第12話 入学試験<2>
俺はリングの上でデレースを見ていた。
レーティシアが言うにはデレースの能力は特殊能力だそうだ。
そのせいなのか、彼は入学試験通過の有力候補であるらしい。
まあ、単純に言えば他の受験生よりは強いから気をつけろと言うことだ。
俺の仲間達の圧倒的勝利を見た後だと危機感があまり持てないが。
図書館で馬鹿にされた借りをしっかり返してやろう。
「平民風情がどうして能力学校なんて来る気になったのかね?大した能力も持たない雑魚集団が!」
デレースがニヤニヤして言う。やっぱ嫌いだわ、こいつ。
「案外お前より上位の能力かもしれないぜ。もしそうだったら恥ずかしいな。」
俺も言い返す。まあ、お前の能力が俺より下位である事はもう知っているが。
「ふん、そんな事はあり得ん。俺は選ばれた人間なのだ。そこらの凡人とは格が違う。」
「ハァン、選ばれた人間ね。」
なら、選ばれた人間とやらの強さを見せて貰おう。
「それでは試験を始めてください。」
そんな事を考えていると、教師が試験開始のコールをした。よし、俺も戦いに集中しよう。
デレースが突っ込んでくる。俺はその場から動かず様子見だ。
相手の能力を知ることのできる鑑定メガネが人間に対して使えないことが悔やまれる。まあ、その分相手にも自分の能力はバレないが。
そんなことを思っているとデレースがわめきながらこちらに向かってきた。
「薄汚い平民風情が分をわきまえよ、俺の"魔剣創造"の能力を見るがいい。」
能力バラしちゃうんだ。しかし奴の間抜けな性格とは反対に魔剣創造は少し厄介な能力だ。
魔剣創造[特殊能力]
何らかの効果を持つ魔剣を創造できる。
確かこんな感じだった。特殊能力の下位に属する能力だ。
俺は自分の能力の特性上色々な能力を調べて知っているのでこの能力も知っていた。能力成長の度合いによって付与できる効果の強さやできる効果の個数が変わってくるが、まあそんなに多くないだろう。
「くらえ、サウザンドソード!」
そう奴が叫ぶと、黄金の剣が現れ分裂していく。
そして増え続けた千本の剣がこちらに飛んでくる。なかなか強力な能力だ。
これで心置きなく倒せるな。
俺は新たに手に入れた能力"空間転移"を使って奴の後ろに現れ、そして手刀で気絶させた。
まあ、こんなところか。
そして俺はそのままリングから降りた。
「まじかよ、、、。」
「デレース脱落か。」
「あいつ、何者だ?」
俺たちの試合を見ていた受験生は初戦から有力候補が脱落して動揺ているようだ。
「今の"空間転移"ね。いつの間に使えるようようになってたの?」
そう聞いてきたのはレーティシアだ。そう俺はこの能力を習得するのに結構苦労していた。
まあ元々特殊能力を三日で覚えるなんてことが無茶なんだが・・・。
はっきり言って"空間転移"の能力は必ず手に入れたかったのだ。もし、試験でレーティシアに当たった場合負ける確率が高すぎる。
レーティシアとの戦いは手に入れたとしても勝つ確率が低い勝負だ。
因みに"空間転移"の能力効果はこれ。
空間転移[特殊能力] new
自分の視界または記憶にある場所に瞬間移動できる。対象は自分のみで使用時には一定の集中が必要。
強い。はっきり言って強すぎる。"魔剣創造"なんかの比ではない。
因みに自分以外の物や人を瞬間移動させるのは"空間転送"という能力だ。いずれ覚えよう。
「なんで一瞬で決めなかったんだい?そんな能力持っているんだったらわざわざ相手の出方を伺う必要なんてないと思うけど。」
ユウヤが訪ねてくる。
確かにそうだ。しかし、それだと困る人達がいる。
「それだと教師達がデレースの実力がどのくらいか分からないだろう。一応、入学試験通過の有力候補らしいしな。」
「なるほど、それで技を一個出させた後に倒したんだねー。」
メイテスが納得したように言う。
「何気に優しいですよね、ミグルさん。」
クテアが言う。まあ、俺のせいで試験落ちて文句言われるのも嫌だしな。
「あっ、もうそろそろ僕の番だからいくよ。」
ユウヤが言った。
俺も一応応援に行ってやるか。まあ、心配ないと思うけどな。
そして、トーナメントはその後も順調に進んで行った。
トニーひろしです。
おそらく次の回でレーティシアの能力詳細が出ます。おそらくなので出なかったらゴメンなさい。
これからもよろしくお願いします。