再会2
「よし行くぞラウラ」朝早くから気合の入るルイス。
「は〜い」
「ところでラージュの屋敷ってどこにあるんだ?」
「………本気で言ってますか?」信じられないと言った顔をするラウラ。
「ん?ぃや…すまん…」
「はぁ、相変わらずダメダメなんですから…」
「このまま南に向かってバーレ通りを右に曲がってまっすぐ進んで下級兵士の宿舎の先を左に曲がってすぐです、以外と近いですよ…はぁ」
小雨の降る中、頭から全身を覆うようなフードを被り馬に乗るルイスとラウラ。仕方がなくラウラが先を走る事になった。
バリエの街は朝早くから人で溢れ、雨が降っていても道には多くの人が歩いている。そんな人混みの中でも王族直属の騎士が通るとなれば自然と道が開けられ馬はゆっくりと道の真ん中を進む。ルイスはフードを深く被り顔を隠しているので誰も王子だとは気がつかない。
くふふ…もうすぐだわ!ルイスさまはどんな顔をするのかしら? くぅ〜…はやく、早く、エリサさんに合わせてみたい!
ニヤつくラウラにすれ違う町民は不思議な表情を見せるが後ろにいるルイスにはそれがわからない。
人混みを抜けしばらくすると屋敷が見えてきた。門前には兵士が警備のため出ているのですぐにわかる。
屋敷の前で止まるとフードを被っているためルイスとラウラだと気がつかない様子でアルミンとフールが持っている槍を構えた。
「何か御用でしょうか?」
「ん〜?」ラウラがフードを少しだけずらしアルミンを睨みつける。
「んげっ!!」
「ら、ラ、ラウラさま…失礼いたしました」
「で、では…そ、そちらは……?」恐る恐るラウラの後ろにいるもう一人の顔を覗き込むようにするアルミン。
「よう!久しぶりだな、元気そうで良かった!」
「ひ、ひゃぇ!………でで、殿下!…し、しつ、失礼いたしました」
「おう、バルサに会いに来た。会わせてくれ!」
「は、はい、ただいま!」
慌ててアルミンはバルサを呼びに行き、フールは馬を預かる。
アルミンと入れ替わりにルークがすぐさま外へ出てきてルイス達に挨拶をする。
「ルイス様お久しぶりでございます」
「ああ、ルークも元気そうだな!」
「はっ!もったいないお言葉、ありがとうございます!さぁ、濡れてしまいます早く中へ」
「ああ、ありがとう。でもまぁ、そう固くなるな、それに皆も変わりなさそうだな」
そのまま屋敷の中へ入るルイスとラウラ、そのとき甘く美味しそうな匂いに思わず立ち止まる。
ん?朝食か?良い匂いだな……なんだか懐かしいような匂いだが…
「はい、無事にバリエに戻って参りました。しかし、今日は殿下の所へ参ろうとバルサ様と話をしていたのに、まさか殿下がいらっしゃるとは驚きました」
「あ、ああ、早くバルサに会いたくてな。我慢できなくて来てしまった」
そのままルイスは屋敷の応接間に案内されラウラは護衛という任務中のため部屋の入り口に立ち警備にあたる。いきなりの訪問に兵士達は慌てて、まだ寝ている兵士も全て叩き起こされた。
屋敷は急遽、厳戒態勢となり屋敷の外も中も至る所で警備が強化された。
「そういえばラウラ、お前、アルミンのこと苦手なのか?思いっきり睨んでいただろう?」応接間に着くとルイスが話し始めた。
「ん?ぁあ、あのキツネ目のヤツですか?まぁ苦手というか…もうすぐルイス様にもわかりますよ!」
「?あいつは意外と真面目で純粋な奴だぞ!そう毛嫌うなよ」
「は〜い」そっけなくラウラが返事をすると、そこに慌ててバルサが入ってきた。
「ルイス!久しぶりだな」
「おお、バルサ!!待っていたぞ!」
久しぶりの再会に拳と拳をぶつけて挨拶を交わす、意外と強めにぶつけ合うので「ゴッ」っという鈍い音がする。そんな子供のような挨拶を鼻で笑うラウラ。
「バルサ、悪いんだが直ぐにでも城へ来てくれ!見てもらいたい書類が山程あるんだ」
「ああ、わかってる!でもまぁ少し待て。お前にラージュから土産を持ってきたんだ」
そう言うとニヤリと笑うバルサとラウラ
「ん?なんだ? 」
「まぁそう急かすなよ!話したいことが沢山あるんだ」
「ああ、俺もだ!昨日なんて親父と兄貴に……」
二人が話しに盛り上がり始めたときにラウラが再びニヤと笑いバルサに目配せを送るとスッと静かに部屋から出た。