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酒場のエリサ  作者: smile
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第二王子リュカ

「まったく…お前は面倒ばかり持ち込みやがって…」第二王子のリュカは予算の書類に目を通しながら気だるそうに言う。


「すまない兄さん、でも…なんとかしたいんだ!」


ルイスが田舎の町娘に熱を上げている、そんな噂は城中に広まっていた。もちろん若干引きこもり気味の第二王子リュカの元にも届いている。

真剣に話すルイスを長く伸びた前髪の隙間からその顔色を伺う。その表情は確かに真剣で、本当にこまっている様に見える。

リュカは「はぁ」と再び気だるそうにため息をつくと長い前髪を掻き上げた「あぁ〜めんどくせぇ!」


リュカは見ていた書類を叩きつけるように机に置くと「そもそも今回のオメェはトラブルばっかじゃねぇかっ!ラージュでドンパチやらかしたと思ったら巨額の復興支援の要求!!挙げ句の果てに今度ぁスタンフィードの女を拾って来たぁ?ちっとぁ先のこと考えて動けよ…」


「う…」すでにマジギレしている、一番の原因はルイスの要求した復興支援が巨額でリュカの仕事を大きく狂わせていたからだ。それでも弟のためになんとかしようと、限られた財政の中をやりくりしていたところにエリサの相談だ。

口と態度は悪いが普段大きな声を出さないリュカがここまで言っている、今は相談できる状況ではないとルイスは察した。


「すまん…」力なく項垂れるルイス。


素直に謝るルイスを見て少し気まずくなったリュカは目の前に山積みにされている書類に再び手を伸ばした。

「それとだ…今度の建国祭はレミ兄さんの王位継承を発表するため各国の貴族を集めることになった、警備も強化しなきゃなんねぇ…そのため多くの金が必要だ。さらに面倒くせぇことにグライアスとの国境付近の警備を強化することになった。これも莫大な金が必要だ……わかるな!?」


「いや?…何を言っているんだ?」エリサを助ける相談に来ているのに別の話をされて首を傾げる。


リュカは気だるそうにルイスを見るとまた重く大きなため息をついて「だぁ〜かぁ〜らぁ!金が無ぇんだよぉ!」……「オメェが出したラージュの復興支援は後回しだ、取り敢えず半分は都合つける。残りは来年以降まで待て!」


「待ってくれ、そこをなんとかしてくれていたんじゃ?」


「まぁな、でも無ぇ袖は振れねぇ。もう金を引っ張り出すところはねぇんだよ。戦争も起こってねぇのに国民から臨時徴収するわけにもいかんしな…バルサと相談してなんとかしてくれ…」


…………



なんてことだ…ここに来て振り出しに戻されるなんて。

いや振り出しなんかじゃ無い、最悪な状態だ。このままエリサまで失ったら俺はどうしたらいい?

何も残せていない…

「っ……」

俺はこの数カ月何をしていたんだ…不用意にクラウスを煽って反乱させてしまい挙げ句の果てにラージュは壊滅状態だ。

復興の手助けもまともにできずに俺はこのバリエでのうのうと生活をしている。


それに…エリサまで危険な目に合わせてしまっている…


自分の力無さを実感しルイスはどうしていいかわからず考えても考えても答えは出ない。

いつもそばにいた側近で友のバルサはラージュの領主、ラウラはエリサの側につきっきり、幼い頃からルイスを補佐していたアレフはラージュに残している。


頼みの身内もこの有様だ、母である王妃に相談したときは「そんなことはスタンフィード家に直接聞いたら良いじゃ無い?」と言われたところを父である現国王に止められた。

もしスタンフィード家がエリサの存在に気がついていなかった場合それを知らせることになってしまう、もしそうなったらエリサは強制的にウィルベルムへ送還され最悪の場合は継承問題に巻き込まれその命も危うい、助かったとしても一生幽閉され今よりも辛く苦しい一生を送らされる可能性が高いという。

エリサの存在に気がついていたとしても表舞台に出たエリサをそのままにするとは考えられない、結果同じようなことになるかもしれない。最悪なことはこれを理由にファルネシオ国に牙を剥かれることだ、偽のエルを立ち上げたと言われてエリサ共々消そうとしてくるかもしれない。そうなったら今度はウィルベルムと戦争だ。さすがにウィルベルムとグライアスの二国を相手にするのは無理がある。


自然とその足はバルサのいるラージュの屋敷へと向かっていた。


……◇……◇……


「すまない、ルイス…今回の件は俺もどうして良いものかわからない」


「そうか…」予想通りの答えにあっさりと納得してしまうルイス。


バルサは暗い表情をしたままルイスを見ている「それと…親父に釘を刺されてしまってな」


「レミュール男爵に?」


「これ以上エリサさんに関わるな!と…」


「おい!本気か?このままエリサを見捨てる気か?」友の薄情な言葉に怒りよりも悲しみと切なさが上回り自然と声が震えていた。


初めて見るルイスの顔だった何よりエリサを救いたいという気持ちはバルサも同じだ「…そんなことは言っていない、ただ親父に見張りをつけられた!この屋敷に親父の私兵が2人入っている。表立っての行動が難しいんだ」


予想外だった、先にレミュール男爵に手を回されているとは思っていなかった。でも…

「……なんとかしたいんだ、力を貸してくれ」






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