#81「悪鬼封印」
「これで、よしじゃ」
かばねの角に、かるかがマジックで「封」と書く。
「そんな簡単に封印ってできるもんなの?」
俺の質問に、かるかは「油性じゃからの」と返答。答えになってねえ。
「ぶー」
かばねは不満そうに口をとがらせるけど、少なくともさっきまで満ち満ちてた殺気は、掃除機の通販CMでカーペットにこぼされた牛乳みたいに消え失せてる。
「では泣くまでボコりしぞ」
さっき言ってたマニフェストを実行しようと、ロロロが袖をまくる仕草をする。でもその体操服は半袖だから、まくる部分なんてねえぞ。
「まあ待て。彼女も反省しているようだし」
「けどこいつメギドを食い殺せしぞ?」
「ごーめーんーなーさーいー」
ロロロの剣幕に圧されたのか、かばねも渋々ながら頭を下げた。
「今は報復よりも、この子から話を聞く方が先だ」
ナンに説得されて、ロロロは不満そうに「ぶー」と口をとがらせる。おまえの精神年齢はかばねと一緒かよ。
「それで、君はどうしてメギドさんを殺そうとしたんだ」
「ころそーとしてないよー? たべなさいって、いわれただけだよー?」
いや人間は食われたら死ぬから。ていうか実際死んだし。そう思うけど、かばねにマジレスするのも意味がない気がする。
「では、その食べなさいと言うたのは誰じゃ?」
「んーとねー、わかんない」
隠してる様子はない。どうやらガチのリアルで知らないようだ。
「かばねねー、きがついたらおへやみたいなとこにいて、おんなのにんげんに、さいのかわらめぎどをたべなさいっていわれたのー。それまではずっと、べつなとこにいたんだよー?」
「……」
「……」
ナンとかるかが、かばねの言葉に揃って沈黙する。何か思い当たる節でもあるんだろうか。
「その別なとこって、どんなとこなの?」
俺が尋ねると、かばねは「んー」と考えて「わかんない」の一言。
「もう尋問は済みしな? ではお待ちかね、こいつを泣くまでボコりて――」
「とりあえずロロロは黙ってろ」
こいつを野放しにしておくと、話がどんどんややこしくなる。
「まあすっかり夜も更けてしもうたし、ナンも帰宅せねばならんじゃろ。この子はいったん吾が引き取ろう。メギド殿と一緒にしておくのも危険じゃし、信徒の家なら飯も寝る場所も何とかなるじゃろ」
俺以上に、ロロロと一緒な方が危険だとも思うから、かるかの申し出は正直ありがたい。それにしても、かるかでさえ俺のストライクゾーンより低いってのに、さらに幼いかばねまで受け入れるなんて、かるかの信徒って人はよっぽど度量の広いロリコンなんだなあ。
さーて、次回の「悪魔幼女が俺の嫁なら世界が敵でも怖くない」、略して「俺と幼女の敵が嫁」は?
メギドです! 何だか短いスパンで死んだり生き返ったり色々あったけど、とりあえず今俺は生きてるから一応オッケー。次はもっとうまいカレーが食べたいよ!
次回、「人間終了」。ぜってえ読んでくれよな!




