#105「忍者失神」
「指令を出したのは、誰なんだ?」
腹の傷を押さえつつ尋ねると、あぷりは少し考えてから口を開く。
「それは、知らないでゴザル」
「ふざけんな!」
思わず怒鳴ると、あぷりがビクッと脅える。
「だってえ、ホントに知らないんだもん。あ、ゴザル」
「いいよ無理にキャラ作らなくても」
あぷりの語尾なんかより問題なのは、誰が指令を出したのかだ。そこがわからないと話が進まない。
「拙者、気がついたら部屋の中にいて、そこで知らない女性に、賽河原メギドの暗殺を命じられたのでゴザル。それより前のことは、よく覚えてないでゴザル」
かばねの証言とほぼ一致する。黒幕が同一人物なのはほぼ間違いないけど、誰なのか特定するための手掛かりがナッシング。
「その女とやらが如何なヤツかはわかりしか?」
「えーと、確か――」
そこまで言いかけたところで、またあぷりが沈黙。
「ぐう」
見れば首筋に、細い針がずっぷし突き刺さってる。筆箱の中で知らない間に折れてたシャーペンの芯が、サイズ的に近いんじゃなかろうか。
「麻酔塗られしぞ」
慎重に首から抜いた針の匂いを嗅いで、ロロロが即答する。
「うーん、もうチクワ食べられないでゴザルよう」
むにゃむにゃ寝言を言うあぷり。命に別状はないみたいで安心だけど、食べられないほどのチクワってどれだけの量なんだ。
「ぬ、知らぬ間に窓がちょっとだけ開きしぞ」
「ホントだ、いつの間に?」
どうやら何者かが、正体の手掛かりを何か言おうとしてたあぷりを、吹き矢か何かで強制的に黙らせた模様。確かに時代劇なんかでは見かける光景だけど、21世紀にもなっていいのかそんなアナログな手段で。
「起きざれば仕方なき。ロロロたちも、もう寝しぞ」
「いや、寝る前に傷を何とかしてよ」
腹刺されたまま寝るとか、マジで無理だから。
さーて、次回の「首なし死体が俺の嫁なら世界が敵でも座高低い」、略して「ザコ」は?
かばねだよー。かばねー、ちゅうしゃ、きらーい。はりがー、ちくってするの、いたいよねー。でもー、ちゅうしゃしたにんげん、かむと、おこられるのー。かるかのけちー。
じかい、「長女誕生」。ぜってえ、よめー。




