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酒場のエリサ  作者: smile
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城の朝

城の中の一室で朝を迎えたエリサ。

先日から閉じ込められたまま何もすることができない、そして昨夜は暑苦しくてよく眠れなかった。

そう本当に暑苦しくて眠れないだけだった、突然ミレーユ皇女殿下に連れて行かれラウラさんに名前の意味を説明してもらっても全く理解できない状況は続いている。でもあれほど恐ろしく不安に思っていたのに今は以外と落ち着いていた。

その理由はハッキリと理解している、いま目の前で眠っているラウラさんのお陰だ!

エリサは目の前のソファーで気持ち良さそうに眠っているラウラを優しく見つめ心の中で感謝をした。

こんな自分の側についていてくれている。ハッキリとした理由はわからない何故ラウラさんがここにいてくれているのか?ルイスの指示なのかラウラさんの判断なのか?私の名前に関係しているのか?

それでもお陰で安心することができているのは事実だ。


「コンコン」朝、早くからドアを叩く音にラウラがスッと起き上がる。さっきまで気持ち良さそうに寝ていたのが嘘のようだ。そして静かに返事をした。


「はい…」


「私だ」聞き覚えのある声ですでに誰だかわかる、少し間を置いて自分の名前を言った。


「ミレーユだ!」


ラウラが静かに立ち上がり寝起きにもかかわらず鋭い目つきでドアに向かう。


「やぁ、おはよう!朝食を持って来たぞ」鍵を開ける音とともにドアが開き爽やかに挨拶をするミレーユ。その後ろからワゴンを押してメイドが部屋の中へと入ってくる。

テキパキとテーブルの上に並べられる食事。


私はベットの上で枕を抱えたままその作業をジッと見ていた。


…毒なんかは入っていないよね?聞きたいことがあるって言っていたから自白剤かな?

でも何を聞かれても何も答えることなどできない。

何も知らないのだから…


食事を並べ終わるとメイドは何も言わず部屋を出た、ミレーユ皇女殿下はそのまま居るのに。


「まぁ食事をしたまえ、それからゆっくりと話をさせてもらう」ミレーユはそのままラウラが寝ていたソファに深々と腰掛けて欠伸をした。


「じゃ、いただきまーす」さっきまでの鋭い目つきが嘘のようになんの警戒もなく食べ始めるラウラ「エリサさん食べないならそのソーセージ食べちゃいますよ」そう言ったときにはすでに手を伸ばして食べている。


警戒しているエリサの目の前で普通に食べ始めるラウラ、まるで毒味したから食べても大丈夫と言っているように感じた。


「あっ…い、頂きます」ゆっくりと立ち上がりテーブルに向かう、ミレーユ様をチラッと見たがこちらを気にする様子はなく目を閉じて休んでいる。


並べられている朝食は意外とシンプルだが種類は多い、トーストにバターとジャムが二種類、スクランブルエッグとソーセージが1本、ラウラさんが食べたから本当は2本。ポテトサラダとトマト味のスープ、フルーツの盛り合わせと紅茶も注がれている。


あまり食欲は無かったが食べ始めると意外と食べれてしまうもので結局全部食べてしまった、当たり前だが美味しかったからだ。

スクランブルエッグはバターの風味が強くアクセントの黒胡椒が味を引き締めてくれている。ポテトサラダはマスタードの風味がほんのりとしていて、これがまたさっぱりと食べれてしまう、トマト味のスープも絶品でトマトの酸味と野菜の甘みが絶妙なバランスでスッと喉の奥へと落ちていく。


さすがお城の料理だ…すでに敗北感を感じる…



「さて、そろそろ良いだろう?」

いつの間にかミレーユ様が立ち上がりこちらを見ている、それと同時メイドさんが入って来てテキパキと食器を片付ける。

あっという間に片付け終わると新しいテーブルクロスを敷き3人分の紅茶とクッキー、さらに一輪挿しの花と大量の書物がテーブルに置くと、鍵のかかっていた窓を少し開けて風を入れた。全てを終えると素早く出ていく。スーパーメイドだ!



「では、エリサ!話を聞かせてもらおうか?」ミレーユ皇女殿下の言葉に美味しい朝食で満たされた心に緊張の糸が張り詰めた。

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