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酒場のエリサ  作者: smile
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舞踏会の夜(ルイス)

エリサを屋敷に送り届けるルイス。いつも待ち合わせをする屋敷を出てすぐの1つ目の角、門番からは見えない場所だ。2人とも別れがなごりおしそうにお互いに握った手を離せないでいた。

「じゃ、じゃぁまたな…」

「うん、また…」


「おやすみ…」

「うん、おやすみ…」


こんなやり取りがしばらく続く。離れた場所でラウラはくだらないと言わんばかりに大きな欠伸をした。


お互いに見つめ合ったままその手は強く握られラチがあかない。


「……」ルイスは何かを決心しキョロキョロと辺りを見渡し人目がないことを確認、すでに顔は真っ赤になっていて、その手はいつもより余計に汗ばんでいた。

エリサが不思議そうに首を傾げたところで真剣な目をエリサに向ける「え、エリサ…さ、最後に…」少し裏返ったその声と共に握っている手を優しく引かれる。


まさかここで?と思うものの嬉しさと強い恥ずかしさがが同時に降りかかる。軽く触れ合う唇と唇。


「じゃぁおやすみエリサ」少し裏返ったままの声、恥ずかしそうに、でも笑顔で走っていくルイスをぼーっとした眼差しで見えなくなるまで見つめていた。


こんなところで…


思い出しただけでめちゃくちゃ恥ずかしい、こんな外で、しかも誰かが見ていたかもしれないのに…ふと、ラウラさんに見られていたのでは?と思い余計に恥ずかしくなった。



「ふぁ〜」ルイスがさらに先の角を曲がると大きな欠伸をするラウラがいる。

ラウラはルイスの顔を見るなり「クスクス」と我慢できない笑みを浮かべ一緒に歩き始める。


見られていたのか?

いや…確認はした、キスをした時はこっちを見ていなかったはずだ。


ルイスは横目でラウラを見るが何も言ってくる様子がないので顔を赤くしたまま大股で急ぐように城へと向かった。




城内に入ったところでミレーユの側近カミーラが立っている「お帰りなさいルイス様、ミレーユ様が戻り次第、書斎の方へ来るように言われております」


「姉さんが?今日はもう遅い舞踏会の話なら明日でいいだろう?」怪訝な顔をするルイス。


「いえ、急ぎ来るようにとのことでございます」理由は言わないが何か重要なことだと理解はできたルイス「わかった!」と一言だけ言うとキスの余韻を確認するように唇に手を添えた。そして1人の男性ルイスではなく王族としてのルイスとして気持ちを入れ替える


「コンコン」書斎のドアを叩くルイス。

しばらくするとドアがゆっくりと開く、しかしドアを開けたのはコルベール子爵だ。

「?…コルベール子爵?」何かがおかしい、そう思いながら中へ入るとレミュール男爵とダニエラがソファに腰掛けている「どういうことですか?姉さん」窓際に立つミレーユに問いかけるがかなり苛立った表情をしている、何やら空気が重たい。


「ラウラは一緒か?」ミレーユが問いかけるが「何故?」と警戒をし、答えないルイス。


「ラウラにも話を聞きたい、いるなら呼んでほしい」何か怒鳴りたくなるのを抑えるように自分を押し殺しているミレーユ。ルイスは周囲を見渡し他に人がいないことを確認してからラウラを呼んだ「ラウラ、入ってこい!」


少しの間を置き静かにドアが開く。スッと音もなく中へ入って来るラウラ、そのままドアの前に立ち「はい、何でしょう?ルイス様」静かに口を開く。


「ルイス!お前に聞きたいことがある」我慢できずに少し大きな声になるミレーユ「ラウラ、お前にもだ」そして2人を交互に睨むように見やる。


「はぁ?」この状況が理解できず乾いた返事をするルイス。


「お前が連れてきたエリサ、あいつは何者だ?」


??意味がわからん、さっきまで舞踏会で顔を合わせていただろうに。それとも自分の彼女を査定でもする気か?

「どう言うことですか?」気分を害し鋭い目つきでダニエラを睨むルイス。こいつが何かを吹き込んだ気がしたからだ。


「こっちを向けルイス!」だんだん大きくなるミレーユの声「お前はエリサの素性をどこまで知っている、答えろ!」すぐにラウラの方を向くと「ラウラ、お前も答えろ!」


何かおかしい。ラウラは耳を澄まし辺りを警戒するが他に人の気配は感じられない。考えられることは1つ舞踏会でエリサさんが何かをやらかしたと言うことだ…

ラウラは無言のままルイスの対応を待った。


シンと静まり返った部屋、全員がルイスに注目をしその言葉をまっている「彼女は…エリサは酒場の女主人。ラージュで産まれラージュで育ち、つい最近までラージュを出たこともなかった女性だ!それがどうかしたのか?」


「彼女の両親は?」ミレーユが問いかける。


「数年前に亡くなっている」ミレーユの目を睨むように見つめながら答えるルイス。


「祖父については聞いているか?」


「詳しくは知らない。ラージュではない少し北の産まれと言っていたかと…」詳しく覚えていないためやや不安そうに答えるルイス


「彼女のフルネームは?」


あまり気にしたことがなかったためしばらく考えるルイス。確か…「エリサ・エル・アイーダ」


「なっ!?」思わず声を上げるラウラ。その声にルイスが振り返ると見たことのない驚きの表情をしたラウラが目に映る


「どうかしたのか?ラウラ?」珍しく声を上げるラウラを気にするルイス。


「今…何て?」ラウラがルイスに問いかけるがラウラの動揺する意味がわからない「はぁ?」と再び乾いた返事をする。


「エリサさんの洗礼名です」思わずルイスに駆け寄るラウラ。


「エルがどうかしたのか?」


「…そう言う事ですか…合点がいきました」ラウラがこの状況を理解しコルベール子爵とレミュール男爵に目を向ける。


ただ残念なことにルイスの反応に全員呆れた顔をしていた。



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