#100「魚手裏剣」
研究所を出た後、駅まで詰恋を送って行く。
「大丈夫? だいぶ遅くなっちゃったけど」
まだ電車はあるけど、そろそろ日付が変わろうかって時刻だ。
「はい、大丈夫です。それより」
そう言って、スマホを取り出す詰恋。
「プリンさんが研究の解読をしたら、私にも教えてください。仕事なんかすっ飛ばして来ますから」
「いやそれは仕事を優先させて? ちゃんと報告するから」
こんな流れで、現役JCアイドルと連絡先を交換することになった俺。川本みたいなヤツに流出しないように、しっかり管理しなきゃいけないなあ。
「……どうした?」
研究所を出たあたりから、何やらロロロがご機嫌ナナメ。
「おまえがニヤニヤせしは、何かムカつきしぞ」
ぷいと顔を逸らす。あーもうホントかわいいなあこいつは。
「ロロロってば妬くなよー。心配しなくても一番好きなのはロロロなんだから」
「くっつくなこの慢性ペドフィリア。調子よきことばかりほざけば、陰部にごまドレッシング注射せしぞ」
ロロロの嫌がる様子もかわいくて、もっとイチャイチャしたくなっちゃうんだけど、こんな深夜でもまだ人目はあるし、あんまり嫌がる幼女にベタベタしてると警察が動くからガマンガマン。
「途中のコンビニでビール買ってやるから」
「……プレミアムなヤツぞ」
「はいはい」
そんなやり取りがあって、手をつないで家へと向かう。駅からちょっと離れたらすぐに人通りもなくなって、俺とロロロの2人きり状態。
もう周りに人もいないし、もっといっぱい触っていいんじゃなかろうか。なーんて思った矢先、ロロロに全力で突き飛ばされた。
「思ったけどまだ実行してないから! 未遂だから!」
「何をワケのわからぬこと言いしか。見よ」
ロロロの示す先を見れば、直前まで俺がいた位置のすぐ近く、住宅だかオフィスだかもわからないような雑居ビルの壁面に、何か棒状のブツが深々と突き刺さってる。ロロロに危険タックルされなかったら、俺の頭を貫通してたポジショニングだ。
「……これって」
「サンマぞ」
そう、壁に刺さってるのはどう見てもサンマ。もちろん生のサンマに壁を貫く強度はないし、今は旬じゃない。冷凍のサンマだ。
「誰がこんなクレージーなマネを――」
「拙者でゴザル」
いきなりまた、面倒くさそうなのが出てきちゃったよ。
さーて、次回の「果樹農園が俺の嫁なら世界が敵でも梨食べ放題」、略して「梨園」は?
キューティープリンセス1号です。今はドクターが残した研究を解読する合間に、研究所の片付けをしています。ドクターが戻られた時に散らかっていたら、メイドとして恥ずかしいですから。
次回、「暗殺指令」。ぜってえ読むべきです。




