第14話 入学試験<4>
30分後
「「「わああっーー!」」」
レーティシアと俺がリングの上に立つと歓声が聞こえてきた。今までとは全然違うな。
沢山の人達が観客として見ている。いつの間にか観客席が200ほど用意されていた時にはびっくりした。
まあ、ユウヤ達から言わせれば毎年ベスト8以降の試合は急に盛り上がるそうだ。
それでもこの盛り上がりは異常だ。
もしかしたら【傾国の王女】目当てで増えてるのかもな。
因みにレーティシアの装備は自らの身長程の大剣だ。しかし、今は見当たらない。
トーナメントで一度大剣を使ったが、その時も大剣は急に現れた。おそらくどこかにしまっているのだろう。
「試合開始ー!」
教師が試合開始のコールをした。
っていうか教師もこの盛り上がりのせいかノリノリだ。コールもなんか変わっているし。
そう思いながら俺は"空間転移"でレーティシアの後ろに飛ぶ。
そのまま片手剣で斬りつけた。
彼女の"邪神化"は非常に厄介だ。一度発動させてしまうと手に負えない。
一撃で決めさせてもらう。
しかし、次の瞬間青ざめた。近未来視で自分が吹っ飛ばされる所が視えたからだ。
すぐに"空間転移"を使用して逃げる。あ、危なかった。
見るとレーティシアの全身に黒い模様が広がっていた。【傾国の王女】が戦う時、体には黒く禍々しい模様が広がる事は有名だ。
邪神化を発動している時に現れるようだ。
「貴方が"空間転移"を最初に使ってくる事は予測できてたわ!」
このレーティシアの発言に観客が歓声をあげる。
「スゲェー。」
「流石王女様!」
「結婚してー。」
なんか変なのも混じってたような気がするが、気にしない。
「ふ、ふん。そんな事言われても全然嬉しくないんだからね。」
そしてなんか久しぶりにみたな、レーティシアのツンデレ。
それは置いておくとして、これからどうするか。レーティシアの"邪神化"発動前に倒すという作戦が通じなかったのはだいぶピンチだ。
しかも心なしかいつもより強そうな雰囲気だ。
もしかしたら、 さっきの発言で"神格"の能力補正が上昇したのかも・・・。
「なら次はこちらから行くわよ。"眷属召喚"、変化トカゲ。」
変化トカゲとは魔物の中でも低級の魔物だ。触れたことのある非物質の物に変化する"変化"の能力を持っている。なんであれを眷属にしているんだ・・・?
「変化トカゲ、魔剣グラムに変化せよ!」
成る程、変化トカゲを伝説の武器に変化させて戦うのか。これが大剣の正体というわけか。
身体能力が凄まじくなる"邪神化"には相性バッチリの能力だな。
そしてそのままレーティシアが迫ってくる。
色々な身体能力の補正を受けたレーティシアの動きは最早目に止まらぬ速さだ。
俺は慌てて"スロー"の能力を発動し周りの時間を遅くした後、近未来視で予測しながら大剣を捌こうとする。
だが・・・次の瞬間俺は"空間転移"でレーティシアの後ろに退避していた。あの剣を受け止めたら戦闘不能になる未来が見えたためだ。
受け流したはずの一撃で腕の骨バキバキに折られて吹っ飛ばされるなんてやばすぎだ・・・。
すぐにまたレーティシアが迫ってくる。今度は剣が俺に当たる寸前で"空間転移"を使用し、彼女の後ろに飛んだ後斬りつけた。
最初とは違って剣を振り下ろして隙ができていたためか、斬撃は当たったがその傷はすぐに消え失せていた。
"再生能力補正(極大)"の効果か・・・。
なんて事を考えているとレーティシアの裏拳が俺の頰を擦った。直撃だったら戦闘不能だったぞ・・・。
俺は距離を取ってどうやったら勝てるんだと絶望する。
次の瞬間、レーティシアが急に目の前に現れた。まずい・・・。
俺は慌てて左腕でレーティシアの蹴りをガードする。
俺は吹っ飛ばされた。左腕の骨も粉砕骨折しているだろう。
俺はあまりの痛さに意識を失った。
こんにちはトニーひろしです。
今回ばかりは主人公もピンチ、この後どうなるのか。楽しみですね。
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