店だ、アリシアも良くお世話になっており、腰に付けているガンブレードもこの必死にお金を貯めてこの店で買った物だ、アリシアは現在新人エージェント達のお決まりのお仕事、店番をしている、報酬は2500ゴールド。
「それにしても大きくなったねぇ、孤児院に来た時はあんなに小さかったのにねぇ」
「そうだなぁ、ガキの頃は喧嘩ばっかして、男を泣かせてたお前が、こんなべっぴんになるとはなぁ」
ノメッツの雑貨屋の店員、ピーターが店主の言葉に同意し頷く。
「う、煩いわね、今は喧嘩なんてしてないでしょう?」
「噂になってんぞ、最近お前がまた男を締め上げたって」
「あ、アレはお尻を触って来たからよ!、あいつが悪い!」
「あーそいつの気持ち分かる、お前良いケツしてるからな」
「ノメッツさん!、今すぐこのセクハラ野郎をクビにした方が良いわ!」
ピーター渾身のセクハラ発言を聞いたアリシアはノメッツの方を向き、彼をクビにした方が良いと進言するが、ノメッツは・・・?。
「スピー」
椅子の上で夢の世界に旅立っていた。
「おきてー!!」
「へっ!、俺の勝ちだな!、取り敢えず胸揉ませろ!」
「死ね!」
「ぐほぉ!」
二度目のセクハラ発言にキレたアリシアのパンチがピーターの顔に炸裂した、ピーターは壁に激突し、力なく倒れた。
オリビアの町
「全く!、あのセクハラ男め!」
あの後復活したピーターに後ろからたわわに実った何かを揉みしだかれたアリシアは、取り敢えず彼をボコボコにし、スッキリした笑顔を見せながら時間いっぱい働き報酬を貰った、現在はピーターに対しプリプリと怒りながら、寮に帰ろうとしているところだ。
「さて夕飯を買わなきゃ、ん!」
夕飯を買いに弁当屋に行こうとしたアリシアは目の前から走って来たフードを被った者とぶつかった、ぶつかった瞬間、フードが外れ顔が見えた。
(えっ?、私と同じ顔?)
アリシアは驚く、フードが外れ見えた顔は髪色だけは金髪で違うが顔は自分と瓜二つだったからだ、それは少女も同じようで、呆然とアリシアの顔を見つめている。
「はっ!、こんな事をしている暇はないのでした!、早く逃げ・・・」
暫くアリシアの顔を見つめていた少女は何かを思い出し立ち上がるが、その瞬間、明らかに怪しい二人の男が現れる。
「ようやく捕まえたのに、逃げやがって!」
「大人しく一緒に来て貰うぜ!」
「くっ・・・、誰が一緒に行くものですか!、私の国を滅ぼしたあなた達となど!」
少女は一度捕まった後に逃げ出し、この男達に追われていたようだ、どうにか逃げ切る為だろう、男達に向けて叫びつつ周囲に目を走らせ逃走経路はないかと探している。
「ねぇあなた困ってるの?」
「はい、物凄く」
「ならオッケー、エルジェルズの心情!その一!、困ってる奴は助けろ!、に従い!、あなたを助けるわ!」
手で少女に下がるように示したアリシアはガンブレード、メリーを腰から引き抜き構えた。
「おお?、やろってのか?」
「上等だ!」
男達もそれぞれ剣と斧を構えた、そしてアリシアに斬りかかって来る。
「中々良い動きね!、でも!」
ビリリとアリシアの体に雷が走る、次の瞬間、アリシアがいた場所には雷だけが残り、もう一度雷が走ったと思った瞬間、アリシアは男達の真後ろにいた。
「なんだ!?」
「一瞬で!?」
男達が振り返ろうとした瞬間にはアリシアは既に剣を振るっており、雷撃が二発剣から飛んだ、二人の男はアリシアの雷撃に痺れ地面に倒れ気絶した。
「ふふん、これがアリシア様のライジングスタイルってね、どんなもんよ」
アリシアの能力はライジングスタイルと呼ばれる、この世界で七名しか存在しない、炎、水、雷、土、風、光、闇の魔力を自在に操る事が出来る「スタイル」と呼ばれる能力のうちの一つ、ライジングスタイルの能力者だ。
ライジングスタイルは雷の力を自在に操る事が出来るだけではなく、十メートル以内ならどこにでも跳ぶ事が出来る、スタイルの能力に目覚めた時にアリシアが読んだ本によると、まだまだ目覚めていない能力があるようだが、試してみても使えなかった、まだ実力と経験が足りないようである。
「凄いです!、スタイルの能力者なんて初めてみました!」
「でしょー?私は凄いの、それで?あなたなんでこいつらに追われてたの?」
「それは・・・、言えません・・・」
「ふぅん、なら名前は?」
「メアです」
「そう、よろしくね!、メア、私はアリシアよ!」
太陽のような笑顔を見せ、アリシアは微笑みメアに手を差し出す、メアも微笑み返し、アリシアと握手をした。
「さてと、こいつらの仲間がいるかもしれないし、安全な所に案内してあげるわ、行きましょう」
「はい」
アリシアは追われていたメアを安全な所、エンジェルズの本部に案内する。
これがアリシアとメアの出会い、いずれ世界を救う事となる、二人の少女の物語の始まりであった。