第10話 いざこざ
俺とレーティシアは図書館まで歩いてきた。
目つきの怖いおっさんにはレーティシアが王族である事は秘密にしてもらう事にした。
騒ぎになるようなめんどくさい事は嫌いなのだ。
俺たちは許可バッチのような物をつけて図書館に移動した。
「許可を取ってきたが。」
「許可を取られましたか、どうぞ。」
警備の人に声をかけて進む。
ドアに手を当て、ガタッと引き戸を開く。
そこには驚きの空間が広がっていた。
図書館にて
「まさかこんな便利な機能があるとはな。」
「そう?普通だと思うけど・・・。」
俺はかなり驚いていた。
レーティシアは当たり前のような顔をしていたが。
図書館とは、本が本棚に敷き詰められている所だと思っていた。
そして本を手にとって椅子に座って読むものだと。
しかし、ここは違った。
図書館内に本は全くなく、パネルのような物があった。
どうやらそのパネルの様なもので本を探し、注文するようだ。
注文した本は5分間ほど待てば届くらしい。
ここのように膨大な書物を収納している図書館では目的の物を見つけるのに苦労するためこのような方法を取っているようだ。
それにしてもこれが普通って・・・。
王族の利用する図書館もきっとすごいんだろうな。
そんなことを考えていると本が届いた。
俺が注文したのは"空間転移"関連の本。レーティシアが注文したのは物語系の本だ。
「余裕そうだな。」
「当たり前よ。私達の能力は固有能力。試験を通らない方がおかしいわ。」
「まあ、それもそうだが・・・。」
実際レーティシアの言う通りだったりする。
固有能力持ちはこの世界に100人も居ないと考えられている。
つまり同い年の固有能力持ちなんて普通は出会わないのだ。同じ国、同じ能力学校出身なんて尚更出会わない。
だから固有能力を持つという事はそれだけで選ばれた存在であり、将来を約束されたようなものなのだ。
「折角才能があるのに能力を使いこなせなきゃ意味ないだろ?」
「それはあなたの場合でしょ。私の能力はあなたのみたいに劇的に強くしたりするなんて不可能だわ。」
確かにそうだな。
俺の能力が特殊なだけかなんて思いながら本を読んでいると偉そうな銀髪の男が先頭を歩く集団が近いて来た。
何だろう?
「そこのお前、この俺に席を譲れ!」
偉そうな銀髪野郎が言う。俺は偉そうな奴だから無視した。
「おい、無視をするな!俺はロート王国の貴族フライテス家の次男、デレース フォン フライテスだぞ。平民の分際で何様のつもりだ!」
偉そうな奴嫌いだな。空席まだあるし。
けど、ここで譲らなかったら騒ぎになるだろう。
「ああ、俺に言ってたのか。いいですよ、どうぞ。」
「ふん、敬語も使えんのか。流石薄汚い平民だな。」
うわっ、こいつマジうざい。
「あんた、先に席に座ってた人から席をとるなんてどうかしてるわ!」
レーティシアが言っている事は正しい。
だが・・・
「いいんだレーティシア、行こう。」
「でも!」
「すみませんでした。」
「そうだ。平民風情が席に座れるなんて思い上がらない事だな。」
足早にその場を去る。
「好きに言わせといていいの?」
「ああゆうのは面倒くさい。適当にやり過ごすにかぎる。席を探そう。」
「ああ、イライラする。」
おう、俺だってイライラしている。
俺たちはなるべく出来るだけあいつらから遠い席へと移動した。
こんにちは、トニーひろしです。
異世界小説といえば横暴貴族。鉄板ですが、重要なキャラだと思います。
これから主人公とどのような絡みがあるのか、楽しみですね。
これからもよろしくお願いします。