嬉し恥ずかし朝帰り…
激しく降っていた雨も上がり、宿屋から外へ出ると夜明け前の紫色の空が広がっている。
「今から帰れば朝食の準備に間に合うわ!」まだ薄暗い空の下、目の前には笑顔で話すエリサがいる。
少し後ろめたいような感覚に襲われているルイスとは正反対だ、ドキドキと探るようにエリサの様子を伺おうとするルイス。
俺は昨夜エリサと……
一人で赤面するルイスを横目に元気に微笑むエリサ
そのまま恥ずかしそうに袖の端をつかんで「ルイス…あのね…ありがとう」そして「へへ」と恥ずかしそうにはにかむと歩き始めた。
エリサとルイスはまだ人も歩いていない静かな街中を手を繋ぎ歩き始めた。
屋敷の少し手前まで送ってもらいルイスと別れると一人で隠れるようにコソコソと屋敷の中を確認するエリサ。
門番は居ないな…
よし!
しん…と静まり返った屋敷、エリサは誰にも気が付かれないように鍵をそろうっと開ける「カチャン」と静まり返った朝の屋敷に響く「これくらいの音なら大丈夫…」ゆっくりとドアを開けると「…?……ぇ…」バタバタバタと走ってくる音がした、「ヤバい」と思ったときにはもう遅く目の前には息を切らして走ってきたエレナちゃんがいる。
「はぁはぁ…」とりあえずエリサの姿を見て、怪我も何もなく普通にしていることを確認すると安心したようでそのままペタンとへたり込んでしまった。
「…ぅ…」気まずい。
でも、こんなに心配してくれていたんだ…
「ありがとうエレナちゃん」
エリサが嬉しくて泣きそうな気持ちを我慢しているところに「もおぅ、帰ってきたらただいまでしょ!?」エレナは頬を膨らませていた、やっぱりちょっと怒っているみたいだ。
「やっぱりごめんね…」
夜の警備はフールだったらしいのだが早起きをしたエレナちゃんとキッチンでお喋りをしていたら眠ってしまったらしい。エレナちゃんのお陰で他の人達には見つからず屋敷に入ることができて無事に朝食も作れた。
食事中は、いつの間にか帰っていたエリサを皆が不思議そうに見ていたが、そこは素知らぬ顔で朝食を済まして聞かれる前にかたずけてしまった。
しかし 、本当に恐れていたのはこの後だ。
エレナちゃんと二人きりになったところで部屋に連れて行かれて事情聴取が始まった。
あれやこれや聞かれることが多すぎて、でも頭も上げれず、すべて包み隠さず、洗いざらい正直に答えた。ただ…宿屋の中での出来事だけは話すことはできなかった。
一応別々の部屋で一夜を過ごしたと言っておいたが誤魔化せたのかどうかは定かではない。
それでも納得してくれたので無事に解放してもらえたものの、当分はエレナちゃんに頭が上がりそうもない…