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10 気楽に行こう
「未練などと言われても、私心当たりがありませんわ。だってそもそも自分がなぜ死んだのかすら分からないのですもの」
アリスが困った表情で言う。
未練を解消しなければ生まれ変わることができないのにその未練が何なのか分からないと言うのは厄介だ。
とはいえ、ここにいつまでも止まってる連中はみんなそんなのばっかりなのでそれほど珍しい事もない。
思い悩む必要なんかない。気楽に行けばいい。
何せ時間はたっぷりとあるのだから。
「ああ、でも、殿下とまだ結婚してないのは心残りですわ。ええ、私は生前暮らしていた国の大貴族の娘で、その国の王子と婚約が決まってましたの。でもこの通り、それが果たされる前に私は死んでしまった。ああ、殿下は悲しんでおられるかしら」
悲しそうな表情で空を見上げるアリス。
彼女の未練は婚約者の事なのだろうか。
ともかく、こうしてまた一人ここに新たな仲間が加わったのだった。




