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酒場のエリサ  作者: smile
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はじめての・・・お城

急遽参加することとなった舞踏会。

ここにきてめまぐるしく変化する毎日にエリサは気持ちを追いつかせる事だけで精一杯だ。

しかも度々調理の仕事を休むことになってしまうためエレナちゃんに迷惑をかけっぱなしなので余計に落ち着かない。


そして今日は午後からドレスを用意してもらう都合で初めてお城へ呼ばれて身体の採寸をすることになった。お城の中へ入るというだけでも緊張するのにヒソヒソと私の方を見ながら話す声が絶えず聞こえてくるのが辛い。

ルイス第三皇子の相手として呼ばれているため城内ではどんな女が来たのかと噂になっているらしい、誰かとすれ違うたび振り向かれ品定めをするような視線を向けられる。メイドも執事も衛兵も、誰もが同じだ。


そんな中でも唯一の救いだったのが私の送り迎えにラウラさんが付いてくれていることだ、大概はラウラさんのひと睨みで消えてくれるのでその都度ホッとする。


「ねぇラウラさん、本当に私なんかが舞踏会に出ても平気なのかな?」


「当たり前じゃないですか!」


ラウラさんは簡単そうに言うのだが周囲の反応と、この広くて煌びやかな城内を見ただけで物怖じしてしまう。



採寸をするための支度部屋に着くと一人の女性が待っていた。 エリサの世話を任されたメイド副長のアリエンヌは小柄で優しい笑顔で接してくれるのだが浴びせられる言葉には遠慮がない。


むしろ凹む…


「エリサさん!お腹周りもそうですけどこの脇はなんですか?全くだらしない!それとたるんだ二の腕も!」採寸をしながら、ここぞとばかりにエリサの身体をチェックし始める、肉つきのいい部分は摘んで罵声を浴びせられるのだ。そこまで言われるほど酷くないと思うのだが貴族の女性というのは美しさを求めるために妥協しないものなのだそうだ。

「もうっ!この背中のお肉まで摘むことができるじゃない、これじゃドレスの仕立て直しが大変だわ」

身体中採寸され、その度に駄目出しを受けるこの苦痛…


心が折れる…


その傍で面白そうにニヤニヤとしているラウラ「くふふ、エリサさんは毎日美味しいものを食べてますからね〜」


「ゔー」何か言い返そうと思ったが無駄な肉など全くついていないラウラさんには逆効果な気がして言うのを諦めた


ただアリエンヌがエリサの手を見た時だけは少し違った。


「この両手のあちこちにある傷跡は?」


「あ、私は、その…酒場を経営しているので調理中にナイフで切ったり火傷をしたり…みっともないですよね…」

アリエンヌはエリサの手を取りその手と顔を交互に見る、まだ新しい傷跡やもう一生消えないであろう火傷の跡、荒れた指先。

これで王子の恋人になろうというのだから我ながら恥ずかしくなる。


「…ええ、見た目は良くないですね…でも、これはあなたが懸命に生きている証拠!誇りなさい。・・・た・だ・し、この贅肉も懸命に落としなさい!!」


「ひぇ、努力します…」力なく返事を返すエリサ。






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