15 パンがなければケーキを食べれば良いじゃない
朝、私が眼を覚ましてから暫くすると、金髪の耳の長いとても小さな女の子が部屋の中に入ってきた。
「おはようアリス、昨日はよく眠れたかしら?」
こんな異常な状況でよく眠れるはずもなかったが、かといってそれを素直に言うのもはばかられる。
「ええ、おかげさまで、よく眠れましたわ」
私は彼女に向かって無難に答える。
「そう、それは良かったわ、朝ごはんを用意してるから私についてきて」
彼女はそう言うと宙に浮かびながらゆっくりと移動を始めた。
彼女達は一体何なのだろうか。
手のひらに簡単に乗ってしまうような大きさの人間など聞いたことがない。
ましてや背中からは小さな羽根が生えているし、宙を浮かんでいる。
「私はエルフ妖精のエルエルよ、アリス、あなたは自分が死んだ原因を覚えてないんですって? 首を切られて殺されるような心当たりはないの?」
エルエルと名乗った彼女が私に問いかけてきた。
当然、そんなものに心当たりはない。
「パンがなければケーキを食べれば良いじゃないとか思った事は?」
全くないと、私が否定すると、彼女はひたいを指で触りながら何か悩むように呟いた。
「んー、革命に巻き込まれたとかじゃないのかしら、なんかそんな感じの雰囲気醸し出してたんだけどなぁ」
革命に巻き込まれそうな雰囲気とは一体何なのだろうか。
私には全く想像もつかなかった。




