第30話 入学祭<1>
起きたら朝日が差していた。最近色々と忙しかったのでいつもより少し遅く起きたようだ。
外は雲ひとつない晴天。木の枝にはスズメが2羽いて鳴いている。まるで晴天であることを喜んでいるようだ。
「あっー、眠い。さぼりたい。」
とは言っても、今日は入学祭1日目。さぼれないな。今日は俺はある紙を提出しなければならないからだ。
「ミグルー。起きて。」
「今いくよ、ユウヤ。」
どうやらユウヤが起こしに来てくれたようだ。いつもより遅かったからだろう。
その後、いつものように食堂で朝ごはんを食べて、学校に行った。
「こりゃ、すごい賑わいだな。」
「ああ、準備をしてくれたみんなには感謝だね。」
学校の校庭にはこれでもかというほどに出店が並んでいて賑やかだった。制服を着てない人たちもいるから外からも人が来てるな。
「ミグルー。一緒にお店回ろー。」
「ミグルさん、あの、その、お店回りませんか?」
「お店を回りましょう、ミグル。」
「レーティシア様が行かれるのだったら私も行きます。」
いつもつるんでいるメンバーが誘ってくる。ユウヤが後ろで'なんでミグルばかり'なんて呟いているが気にしない。
「よし、じゃあみんなで回るか。」
'しかし6人は多いよなぁ'と感じている俺だった。
それから約1時間後、俺たちは特進クラスのもうひとつのグループと鉢合わせていた。特進クラスは10人で編成されているため、グループは必然的に少なくなりやすいのだ。この前まで輪に入ってこなかったデレースも今では普通に話せている。若干、顔色が悪いが。
「おいおい、デレースはどうした。」
「デレちゃんはね、どうも昨日の疲れが取れていないみたいだよ。」
「おいっ、頼むからデレちゃんはやめろ。」
「ええっ、いいじゃん。」
「デレースの意見に某も1票。変なあだ名はやめろ。」
「私も右に同じ。」
「そ、そんなー。」
ノーラが悲しそうな顔をしている。悪いがそれには俺も1票だ。
「デレースは昨日の特訓でお疲れのようだ。」
「まあ、俺も少しは同情している。」
「ところでお前デレースを半殺しにするって脅していたようだが・・・はっきり言って某は良くないと思うぞ。」
「半殺しにされてたじゃないか、昨日。どっちにしてもデレースの運命は変わらなかった。」
「た、確かに。」
今日の2日前から始めた特訓は俺が組んだトレーニングで最初進めていたが、途中でレーティシアに'もっと厳しくするべき'と言われてどんどんハードになって行った。
俺が組んだトレーニングも地獄なのに、それを厳しくするとなると最早殺人的である。最後には俺もレーティシアもデレースが壊れないか心配になっていた程だ。
「まあ、あれだけやられてたら、本番でも大丈夫だろ。」
「そうだな、日程では明日だしな。」
そう入学祭は2日に分かれていて、2年と1年の決闘イベントは最後にあった。
「ああ、だから今日は休みにした。体を休めておけよ、デレース。」
「分かりました、分かりました。ありがとうございます、ありがとうございます。」
デレースは途端に青い顔をして、ガタガタと震えだした。こいつにさらなるトラウマを植え付けてしまったようだが気にしない。
「よし、俺はそろそろ明日出る代表を書いた紙を本部の方に提出してくるわ。」
「ん、まだ出してなかったのかい?」
ユウヤが不思議そうに聞いてくる。
「ああ、まあ、デレースが潰れてしまった時は俺が出るつもりだったからな。」
「なるほど。」
「っ・・・!」
「どうしたの?レーム。」
「今、誰かに監視されていました。」
レームが辺りを確認しだす。なんだ、今どころ気づいたのか?
「今どころの話じゃないだろ。」
「結構前からだよね。」
「うっとうしいです。」
「ほんとよねー。」
どうやら俺のパーティメンバー達は全員気づいていたようだ。まあ、危険感知は色々と必要だからね。
「狙いはおそらく俺だ。みんなは普段通りにしといてくれ。」
「代表を前もって潰してくる気ですか・・・。卑怯ですね。」
「まあ、それが1番楽だからな。まあ、イベントに俺は出ないが。」
「流石にそれは向こうも読みきれてないでしょう。」
俺とレーティシアの会話でみんな誰の差し金か分かったようだ。
「念のため、僕がついていくよ。」
「頼むわ、すまんな。念のためデレースにも護衛をつけたいのだが・・・。」
「私とレームがつくわ。」
どうやら、レーティシアとレームがついてくれるそうだ。まあバレないとは思うが、念のためだ。
「なら改めて、行ってくるわ。」
そう言って、本部の方へ俺とユウヤは歩き出した。
こんにちは、トニーひろしです。
気に入った方々は宜しければブクマや評価をつけてください。また感想もお願いします。
よろしくお願いいたします。




