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歩行戦車でダンジョン攻略  作者: 葛原
強化
69/115

4-15 新種?

うわーい総合ランキングが1000をこえたぞー。


いやはやありがとうございます。楽しんでいただけるよう精進していこうと思います。


翌日。


今日は探索。実際にダンジョン内に潜って敵の間引きや資源の回収を行う日だった。

ついでに言えば、僕たちの小隊は追加で未探査領域の開拓を行うのも仕事の一つだ。

そしてその仕事の通り、第三階層の地図を完成させるためにダンジョンの奥へ奥へと歩を進めている僕たちの前でそいつらは待っていた。


「なんだこれ」


通路の先を偵察して、先ほど回収した無人探査機のデータを確認していた永水さんがそう言った。


「どうしたんですか?」

「敵だ。ただ、様子がおかしい。映像をリンクする。確認してくれ」


そう言うとともに、僕たちへと映像データが送られてきた。

映されたのは骸骨だ。いつもと同じ、骨粉でできた5mほどの砂人形だ。

ただし、その装いは少々異なっていたが。


「剣と、盾と、…杖?」


そいつらは今まで素手だった骸骨たちとは違い、手に武器を持っていたのだ。

数は4。そのうち一体が剣と盾を持ち、2体が剣のみを持っており、一体が杖を持っていた。


「武器持ちってことですか?」

「そうなるな。今までとは明らかに敵の構成が違う。永水さん。どうします?」

「他の地点で同じように武器を持った骸骨は確認できたか?」


大矢さんの言葉に、永水さんはまずそれを確認した。


「戻ってきたドローンを確認したけど、武器持ちはこの集団だけみたいです」

「迂回して進む手段はあるか?」

「それなんですが、こいつらの後方を確認してください」


大矢さんがそう言うと同時に、画像がピックアップされて大矢さんの言う確認場所が表示される。

そこには特徴的な四角い穴。一見通路に見えるが、そこがただの通路ではないことを僕たちは理解していた。


「下層への入り口か。他に入り口がある可能性は?」

「可能性は否定できませんが、わざわざここに新種を配置する以上、それだけの重要性がここにあるんじゃないでしょうか」

「つまり、こいつらは門番で、倒さなければ先には進めないと」

「おそらくは。どうします?」

「まず、弾薬の残りはどうなってる?」

「総数で7.5割。今までと同じなら、十分です」

「……一当てしてみよう。ダメだったら撤退だ」

『了解』


永水さんはそう決定した。


「敵の新種との戦闘だ。射撃による遠隔攻撃で撃破する。樹君は待機。敵が肉薄して来たら足止めをお願いしたい」

「了解しました」

「大矢さんは退路の確保と後方の警戒をお願いします」

「一応、爆薬は持ってきてるからドローンに爆薬を積んで特攻くらいはできるんだが」

「今回は撃破ではなく情報の収集を目的にします。後ろからの奇襲防止と逃げ道の確保を優先でお願いします」

「了解した」

「残りは自分と共に攻撃に参加。一機で一体を狙って撃破するように動いてくれ」

『了解』


永水さんの指示を終え、僕たちは敵のいる場所へと向かっていった。


-------------------


そこには確かにそいつらが存在した。

剣と盾を持った骸骨が中心に、その前に二体の剣を持った骸骨。骸骨騎士の後方に杖を持った骸骨だ。


「目標発見。どうします?」


戦闘で通路の向こうを確認しながら僕はそう言った。


「気づかれた様子はないな。敵の様子はどんな感じだ?」

「骸骨本体は今までの骸骨たちとそう変わった様子はないみたいですね」

「武器の方は?」

「うーん、よくわからん。見た感じ骨粉で出来てはいるみたいなんだが、今までとはちょっと様子が違うみたいだ」

「詳しいことは解ります?」

「とりあえず何か違うかくらいは解るが、それ以外は実際に採集してみないことにはどうにも」

「了解です」

「あの杖持ちの敵はどういった役割を果たすんでしょうね?」

「解らない。軍事的に見れば、軍配とかと似たものだろうし、指揮官か?」

「ゲーム的に見れば魔導士キャラにも当てはまりますね」

「ファイヤーボールとかアイスニードルとか?まあ否定はできないけど、物理法則に則って言えばあり得ないよなぁ」

「それを言ったらダンジョンもじゃないですか?」

「うーん、一応、ダンジョンができた原理は説明がつくんだよ」

「そうなんですか?」

「ああ、原因は全く理解できないんだけどね。だからまああの骸骨たちが魔導士キャラってのは科学的にはあり得ないかな」

「じゃあ指揮官ですか?」

「それがわからん。あの剣と盾持った骸骨も見た感じ騎士っぽいしな。そうなるとあいつが指揮官だろう。この規模で複数の指揮階級はいらないしな」

「状況的には魔導師っぽいと」

「まあそうなる。要は戦ってみないとわからんな」

「そっちも接触してみないと解らないか」

「そうですね。どうします?予定通り攻撃しますか?」


僕は永水さんにそう聞いた。

今はダンジョンの新たな変化に対応するために動いているが、ここであの骸骨の集団を倒す必要性は無い。

目視で確認し、その存在を確認した以上、すぐに帰っても問題なかった。

というか、不測の事態に対応するためなら、他の小隊と組んで対処した方がそっちの方がいい。

ただし、目の前の骸骨たちが従来通りなら機関砲の斉射だけで済むのも事実だった。


引くべきか、引かざるべきか。

その返答を聞く前に目の前の骸骨たちは動いた。

骸骨たちがこちらを一斉に向き、歩き始めたのだ。


「敵に見つかった!」

「一斉射喰らわせる!各機展開!」


永水さんの言葉に応じ、通路から身を出して隊列を組む。

4機のMULSが機関砲を携え、その方向を骸骨の小隊へと向ける。


「撃てぇ!」


その砲口から、破壊の嵐が巻き起こった。

鉄の礫が風に乗り、その軌道上にあるものへと殺到する。

礫は風を切り、砂を削り、二体の剣を持った骸骨たちに殺到。

瞬く間にその身を削り、中のコアも削り取られ、物言わぬ骨粉へと骸骨たちは姿を変えた。


ただし、機関砲の一斉射が起こしたのはそれだけだった。


剣と盾を持った骸骨はその盾を前面へと押し出し、迫りくる礫の暴風からその身を隠したのだ。

暴風は盾を叩くものの、しかし砕くことは叶わず、その先にある骸骨本体も破壊するには至らなかった。


「耐えた!?」


僕は驚愕の声を上げたが、一斉射撃に耐えたのは盾持ちの骸骨だけではなかった。

杖を持った骸骨も健在だったのだ。

その骸骨の防御方法は一目でわかるほど単純で、かつ確実な方法だった。


杖を持った骸骨がその杖を高く掲げると、その骸骨の目の前にある地面が盛り上がり、巨大な壁と化したのだ。

砲弾はその壁に突き刺さり、そしてそれを貫通することは叶わなかった。

それを見た僕たちは、その杖持ちの骸骨が何なのかをすぐに理解した。


「杖持ちは魔導士だ!骨粉を操るぞ!」


骸骨の正体はゴーレムだ。核になるコアがあり、それがダンジョン内にある骨粉を操ってその身を形作り、操っている。

目の前の杖持ちの骸骨はその原理を強化応用し、ダンジョンを構成している骨粉を制御し、壁として盛り上がらせたのだ。

ファンタジー的に言えば、ダンジョン限定の土魔法使いといったところか。

ただ、それを詳しく観測する時間は無かった。

盾を持った骸骨はこちらの攻撃を受けつつも前進し、その手にもつ剣の有効半径までもう少しのところまで迫ってきていたからだ。


「リロード急げ!盾持ちが近づいた、樹君頼む!」

「はい!」


永水さんの言葉に応え、僕は前進。剣盾持ちの骸骨の前に立ちはだかる。

目の前の骸骨は手にもつ剣を振り上げた。僕もそれに応じて剣を振るう。

狙いは敵の剣の軌道上。タイミングを見計らって、鍔迫り合いに持ち込む。あわよくば武器破壊を狙っての行動だ。

骸骨の剣はその予測通りの起動を描き、僕の持つ剣と激突した。

あわよくば破壊をと思っていたその剣は予想を違えしなり、折れず。僕の持つ剣を受け止めた。

だがそこまでだ。骨粉の比重は軽い。僕の持つ剣よりも軽いのは想像に難くない。

僕の持つ剣の重さは相手の持つ剣を押し、競り勝てる。


「なっ、重っ!」


はずだった。

予想外の重さが腕にある圧力計から僕の脳へと伝わっていく。

その質量は大きく、このまま耐えれば肩のギアが破断することが容易に予測できた。

僕はとっさに剣を持つ左腕の力を全部抜いた。

剣は押され、その先にある骸骨の剣が僕のMULSに迫ってくる。

僕は腕の力を抜きながらも細かな操作を行い、剣を胴体で受け止めた。

僕の持つ剣を寝かせ、剣の腹の部分を装甲板に乗せ、その上で敵の剣を受け止め、腕の力ではなくMULSそのものの質量で敵の攻撃を受け止めたのだ。

そのままの姿勢で僕はMULSを前進させる。敵の位置は動かない。僕は動く。その間にある剣は僕に押され、敵の骸骨へと近づいていく。

MULSの体を使って鍔迫り合いを強引に押し勝つと、僕はそのままの勢いで胴体を骸骨にぶつけた。

その動きは予想の通り敵へと到達し、肉体の質量差で劣る骸骨はその衝撃で大きくたたらを踏んだ。

その隙は逃さない。振り切った剣を引き戻す動きに連動し、僕は盾を前に突き出した。

狙いは剣、ではなくそれを持つ骸骨の腕だ。

剣そのものは妙な強度を持ち壊れない。だがそれを持つ骸骨は先の衝突で今までとの違いがそこまでない事がわかった。つまりは剣で叩き切れる。

だからそうした。盾は軌道通りに敵の腕に吸い込まれ、その質量でその骨を砕き、通り抜けた。腕の保持を無くした剣は重力に引かれ、落下していく。

この隙は逃さない。引いた剣を振りかぶり、再び骸骨に振り下ろす。

敵は盾で防ごうとした。だが、それはただ単に前に掲げるだけの単純なものだった。

横殴りに盾に剣を叩きつける。盾は壊れなかったが、その衝撃で骸骨の上半身ごと横方向へとその盾は大きく泳いだ。

目の前にあるのは盾を持った方の半身だ。

僕はそこに、再び盾で殴りつけた。

狙う先は剣と同じく盾を持った腕。その結果はさっきと同じく、腕が砕け、盾が落ちた。

残ったのは武器を無くした骸骨だ。それは今まで散々僕たちが相手をしてきたものであり、その対処は既に体が覚えていた。

敵の腰に剣を薙ぎ、倒れた上半身を踏みつけて、骸骨のコアを摘出する。

これでこの骸骨は無力化だ。


「イツキ君、下がれ!」


そう思った矢先に、永水さんからの声が届いた。その言葉の意味は、すぐに目の前で結果が出てきた。

僕の目の前の地面が盛り上がり、僕のMULSの身長よりも大きくせりあがって壁になった。

この現象を起こしたのは、最後に残った杖持ちの骸骨だ。

こちらの射撃に対し骨粉の壁を作ることでその攻撃を防いでいるうちに、僕の方へと攻撃を仕掛けていたのだ。

目の前の骨粉の壁。それが少しずつ傾斜、僕の方へ向けて落ちてくる。その壁は骸骨数体分、おそらくトンは軽く超える質量を持つだろう。

それが僕の方へと落ちてきた。


「…!っく…!」


とっさの判断で盾を前へ掲げ、ローラーダッシュで後退する。

落ちてきた壁は砂の激流となって僕へと襲い掛かる。

まず最初に盾にぶつかり、それを支える肩が壊れた。

支えを失った腕が下がり、その先にある胴体にぶつかる。その表面にある装甲の上で後方へと流れながら、その質量を僕の機体へと叩きつけた。

その勢いは腰、大腿部、膝へと至り、懸命に後退する僕のMULSのローラーダッシュまでも飲み込んで、止まった。

先の判断が正しかったかはわからなかったが、辛うじて機体の撃破、擱座は回避したのだ。


「っくは、はぁ、はぁ。被害は!?」


急いで確認する。両肩が破損。腕が上がらず制御不能。頭部も少々動きがぎこちない。胸部の装甲板は固定具に荷重がかかりすぎてふとした拍子で外れそうになっていた。

脚部も内部の油圧に異常がみられる。たぶん、とっさの判断でやった制御で荷重がかかりすぎたのだ。歩く分には支障はないが、飛んで跳ねての格闘機動は出来そうになかった。

機体は健在だが、戦闘は無理そうだった。


「イツキ君、大丈夫か!」

「大丈夫です!ただし機体に損傷アリ、攻撃できません!」


だが、今は戦闘中だ。

残った敵は杖持ちが一体。しかし、そいつは骨粉の壁を盾にして有効打を与えられなかった。

僕が近づいて攻撃しようにも、既に腕は壊れて使い物にならない。


「私がやる。そのまま引き付けてくれ!」


大矢さんがそう叫んだ。大矢さんはそのまま肩のランチャーからボール型のドローンを射出すると、モルモットを取り付けた時と同じようにそれを手で掴んだ。

そこから先も同じで、腰の弾薬箱から中身を取り出す。ただし、それはモルモットの入ったアクリル製の檻じゃない。

手に持ったのは、いわゆる爆薬というものだった。

それを手早くドローンに取り付ける。取り付けられたドローンはすぐさま飛翔し、杖持ちの骸骨の元へと飛んで行った。

そのドローンは敵の作った壁を迂回し、敵の近くまで接近。


そして、その身の持つ暴力を開放した。


壁越しに走る閃光。目の前の壁はこちらへ膨れるように膨張し、破裂した。

爆薬で押され、崩壊したのだ。破裂した骨粉の残骸が重力に引かれて落ちていくと同時に、視界が晴れていく。


その先は爆発に巻き込まれ、そこにいたはずの骸骨も跡形もなく四散したことが確認できた。

戦闘が終了したのだ。


「戦闘終了。みんな無事か?」


永水さんの言葉にそれぞれ応えていく。被害はそこまでない。僕以外のという前置きはあるが。それもドライバーに損傷があるほどじゃなかった。


「こいつらの残骸を回収したら、撤退する」


その報告を聞いて、永水さんはそう宣言した。その言葉に従って、各々で倒した敵の残骸を回収していく。

今回の戦闘で特徴だった、剣や盾、そして杖は、最重要の回収対象だ。漏れなく回収していく。


「イツキ君。大丈夫?」


両腕を破壊され、作業に参加できずに周辺警戒に回っていた僕に、ミコトさんが話しかけてきた。


「僕の方は大丈夫。機体の方は戦えないけど」

「ごめんなさい。何とかできればいいんだけど…」

「ミコトさんが謝ることじゃないでしょ。気にしないで」

「うん…」


納得いかないようだが、そう言って下がるミコトさん。

残骸を回収した僕たちは、予定通りに基地へと撤退した。


後に骸骨剣兵、骸骨騎士、骸骨魔導師と名付けられた敵との戦闘は僕の乗るMULSの損傷という形で何とか勝てたのだった。



ひっさびさの戦闘描写たーのしー!



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