第29話 意外な代表
入学祭の3日前の放課後
俺たちは訓練所でいつも通り訓練をしていた。この頃になると大体クラスメイトの能力も把握する事ができた。
「お前の能力は強いな。なるほど、レーティシアに入試で剣を抜かせただけはある。」
「まあ、某の能力は帝級ですから。」
マクギリスの能力は"氷帝"だ。ユウヤと同じ帝級能力で"氷魔法"の上位能力だ。しかし、"氷帝"は"剣帝"と違い遠距離攻撃が可能なため、氷帝の方が上位能力だ。
「まあ、今回の入学祭では学年代表の1対1ですから。某は特に関係ない。」
「いや、それは分からんぞ。それを決めるのはクラス代表の俺だからな。意外な奴を代表にするかもしれんぞ。」
「何を企んでいる。」
「さあな。」
まあ、それは後のお楽しみだ。
「何の話?」
「私達にも教えてよー。」
メイテスとノーラがこっちへ向かってきた。
「それはまた後で話す。それよりも先にする事がある。」
「何よー、教えてよ。」
「いじわるー!」
俺の後ろで何か言っているが気にしない。俺はその場を足早に去った。
第3訓練所は第1、2よりは小規模であるが、設備のいい訓練所である。そこで俺はある男と待ち合わせわしていた。
「それで話とは何だ!」
「おいおい、しょっぱなのそれはないだろ。」
この口調の悪さは相変わらずだな。だが、俺たちを出会い頭に馬鹿にしなかった。こいつも少しは変わったのだろう。
そう、俺はデレースの所にいた。
「いや、3日後の入学祭の代表を誰にするか悩んでいてな、お前出るか?」
「何!お前ではないのか?」
「俺が出てもいいんだけどな。お前の昔の事をマリアさんから聞いてな。兄を倒してお前を救ってやりたくてさ。」
「な、何のことだ?俺にはさっぱりだな。」
デレースがかなり動揺している。よし、たたみかけるか。
「お前は昔は平民にも貴族にも分け隔てなく接していたのだろう。それを矯正させられた事も知っている。だが生憎、俺たちはお前と仲良くしたいからな。ここでお前自身で兄を倒してお前を縛りつけている恐怖を少し和らげてみないか?」
「む、無理だ。俺は兄様に一度も勝ったことがない。俺より序列が上のサキだって負けたのだぞ。勝つのは不可能だ。」
「お前はそれでいいのかよ。少しは男気みせろ。別にこの勝負で負けたからって何も損する事はないんだからな。」
「無理だ無理だ無理だ無理だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。」
これは昔、相当酷いことをされたんだろうな。まあ、恐怖心なんてそう簡単に拭えるものじゃないか。
「なら、俺に今ここで半殺しにされるのとどちらがいい?」
「何でそうなる!」
「今までの恨み。」
「っ!そ、そんな事をしたらどうなるか分かっているのだろうな。」
デレースの顔が青ざめる。
「分からねぇな。因みに俺には脅しは効かんぞ。取り敢えずここで半殺しか勝負を挑むかきめろ!」
「・・・。」
デレースが悩んでいるようだ。しかし、それからすぐに返答が帰ってきた。
「分かった。その勝負俺が出る。今まで失礼な態度をとってすまない。みんなにも謝りたい。だが、はっきり言って俺では勝てんぞ。しかもすごく怖い。震えが止まらない。無様な戦いをするかもしれん。」
デレースがガタガタと震えている。そんな奴に俺は親指を立てて言った。
「勝ち負けはどうでもいい。取り敢えず、過去と向き合ってこい。まあ、明日から入学祭に向けてお前への特別訓練をやらせる予定だがな。多分地獄を見るだろう。」
「っ、分かった。本当に今まですまなかった。」
デレースは謝りながら震えていた。先ほどよりも震えが大きいのは気のせいではないだろう。
「はいはい。明日の放課後、俺が時間を作ってやるからその時にみんなに謝れ。許してもらえるかは知らんがな。その時、入学祭のバトルにお前が出る事も言う。」
「分かった。」
その言葉を最後にしてその場を去った。
明日からは地獄のトレーニングだ。早速、プランを立てるぞ。
俺は急いで寮に帰るのだった。
因みに地獄のトレーニングの目的はデレースの強化と・・・今までの仕返しだ。
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