舞踏会
夏の夕方、もうすぐ舞踏会が始まる時間だ。
会場の周りは木々が多くて、さらにお城の影になっているため以外と涼しい、風もよく抜けているので気持ちが良いくらいだ。
「では、私はここまでです、行ってらっしゃいませエリサさん」
いつもと違うラウラさんの丁寧な言葉使いはやはり慣れない。お城の中だから騎士らしく振舞っているのか、私を緊張させるためにワザとそうしているのかわからない。
でも…ここからは私がしっかりとしないといけない。ここで物怖じなんてしていたらルイスの恋人なんて務まらないんだ!
ドアの前に立ち「ゴクリ…」と固い唾を飲み込み大きなドアに手を伸ばすエリサ。
う〜やっぱり緊張するなぁ、でも…このドアの向こうでルイスが待っているんだ。私はルイスに会いに行く!
「よし!」自分に気合を入れドアを開けるエリサ。
自分の気持ちを再確認して会場の中に入るとエリサが今までに経験したことの無い雰囲気と見たことの無い景色が広がっていた。
色鮮やかな絵画が描かれた高い天井には大きなシャンデリアがいくつも下がっていて、幾つもある太い柱は綺麗な装飾が施されている。開け放たれた窓からは穏やかな風が吹き抜け真っ白なレースのカーテンが風になびいている。
真っ赤なクロスが敷かれた大きなテーブルには見たことの無い料理が次々と運ばれてきており、すごい人数のメイドさんが慌ただしく動き回っている。
部屋の中ほどからは1mくらいの段差があって、下の方はダンスの会場だろうか?50人くらいは余裕で踊れるほどの広さがあり、すでに楽団が演奏の準備を始めている。しかもこれだけ広い会場にもかかわらず、いたるところに綺麗な花が飾られている。真っ白な壁にさり気なく掛けられた一輪挿し、テーブルの上に置かれた大きなアレンジメント、目隠しのように置かれている観葉植物も…
そしてルイスを探して歩き始めると貴族らしき数人の男女がこちらを見ていることに気がついた。
どうしよう…思わず目をそらしてしまった…
「ヒソヒソ」と私を見て何かを話しているが雑音が多すぎて何を言っているかわからない、でも…表情から余り嬉しく無い内容だと想像がつく…
………………
ねぇ、あの女性じゃない?
おい、あの美しい女性は誰だ?
早速声をかけてみるか!
お前、抜け駆けするなよ!
いや、やめたほうが良いあれが噂の…
やっぱりそうよ!あれがルイス殿下の…
あっ…あれか…
殿下が連れてきた町娘って!!
どんな色目を使ったのかしら?
……………………
逃げ出したくなるような気持ちを抑えながらルイスを探すエリサ。
「いた!ルイスだ」ルイスを見つけて笑顔になるのも束の間、大きな植物の陰で見えなかった。すでにルイスの周りには数人の女性が集まっている、しかも一人はミレーユ皇女殿下だ。
「……」これ以上先に進むのをためらい立ち止まるエリサ。しかし目の前にはルイスがいる、その姿は青と黒を基調とした燕尾服で胸には勲章のようなものがつけられている。いつもと違う雰囲気で私の知っているルイスではない…
しかも楽しそうに談笑するルイスを見ると、あえてこのタイミングで声をかけるのは良く無い気がした。
どうしよう…
でも他に知っている人など一人もいない、まして舞踏会の会場など初めてだ。何をどうして、何を話したらいいのか全くわからない。
周りの視線も気になるし…
少し隅の方で時間を潰すかな?
「エリサ!」エリサが離れようとした瞬間名前を呼ばれる。その声に驚くが、それと同時に今までの不安が全て吹き飛んだ。
ルイスだ、ルイスが気がついてくれた!
女性達を置いて私の方へ歩いてくるルイス。どうしよう…ドキドキする。
「すごい綺麗だ!」さらに開口一番恥ずかしい言葉を真顔で言われる。
「ひぇ? ぃや…こんな格好は、ちょっと恥ずかしぃ…」
「そんなこと無い!一緒に行こう、姉さんもいる」
「う、うん…」
半ば強引な気もしたがそれも嫌では無い、むしろ嬉しい。
手を引かれ談笑していた場所へ連れて行かれるとミレーユ様がこちらを見ている…これはこれでちょっと気まずい…でも…。
「ああ、この前の…確か…エリサ…と言ったか?」
「はい……」エリサはミレーユ皇女殿下を前にゆっくりと一呼吸置き淑女らしさを演じた、それは本当に付け焼き刃で、ついさっきアリエンヌさんに教わった程度のものだ。
「ミレーユ皇女殿下、本日はお招き頂きまことにありがとうございます。このような場は不慣れなものですので、ご迷惑にならないよう気をつけさせていただきます」舌を噛みそうな言い回し、少しぎこちないがミレーユもそこは理解していたようで今度はしっかりとエリサのことを見ていた。
「うん?まぁそう堅苦しくするな!」
「ありがとうございます」
「今日は近隣の貴族たちを集めた交流会だそれほど堅苦しい場ではない、それにせっかく来たんだ、楽しんでくれれば良いさ。…ただ、一応こいつの嫁探しも含まれているからな」言葉の最後にルイスに向かって顎をしゃくる。
前回とは違い優しい言葉をかけられることにホッとするエリサ、最後に釘を刺されるような言葉も入っているが分かっていることなのでそれ程気にはならなかった。
「うん?随分余裕だな?」嫁探しという言葉にエリサが慌てると思ったらしく逆に驚くミレーユ「まぁ一度や二度寝たからといって優位に立っていると思わないことだ」
「え?」なぜそのことを知っているの?ルイスが話をした?
こんどは明らかに驚いた顔をしたエリサがルイスとミレーユを交互に見返す。しかしルイスは慌てて首を振っている。
「おや?図星だったか?はは、舞踏会に連れてくるくらいだ、ある程度の関係にはなっていると思ったが…へぇ〜、ルイスお前も随分やるようになったなぁ!」ミレーユはカマかけがうまくいき嬉しそうにグラスのお酒を一気に飲み干した。
「エリサ、私も弟の恋路を邪魔するほど無粋ではない、ただ私達はこの国を治める王族だ、正室にはちゃんとした家柄の女性が必要と考えている。だが、それ以外で好き勝手する分には構わん、愛人になろうが側室になろうが好きにするが良い」
ああ、そうか、そういうことか…この前、広場であった時に言っていた側室というのはそういう事か「はい、ありがとうございます」
しかし…
え?
側室って…
私がルイスと
け、けっ結婚するってこと?
改めてそう言われると物凄く恥ずかしいもので淑女らしく振舞うことなどもう頭には無い。
「だが、それよりルイスを他の女に取られんよう頑張れよ!」
「ひぇ!?」
「はははっ、素が出ているぞ」
「……」すでにアルコールが入っているせいか前回よりご機嫌なミレーユに面白いように揶揄われ言葉を失うエリサ。
常に策を巡らせ相手の手の内を読み合うような外交をしているミレーユにとってエリサを揶揄うことなど造作もない。
しかもそれが弟の連れてきた女性だと思うと余計に興味も湧くというものだ。
「エリサ、会場を案内しよう!」気まずくなったルイスがエリサの手を引いた。
「う、うん」いつものような軽い返事を返すエリサ。振り返るとミレーユ様が楽しそうにニヤついているので会釈をして離れることにした。
「楽しそうですね、ミレーユ皇女殿下?」近くにいた貴族の女性がミレーユに近づく。
ミレーユはその女性を見ずにエリサの後ろ姿を見つめていた「そうだな…もしかしたら私の妹になるかもしれないと女だ、まぁ仲良くしてやるさ」そして、また新しいグラスに口をつけた。
「すまないエリサ、姉さんは悪気がある訳では無いんだ。興味のある人間はすぐに揶揄うように探りを入れてしまうんだ」
「うん、大丈夫だよ。今日はちゃんと私の目を見て話をしてくれた。広場であったときは見向きもしなかったから怖かったけどもう大丈夫」
「そうか、よかった」そのままエリサに会場の説明をするルイス。
交流会というだけあって人数も多く100人位は居るだろうか?子供から初老の紳士淑女までと年齢も様々である。ただ程のいいお見合いの場と言うだけあって20代の男女は圧倒的に多く、そのほとんどが綺麗に着飾っていて華やかな会場をより一層華やかに彩りを与えている。
しばらくしてミレーユ皇女殿下による挨拶が行われると舞踏会はスタートした。
会場では楽団が演奏を始め、料理や飲み物が次々と運ばれてくる。皆グラスを片手に料理をつまみ、会話を楽しんでいる様子だ。
私はルイスに葡萄酒の入ったグラスを渡され、料理の並ぶテーブルに連れて行かれる。
しかし…美味しそうないい香りのする葡萄酒は手に持ったままでその中身は一向に減る様子は無い。口をつけてはいるものの渇いた口を湿らせる程度で胃袋に落ちるほど口に含むことは無い。食べ物も美味しそうでいい匂いがしているにもかかわらず手を伸ばすことはない。
「……」これはこれで拷問のようにキツイ…
エリサは締め上げられたコルセットのお陰で食事ができる状態では無かった。何かを呑み込んだ瞬間にそれ以上のものが戻ってきそうな気がしていたからだ。もちろん緊張しているという事もあるがそれらが合わさり大人しくせざる得ない状態である。
これはこれで淑女らしくて良いだろう?と自分に言い聞かせてなんとか我慢していた。
しばらくすると会場は盛り上がり始め、すでに数組の男女が手を取り合ってワルツを踊っている。
私は初めから踊るつもりなど無かったためルイスの側にいるだけだ、他の女性がルイスに近寄らないために片時も離れるつもりはない。
ルイスも特に『踊ろう』とは言わず、ただ早くこの舞踏会が早く終わってくれるのを望んでいるように感じた。
それはそれで問題はない、お陰でルイスと一緒にいられて、たくさん話ができるのだから願ったりかなったりである。
しかしそんな状況も長くは続かずミレーユ皇女殿下が近づいてきた。
「ルイス、ちょっとレミ兄に呼ばれた。わるいがあそこのコルベール子爵とレミュール男爵の相手を頼む」
「え?いやちょっと待ってくれ」
「少しだけだ、もう直ぐ会場の進行を任せているカミーラが戻ってくる、それまでで良い!頼んだぞ」
なにやら慌てている様子でほぼ一方的に話を進められる。ルイスの言葉も聞かずにすでに出口へと向かっているミレーユ、先ほどとは違って真剣な表情だったので大切な用事なのだろう。
「あ、待ってくれ…」ルイスが呼び止めるも振り向くことすらせず、そのまま外へ出てしまった「ああ、もうっ!…すまないエリサ、少しだけ待っていてくれないか?」
「え?う、うん、わかった…」ここで嫌だと駄々をこねるわけにもいかないだろう、ただここで一人になるのは若干不安だった、何より離れている間にルイスに他の女性が近寄るかもしれないと思うとそれもイヤだ。
「……はぁ…」一人になり小さく吐息を漏らすエリサ。
しかし、私がこんなお城の舞踏会場に居るなんていまだに信じられない…ここで料理を作っているならまだしも、こんなドレスを着てゲストとしてこの場に居るのだ…
エリサは改めて大きな会場を見渡し、夢ではないことを確認していた。
「失礼いたします」
「ぁ、はい?」一人になった途端、急に声をかけられ驚くエリサ。振り向くと細身で長身の男性が笑顔で手を差し出している。
な、何事?
「私はフランツ、今宵は貴方のような美しい女性にお会いできてとても幸運に思います、是非一曲、ご一緒にお願いいたします」
まさか私を踊りに誘っている?うそ?
「…ぁ…ぁの…」作法も何も知らないためどうして良いかも解らずうろたえるエリサ。助けを求めるようにルイスを見るが髭のおじ様達と話をしていて気付かない。
…ぇ〜?どうしたら良いの?顔を赤らめモジモジと困った様子のエリサに一人の女性がそっと近づく。
「初めまして!私はあちらでルイス殿下がお話をされているコルベール子爵の妻ダニエラ。こちらは私の弟のフランツです、弟のお相手、よ・ろ・し・く」
ダニエラって確かあの時の…
ダニエラと名乗った女性の頭を見ると帽子屋でルイスが手に取った帽子と同じ帽子が乗っている。帽子と同じ薄紫色のドレスに鳥の羽根でできた高そうな扇を手に持ちそれで自分を扇ぎながら見下すような視線を送られる。
でも…細くて綺麗な人…
「それに…あら? いつまでも男性の誘いを放って置くなんて!………あまり殿方に恥をかかせてはいけませんよ。早くその手をお取りなさい」
「え?でも…私は…」エリサは再びルイスを見るがとても気がつく様子はない。
「今宵は交友のための舞踏会、一人でも多くのお相手と踊り、語らい、食事を楽しむことが大切なのです。一人でいらしては勿体ないですわぁ」
時折ニヤリとしながら話し、身振り手振りを動かすたびに強い香水の匂いがエリサの敏感な鼻をつく。
そして目の前ではダニエラ様の弟と言っているフランツがいまだに手を差しのばしている
…うっ…
『何かあったら呼んでください』と言ったラウラさんの言葉を思い出したが、この状況で呼んだら怒られそうだよね…いやこの先一ヶ月は笑われる気がする…
エリサは意を決して顔を上げる
「…ぁ、あの…一曲ご一緒すればよろしいのでしょうか?」
「はい、是非」フランツと名乗った男性は爽やかな笑顔で返事をする
ニヤつくダニエラを横目に一歩前に出ると躊躇いながらもその手を取るエリサ「ええ、良いですわ!さぁ遠慮なさらず思いっきり楽しまれなさい」
「思いっきり?」
「ええ、舞踏会に参加をして下手な踊りをされたらお相手が恥をかいてしまいますわ!!ほっほっほ」
ああ、そうなんだ、そういうことか、この人達は私に恥をかかせたいのか…
私が恥をかけば連れてきたルイスも恥をかく、そういうことか…
これが明らかな嫌がらせであることを確信したエリサ。お陰で迷いは吹っ切れ「フゥ…」と大きく息を吐いて集中した。
ターンタンタターン…エリサは頭の中でワルツのリズムをとる。
……うん、久し振りだけど大丈夫!!
真剣な表情に変わったエリサの手を引きフランツが会場の中央へと連れて行く。
「ふふふ、赤っ恥をかきなさい田舎者…」ニヤつく口元を扇で隠しながら二人を見るダニエラ。
誰もが気にしていたエリサがダンス会場へと降りてきた、それだけでほとんどの人が2人に注目をした、しかも相手はコルベール子爵の義弟フランツだ。
2人の踊りを見ようとする者で人集りができ、他に踊ろうとする者はいなかった。そして会場は今日一番の盛り上がりを見せようとしていた。
会場が一気にざわつき始めたため、異変に気がつくルイス。「え?エリサ!?…マズイ、止めさせないと」ちょうどカミーラが戻ってきたところだったので直ぐにその場を離れ足早にエリサの元へ向かう。しかし歩き始めたときには曲は始まり丁度二人が踊り始めたところだった。
「くっ、しまった。なぜエリサがフランツと?」会場を見渡すとニヤつくダニエラが目に入る「あいつか?」
くそ、だからあいつは嫌いなんだ。しかしなんとか止めさせないと…
ルイスがそう思い、辺りを見渡すとざわついていた会場が静まり返っていることに気がつく。
今度はなんだ?と思いエリサとフランツに目を向けるルイスの目に予想していない光景が映った。
会場の真ん中で優雅にそして伸びやかに踊るエリサ、それとは対照的にエリサの動きについていけず時折ステップを外して躓くフランツ
まさか…
ルイスは自分の目を疑った。会場にいる全員もエリサが笑い者になることを期待していただけあって唖然としている。仕掛けたダニエラを見ると眉間にしわを寄せ鋭い目つきでエリサを睨んでいた。
どうしてだ?なぜエリサはこんなに綺麗に踊れるんだ?
それはここ数日で練習したような付け焼き刃な踊りではなく洗練された美しい踊りだ。そこいらの貴族でもここまで踊れる人間はいないだろう!実際にフランツはついていけていない。
ルイスはそのまま曲が終わるまで終始見とれてしまっていた。
数分後…曲が終わったところで会場は再びざわつき始めエリサの目の前ではフランツが息を切らせて肩を落としている。
「えっと…どうしたら良いんだろう」礼儀作法も知らないため踊った相手にどう声をかけて良いものかわからず戸惑う。そうこうしているうちに他のグループが会場に入ってきて次の演奏が始まろうとしていた、慌ててフランツの手を引き会場から離れると険しい顔つきのダニエラ様が近寄ってくる。
「ふん、素敵な踊りでしたわ!私はダニエラ・ルース・コルベールよ、あなた名前は?」
なんだか機嫌が悪そうなダニエラ様を前にとりあえずこれでルイスに恥をかかせないで済んだ安心感でやっと落ち着いてきた「あ、はい、エリサ・エル・アイーダと申します」と慣れた仕事用の笑顔で返した。
そして問題はここから始まった
エリサの名前を聞いたダニエラの表情が明らかに変わったのだ、それは驚いた顔というのが一番しっくりくる表現だろう開いた口を扇で隠すこともせずエリサの顔を見つめるダニエラ。全身をくまなく見た後エリサの髪をじいっと見つめたまま固まってしまった。
?エリサが不思議そうな顔をすると「し、失礼いたしました、ウィルベルムのご出身で?」今までとは明らかに違う丁寧な口調で尋ねるダニエラ。
ウィルベルム?確か北方の?「いえ、私の生まれはラージュですが…あ、でも祖父は北方の生まれと言っていたのでおそらくウィルベルムかもしれません」エリサはできる限りの虚勢で普通に話しているように見せた。内心は子爵夫人と会話をするなんて恐れ多いことだ。
しかしダニエラはさらに驚いたらしく険しい表情に変わった「あなたスタンフィード家の!?……」
ん?スタンフィード家?初めて聞いた名前だ、また何か勘違いされた?エリサが確認しようとしたときルイスの声が聞こえた。
「エリサ!」
慌てて駆け寄るルイスに気がつくとダニエラはルイスを睨みながらフランツを連れて離れてしまった。
「驚いた!こんなに踊りが上手いなんて…」
「へへ!小さい頃、おじいちゃんに教わったんだ」隠していたわけでは無かったが初めから踊るつもりは無かったため言わなかっただけだ、少し照れ臭そうにするエリサ「子供の頃は踊るのが大好きで毎日おじいちゃんやお父さんと練習したんだ」
「そ、そうか…いやそれよりゴメン、離れてしまって」
「うん、もう大丈夫。さっきので私を揶揄おうって人もいなくなったみたいだから…それよりせっかくだから踊らない?」
「ああ、そうだな!」
「私ね、今度はポルカを踊りたい!」
「え?ポルカを?」
「うんあの二拍子のリズムが楽しくて踊っているって気持ちになるんだ!」
「じゃぁ」ルイスが指揮者に合図を送ると曲のテンポが速くなる。タンタンタン二拍子のリズミカルな曲が始まるとルイスとエリサ、そして数組のカップルが会場の中央へと進む。
楽しそうに踊る二人を他所に周囲ではコソコソとエリサを指差しながら変な噂が広がり始めていた。