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酒場のエリサ  作者: smile
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匂い

バリエに到着して5日目の午後。朝から天気が良く穏やかな風が吹き、とても気持ちの良い1日だ、ルイスは書斎の窓を全部開け、部屋の入り口のドアも開けっ放しにしたままバルサと一緒に書類をまとめている。


集中しているらしく部屋前の通路を人が通っても気になっていない様子だ。

それどころか、しばらく入り口にラウラが立っているのだが2人とも気がつかないでいる。

「コンコン!郵便で〜す」しばらく入り口に立ち2人の作業を見ていたが全く気がつく気配が無いので、開けっ放しにしているドアをノックしぶっきら棒に喋るラウラ。


「……」

「…?…あ、ああ、ラウラか」


かなり集中していたらしくルイスは顔を上げると一息つき額に滲む汗を手で拭った。バルサは背筋を伸ばし大きく深呼吸をする。


「は〜い、お使い終わりましたよ〜」そう言うと頼まれていた買い物とエリサからの手紙を机の上に置くラウラ。


「ああ、すまんな」ルイスは頼んでいた買い物をチェックするとすぐに手紙の封を開けた。

「……?」封を開けると中から甘い香りがするので不思議そうな顔をするルイス。そして封の中から手紙を取り出すとラベンダーの花びらが数枚一緒に出てきてヒラヒラと机の上に落ちる。


へぇ〜……感心したようにラウラがそれを見つめる。


「…………」ルイスはそのまま手紙を読み終えるとその手紙の匂いを嗅いだ。ラベンダーの甘い香りが疲れた気持ちを落ち着かせてくれるようで、肩の力が抜けていく。


「・・・・ルイス様もそういう趣味があるんですか?」手紙の匂いを嗅いでいるルイスを変な眼差しで見つめるラウラ。


「っな!?あ、いや…」無意識にとった自分の行動が急に恥ずかしくなり、うろたえるルイス。


「ふ〜〜ん、で?何か良い事でも書いてありましたかぁ?」いつものように上目遣いに詰め寄るラウラ。


「い、いや、昨日の食事や一緒に働いているエレナって娘のことだ」


「な〜〜んだ」他愛も無い内容につまらなそうなラウラ。


「でも、お前の事も書いてあるぞ!」


「はぁ!?どーして私が出てくるんですか?」


「ああ、妹みたいで可愛いって」


「ぇえ?ちょっと、私の方が年上なんですけど!!!」恥ずかしそうに手紙を取ろうとするがルイスが素早く後ろに隠す。「ちょっと見せてください!」


「おい、こら!お前こそ人の手紙を見ようなんて趣味が悪いぞ!」


「……ぶーー!」そう言われ頬を膨らませ諦めきれないといったところだったが急に他のことを思い出す。

「あ、そうだ、これどうぞ!」


「ん?なんだ?」


「お・ね・え・さ・ま、からのプレゼントです」どこか腑に落ちない感じが残っているが開き直り力強く言った。


それはエリサから預かっていたクッキーの入った袋だ、ルイスは袋を開けるとすぐに1つ取り出し口に放り込む。

「お、うまい!、おいバルサ!お前も食え!」


「へぇ〜こんなものまで作れるんですね」バルサは感心しながら1つ口に入れる。

「っ!本当にうまいですね」予想外に美味しくすぐにもう1つ口に入れる。


「じゃ、また何かあれば呼んでくださいね」

用件もすみ一休みしようと思い部屋を出ようとするラウラを呼び止めるルイス。

「あ、おいお前も食わないか?うまいぞ」


「ふふふ、私の分はちゃんとありますので」振り向きざまエリサからもらったもう1つの袋を自慢げに見せるラウラ、しかもバルサに向かって良く見えるように。


「俺の分は無いのか…」それを見てバルサは自分のクッキーだけないことに少し落ち込んだ。

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