表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
酒場のエリサ  作者: smile
63/117

再会3


「ねぇエレナちゃん、なんかみんな慌ただしくしているみたいだけど何かあったのかしら?」


「そういえば、さっきから走る音が聞こえますね。 ………わたし、ちょっと見てきます」


「うん、お願い」



朝食の準備をしていると急に屋敷の中が騒がしくなっていることに気がつくエリサとエレナ。不思議に思いエレナがキッチンを出ると何故か殆どの兵士が集まって話をしている。そのとき、ちょうどアランが通りかかったので呼び止めた。

「あのぅアランさん何かあったのでしょうか?」


「あ、なな、何かなんてじゃなくて、で、で、で殿下がいらっしゃっているんだ!」


「デデンカ様??…」


「あ、エレナさ〜ん、応接間にお茶を運んでもらえますかぁ?とぉっても良いやつを2つエリサさんに持ってきてもらうようにお願いします〜」エレナに気がついたカロンが離れたところから大きな声で言っている。


「あ、はい!」エレナもこの雰囲気はただ事ではないと思い大きな声で返事をした。


すでにアランはどこかへ行ってしまい、他の兵士も慌ただしくしている。皆が剣や槍、それに弓を持ち物々しい雰囲気になっていた。

「はぁ、なんだか凄い人が来ているのかしら?…」




「エリサさん、お客様が来ているみたいで、とぉっても良いお茶を2つ持ってきてほしいそうです」


「こんな早くから大変だね、領主様って!」エリサが調理をしながら他人事のように話す。


「そうですね、でも皆さん慌てていましたので凄い人なんじゃないでしょうか?」


「うん、そうだね、急いで用意しようかエレナちゃん!」


「あ、それとエリサさんに持ってきて欲しいそうです」


「え?私が?」


「はい、エリサさんに持ってきてもらうようにってカロンさんが」


「はぁ、私こんな格好だけど良いのかしら?」エリサが汚れたサロンをつまみ上げ困った顔をする。



困りながらも仕方がなくサロンと帽子だけは外して、一番高価な紅茶を用意した。紅茶の淹れ方は単純だ、沸騰したお湯を勢いよく注ぎ入れるだけで良い、蒸らしなどしないほうが香りがよくて美味しいのだ。


ただ、茶葉は入れっぱなしにしておくとどんどん濃くて渋くなってしまうのでちょうど良い濃さで茶葉を濾してポットに移し、冷めないように布を被せて保温する。もちろんティーカップも温めておく。


「うん、良い香り!」淹れた紅茶の香りを確認してカップと一緒にお盆に乗せる、一応砂糖とミルクも用意した。「それじゃぁ行ってくるわね」


「はい、あとは準備しておきますので」


朝食の準備はエレナに任せることにし、キッチンを出て応接間に向かうと途中にカロンが立っており何故か一緒に歩き始めた。

「すいませんねぇエリサさん、忙しいところを」いつにも増してニヤニヤとしているカロンを不思議に思いながらもそのまま進むエリサ。

「いえ、これも私の仕事ですから。しかし私なんかが運んで宜しいのですか?」


「はい〜、エリサさんがいいのです」


「?…」不思議に思いながらも応接間が近づくとドアが開いており、入り口に人影が見える。

あれ?あれって…「…ラウラ…さん?…」


エリサがラウラに気がつくとラウラも気がつきエリサと目が合う。ラウラはニヤっと笑みを浮かべると何事もなかったように部屋から出てエリサが通るために通路の端へと移動した。


なんだ、偉い人ってラウラさんの事か!昨日は仲良くできたから私にお願いしたのかな。


「あ、ラウラさんおはようございます!お客様ってラウラさんだったんですね」


「昨日はごちそうさま、エリサさん。さ、中へどうぞ」ラウラは部屋の中に聞こえないよう小声で挨拶を交わし端によけたままエリサを部屋の中へ進ませる。


「え?、あ、紅茶を淹れたんですけど…」


「はい、ですから中へ」


どうして自分が先に進められるのかわからないまま入り口に進むエリサ。

ドアが開いたままなのでノックもせずそのまま入ろうとしたとき、賑やかに話す声が聞こえてきた。『あれ?』と思うのもつかの間、部屋の中を見た瞬間、応接間に二人いることに気がつく。その後ろ姿に驚き立ち止まるエリサ。それと同時に全身に電流が流れたかのようにビクッとし、動けなくなってしまうエリサ。


そしてバルサさんと目が合った


でも声も出ない


見間違えることなんてないこの後ろ姿。


「……………」身体を震わせ口をパクパクとし、身体の力が抜けていくような気がした。


「……ぁ……」持っていた紅茶を落としそうになったがラウラが素早く後ろから手を伸ばし受け止める。


ふぅ、あっぶない…そんなに驚くとは…

紅茶の乗ったお盆を持ったままラウラが顔を見上げるとエリサは呆然と立ち尽くしている。

くすっ…エリサさんもダメダメなんだっけ…

ラウラはそう思うと静かにドアを『トントン』と二回叩いた。


開けている応接間の窓からは湿った空気が調理中の甘いスープの香りと一緒に部屋の中へと入り込む。

そしてドアを叩く音に気がつき盛り上がっている話の途中でルイスが振り向く。


「……」


「……」


「エ、リサ?」


「…うん」








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ