#29「悪魔祓師」
「悪魔祓い、とぞ……?」
頑河ナンと名乗った女子高生に向かって、ロロロが不審そうにつぶやく。
「その通りですわ。こちらはアタクシがネットで見つけた、悪魔祓いのスペシャリストでしてよ!」
ドヤ顔のセリエルに紹介されて、ナンが「どうも」と頭を下げる。どうやらセリエルはロロロと違って、ちゃんとPCとか使いこなしてるみたいだ。
「ふん、片腹痛きぞ。この偉大なる悪魔ロロロが、おまえごときJKに祓われるはずなきぞ」
「でもロロロ、何百年か前にも人間に封印されてたんだよな?」
ストレートな疑問を口にしたら、ロロロがぶちキレた。
「アレはちょっと油断せしだけぞ! メギドも余計なこと言いしかば、ついでにぶっ殺せしぞ!」
「ついでで殺すなよ!?」
話が習字の途中でクシャミしたぐらいにズレまくったから本題に戻す。
「で、あんたが悪魔祓いで、セリエルの依頼を受けてロロロを祓いに来た、ってことでOK?」
「ああ、相違ない」
ナンはうなずいて、セーラー服の中から何やら取り出す。コーヒーショップなんかでよく見るタンブラーだ。
「まさかその中に聖水が? あっ、でもロロロの聖水ならむしろ――」
「変態は黙っておれ」
全部言わないうちにロロロが制してきた。せちがらい世の中だねえ。でもロロロの顔がちょっと赤くなってるのは見てて萌えるよね。
「聖水ではない」
ナンはそう否定して、タンブラーの中身を飲みだした。その途端、それまでずっとクールでおとなしそうだった彼女の様子が一変。
「!?」
5メートル近く離れてたロロロとの距離を、助走もしないで一瞬のうちに詰める。そのまま叩きつけられるパンチを、ロロロは間一髪かわした。強烈なパンチを受けて、床が拳の形にへこむ。こんなの人間の動きじゃねえ。
「な、何ぞ?」
驚きの声をあげるロロロに、自分が何かしたワケでもないのにセリエルが高らかに告げる。
「いかがですか! これがナンさんの使う殺人兵器、黄魔術の力なのです!」
さーて、次回の「悪魔幼女が俺の嫁なら世界が敵でも怖くない」、略して「ウナナワ」は?
頑河ナンだ。黄魔術とは魔法体系のひとつで、非常に複雑なものだから、次の回で詳しく説明することにしよう。
次回、「香辛魔法」。ぜってえ読めばいいと思う。




