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酒場のエリサ  作者: smile
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ラウラ

馬車も無事に直り改めてバリエに向かうことになったエリサ達。陽はほぼ真上から地上を照らし暑さは厳しさを増していく一方だ。


しかも何故か一緒に荷馬車に乗っているラウラを不思議に思いながらの出発となった。


「エレナちゃん、以外と時間を取られちゃったからもうすぐお昼だね!今のうちに準備しておこう」


「あ、はい」


揺れる荷馬車の中での作業はかなり慣れてきた、初めの頃は話をするだけで舌を噛みそうになったものだが今は揺れる状態でも気を付ければ食器や食材の準備ができる。


荷馬車が『ガコン、ガコン』と時折激しく揺れるたびに座っているラウラが跳ね上がる。

「あはは〜なんか楽し〜〜い!まるでジャガイモにでもなった気分だわ!」昼食の準備している二人の前でラウラが子供のようにはしゃいでいるができるだけ気にしないようにする二人。しかしそんなことは御構い無しにラウラは話しかけてくる。

「ねぇエリサさん、お昼は何を作るんですかぁ?」


「え、えぇっと…ベルニの村でバジルを沢山頂いたのでそれを使ってパスタにしようかと…」


「わぁ〜、楽しみぃ〜!私、ずう〜〜〜っとエリサさんの料理を食べたかったんですよ」ラウラは馬車の揺れに合わせてポヨン、ポヨンと跳ねながら終始笑顔で楽しそうにしている。しかも食べる気満々だ。


「あ、あ…はい」ラウラを人数に数えていなかったので思わず生乾きな返事をするエリサ。


「くふっ…帰ったらルイス様に自慢してやろう…」ルイスと言う言葉に思わず反応してしまいラウラを見るといたずらな笑みを浮かべていた。


無邪気で楽しそうにしているラウラを改めてよく見るエリサ。そしてなんとも言えないモヤモヤした気持ちが込み上げてきてしまった。


あ……やっぱりというか、今までラウラさんの変な行動と言動ばかり気になっていたけど……けっこう…いや…かなり…


カワイイ!!



「あ、ラウラさん…って歳はいくつなんですか?」お昼の準備をしながら話すエリサ。


「はい、25です!ルイス様と一緒ですよ」揺れる荷馬車が楽しいのか笑顔で答えるラウラ。


「え?」それは予想外の年齢だった、見た目はどう考えても20前後、さらにこの子供のような性格、作業の手が止まった。

「あ…ルイスの護衛をしているって言っていたけどいつから?」エリサが少し戸惑いながらラウラに質問をする。


その微妙な表情にラウラも気がつき少し間を置いた。そのあとエリサを見て「くすっ」と渇いた笑みを浮かべた。

「安心して平気ですよ。エリサさんの思っているような関係はありませんから!」


「っ!…」ラウラの言葉と同時にエリサの顔が真っ赤になった、服を着ているからわからないだけで身体中の血が噴き出すんじゃないかと思うくらい、恥ずかしくて身体が熱くなった。


……見透かされた……恥ずかしい……いや、そもそも私、無意識だった。護衛という仕事柄ルイスの側に四六時中いるラウラに嫉妬した!!


会話の意味がわからずエレナはキョトンとしているがエリサは恥ずかしくてうつむいてしまった。そんなエリサを見てラウラは続けた。


「私がルイス様の護衛を始めたのは今から5年前位かな…。ここから北、このファルネシオ国とグライアス国の間にトランタニエという小さな国があったの」


エリサとエレナは聞いたことのあるその名前にハッとする。

「たしか…その国って…」


「ええ、5年前に滅んだわ」


当時ラージュでも話題になった話だ、現在この大陸の大半はこのファルネシオ国が治めている、しかしその北には3つの国があった。最北に強大な軍事力を持つグライアス国とその間にある小さな国、トランタニエ。

そしてそのトランタニエ国の同盟国で、北西の海峡の先にあるのが、かつてこの大陸全土を平定していたというウィルベルム国


小さいとはいえ1つの国が滅んだのだ、当時は様々な噂が流れた。大きな戦争が始まるとか、ラージュからも男性は徴兵されて戦地に連れて行かれる、戦争のため税は倍以上に上がるなど。

………しかし戦争は起こらず平和な日々が続くとそんな遠くの国で起こった出来事など忘れてしまう。


「私はそのトランタニエの生き残り。なんの縁かわからないけど私達はお人好しなルイス様に命を救われたわ……まぁ、その恩返しという訳でもないけどルイス様に仕えることにしたの。それからは私達の命はルイス様のもの……まぁそんなところです!」時折真剣な表情を見せながらも終始笑顔で、しかも荷馬車の揺れに合わせてポヨンポヨンと跳ねながら冗談のように話をした。「気が向いたらまた昔話でもするわ」


「あ、はい……」予想外で少し驚いた。ラージュしか知らないエリサにとって遠くの国で起こった出来事が少し身近かに感じている。でも…「え? あの…さっき私達って?」


「ええ、他にも助けられた仲間がいるわよ!みんなバリエでルイスさまに仕えているわ」


「……」ラウラのような人間が他にもいるのかと考えただけで不安なような頼もしいような複雑な気持ちになった。


「あ、でもぉ…この命はルイスさまのものですからぁ、もしもぉ…求められたら拒みませんけどねぇ」ラウラがそれまでとは変わりいたずらな笑み浮かべ、指を甘噛みしながらエリサを見つめると言葉を失うエリサ。


「…っ…」


「あはははは、だいじょぉ〜ぶですよ!エリサさん!そんなことはぜぇったいにありませんから!」


「うぅ〜〜」いいようにからかわれ言葉を失うエリサ。エレナも少し困った顔をしている。



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