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酒場のエリサ  作者: smile
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ラージュ復興のために

エリサ達がバリエに到着して7日目、ルイスとバルサはついにラージュ復興のための試案と予算を算出することができた。かなり細かいところまで掘り下げて復興計画を作り上げたので納得させる自信はある。


ルイスとバルサはガッチリと握手を交わし笑いあう。

「ありがとうバルサ!」

「ああ、これでも一応領主だからな!」


「男同士の愛情は気持ち悪いです」突然、ノックもなく入ってくるラウラ。


「愛情じゃない、友情だ!」バルサが鼻息を荒くドヤ顔をする。


放っておいたら何かを熱く語り始めそうな勢いを感じたため「まぁどっちでも良いわ」と軽く一蹴しルイスの前に立つラウラ、いつものように上目使いに見上げる。

「ただいま戻りました。これが頼まれていた書類と、エリサさんからの恋文です」


「ああ、ありがとう」恋文という言葉を軽く聞き流し、書類に目を通すとエリサからの手紙を読む。

その淡々とした態度に少しイラッとするラウラ。

その手紙にはいつもと変わらず食事の内容やエレナとのやりとりなどが書かれている。いつもと変わらず元気に過ごしているのだと思い安心するルイス。


そんなルイスを見てラウラがさらに一歩近寄り不満げにルイスを見上げる。

「と・こ・ろ・で!いつまでエリサさんを放ったらかしにしておく気ですか?」


その言葉に怪訝な顔をするルイス「別に放ったらかしにしていないだろう、こうして手紙も毎日書いてる、今日の手紙だっていつもと変わらず楽しくしている様子が書かれてあるぞ!」


その言葉に「…はぁ」とかなり強い吐息を漏らすラウラ。「まさかここまでダメだとは思いませんでした…」

「良いですか?エリサさんが不満や悩みを手紙に書くような女性だと思っているんですか?」

「それにエリサさんはなんのためにバリエまで来たんですか?ただ料理して観光するだけですか?」


珍しく鼻息を荒くするラウラにたじろぐルイス。その隣でバルサが申し訳なさそうに頭を掻いた。


そうか、ラウラは実際にエリサさんに毎日会っている、手紙には書けないことを話したり想いのようなものを感じ取っているんだろう。俺も朝食で毎日顔を合わせていたのに…

「あ、すまないルイス。俺が集中してやり過ぎたせいで…」


状況を理解したバルサにラウラは冷たい視線を送ると小声だがワザと聞こえるように呟く。

「そうですね、こんなんだから27年間も独り身なんですよ、はぁ」


「オイ!勝手に変な設定を付け加えるな!」


「ということで・・・」ラウラはジッとルイスを見上げ少しためらった後一呼吸置くと「明日はお休みを頂きます!! 」


「なっ?」

「はぃ?」


「では、失礼します!」驚くルイスとバルサを無視するかのように立ち去ろうとするラウラ。


「ちょ、ちょっと待てラウラ!」部屋を出るラウラを慌てて引き止めるルイス。


「はい、なんでしょう?」いつにもなく真剣な表情でルイスを見るラウラ。


「……あ、いやなんでもない。ゆっくり休め」


「はい、ありがとうございますルイス様」





「なぁルイス、明日はどうするんだ?その…手紙、俺が持って行こうか?」


「いや、いい!明日は俺が自分で持って行く。多分ラウラが休みをくれと言ったのはそうしろということだろう」


「ああ、わかった。じゃぁ早いところ俺たちの仕事を終わらせちまおう!」


「ああ、そうだな」







……国王の間………


2人が持ってきた復興案に目を通すレミ第一皇子。その隣では現国王アルドフ三世が椅子にもたれかかり話を聞いている。

「ほぉう、バルサよ!これで良いのか?」書類に目をやりながら無表情で話すレミ。


「はい、私は独立した領主ではなくルイス第三皇子の代理としてラージュを治めたいと思います」


「そうだな…その方が支援は通りやすい、色々と都合が良いだろうしな…」今度は頬杖をつきながら書類とバルサを交互に見るレミ。


「はい、現状としてラージュの治安を維持しているのは未だ国王軍であります。このまま私が単独で領主になるという事は全ての兵士をバリエに帰すことになります。それと私の家の問題もありますのでその方が何かと都合が良いのです」



そうか…こいつはレミュール家の5男、長男はレミュール家を継いだとしても残りの3人の兄を差し置いて自分が領主になるのは争いの原因になりかねない。

ただでさえこいつは頭が良くて疎まれている。いや、だからこその提案か…

以外としたたかな男だな…

「なるほど…」と一言だけ言い書類に目を戻すレミ。


無表情で書類を見つめるレミに対してバルサは淡々と説明を始めた。

「では、まずラージュ復興について鍵となるのが漁の再開です。これは海に流れ出ている瓦礫の撤去さえ済めばすぐに再開できます。すでに新しい船や漁の網などの道具類はディベスから格安で支援してもらえるよう、すでに領主ヘルマン殿と交渉済みです。今もディベスでは新しい造船が進んでいるはずです」


「………」黙って耳を傾けているレミと国王。


「続けて交易がほとんどなくなっていたルヒアナ。こちらの領主アーロン殿とは今まで行商人任せの小さな交易しかできていなかったものを本格的に行うことになりました。そのために街道の整備を同時に進めたいと考えています。漁が再開されれば一番の取引相手となるはずです」


「………!?」話を聞きながら無表情で書類に目を向けていたレミのが一瞬驚きの顔に変わる。その変化に気がついたルイスとバルサは顔を合わせてニヤリと笑うとバルサがそのまま続けた。


「漁が再開した暁には、まずラージュが水揚げされた全ての魚介類を一旦買い取ります!」

そのまま黙って聞いているレミと国王。

「ラージュが全ての魚介類を買い取ることで今まで漁師たちが個別に売りさばいていた物の価格は統一され売れ残りも無くなります。まぁ組合のような物と思っていただければわかりやすいかと思います。もちろん一人当たりの漁獲上限は儲けるつもりですがそこはこれから漁師たちと話し合う必要があります」


「それをどう売りさばく?」初めて質問を投げかけるレミ。


「はい、ラージュの全ての飲食店は漁師から買うのではなくその組合からしか買えないようになります。そして魚を扱っていた商人達もその組合で引き取った魚を売っていただきます。」


「それでは価格が高騰するのでは?」


「いえ、これらは価格に上乗せを致しません。漁師から買い取った価格そのままで飲食店や商店に降ろします。」


「意味がわからんな、損をするだけか?」


「いえ、ラージュの漁業のレベルはかなり高いです、おそらく売りさばけない程水揚げされる筈です…しかし、幸いにもラージュには優れた料理人が沢山おります、我々はその料理人達に協力をしてもらい余った魚介類を干物やオイル漬けなどの加工品にしたり直営の飲食店を設営して利益を得ます」


「………」また無表情のまま耳を傾けるレミ。


「今回バリエに同行している料理人も優れた腕を持っております、レミ王子にも是非一度味わって頂きたいと考えております。

そして、加工品を作るための加工場ができればそこには雇用も生まれますし一旦加工のベースさえできれば仕事を退いた高齢者などでも働けます。他にも今まで通り貝などの装飾品も本格的に支援いたします」



………………


…………………


延々と復興のための案件と予算を述べるバルサ。その全てが的を得ており流石のレミ皇子も納得せざるえない内容となっていた。ただ、問題なのは提示される予算の額が半端ないことである。


「わかった、リュカと相談しよう!よろしいですかね!?父上」


「ああ、良いじゃろう…ただ…ルイス!お前は何もしゃべってないな!もう少し精進せい」


「う…は、はい」返事に詰まるルイス。

しかしそんなことはどうでも良かった、復興さえ進めば自分は何を言われようと関係ないのだ。





部屋を出ると大きくため息を吐き疲れた笑みを浮かべるルイスとバルサ。


「さぁ、ルイス!明日は自分のことをなんとかしろ、そっちは手伝うことは出来ないぞ」


「ああ、わかっている…ラウラにあれだけ言われたんだ、なんとかするさ…」


長い交渉を無事に終え疲れながらも満足そうな笑みを浮かべたルイスとバルサ。


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