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酒場のエリサ  作者: smile
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コンクスの町へ!

今朝は濃い霧が立ち込める中の出発となった、次の町はコンクスだ。


日が変わり気温が上がり昨夜の気温差と湖の影響だろう、街は白い濃霧に包まれてまるで夢の中の世界を見ているようだ。

毎日変わる新しい景色は忙しい仕事を忘れさせエリサ達の気持ちに彩りを与えてくれている。


「皆さん、足元に気をつけて進みましょう! 陽が昇れば霧も晴れます。行きましょう次の街はコンクスです」バルサの合図で馬車は進み始めた。



ロジャックの町を後にして再び山道に入る頃になると陽も昇り、濃かった霧も徐々に晴れてきていた。


天気が良いこともあり順調に進む一行。


陽が完全に登る頃には、エリサ達の頭上には雲ひとつない夏を感じさせる真っ青な空が広がっている。

午後になると気温はさらに上がり、照りつける日差しは強く、刺すように暑い。次の町に進むにつれ標高も低くなると次第に気温と湿度も高まっていく。

何もしていなくても息苦しくなるような暑さに皆辛い顔を見せ始めていた。



「エレナちゃん大丈夫?」荷馬車の中で陽射しは遮られているものの蒸されるような暑さに辛そうな表情を隠せないエレナ。


「はい、大丈夫です。しかし今日は急に暑くなりましたね…」エレナは小さな板で団扇のように扇いでいる。


「ええ、ラージュのように海風が吹けばまだ気持ちがいいのだけど…」暑いのでエリサは下ろしていた髪を束ね上げながら話す。


長かった山路も終わり、ここからは平坦な道のりが続く。確実にファルネシオ国の中心に近づいていると実感できるような景色だ。

エリサは荷馬車の後ろから外を眺め『遠くまで来たなぁ…』とぼんやりと思っていた。

次の町コンクスを過ぎたらバリエはもうすぐだ。


「次の町はどんなところでしょうね?」エレナはいつものように次の町の話をして暑さをまぎらわそうと思った。


「次はコンクスね…… 聖地パステラへ続く南からの巡礼路の始まりで、巡礼者の集まる町と言われてるそうよ…」

エリサは何やら詳しく淡々と話た。

予想外だった、エレナは今までのエリサなら「美味しい食べ物あるかな〜?」などと話が盛り上がると思っていたからだ。ぼんやりと外を眺めているエリサを見て不思議に思うエレナ。


「あ、あの、エリサさんはコンクスについて詳しいのですか?」


「え? あ、いや昔ね、おじいちゃんに良く聞かされていたの、聖地のことや巡礼路のことも…熱心な教会信者だったから…」


「そういえばエリサさんのミドルネームの『エル』は洗礼名ですか? エリサさんは洗礼を受けているんですよね、その…私はあまり信仰心がないもので…」エレナは申し訳なさそうな顔をしている。


「あ、うん、おじいちゃんの影響でね、でも今は私もそんなに…… 特に礼拝とかもいかないしね」


「そうなんですか、エルは何かの頭文字ですか?例えばルイーゼとか?」


「いえ、このままのエルよ、なんだかおじいちゃんの故郷では由緒ある名前らしくて7歳の洗礼の時に「この名に恥じぬ誇り高き女性となりなさい…」って言われたの、漁師の娘に誇り高き女性って言われてもねぇ⁉︎」エリサは昔を懐かしむように亡くなった家族のことを思い出していた。


洗礼名は教会の神父がつけることになっているが主に亡くなった先祖の名前をつけることが多い。それは今の自分がこうして生きているのは亡きご先祖さまが生きた証という意味があると言う。


…私の洗礼名エルも昔生きていたご先祖さまの名前なのだろう。会ったこともなければどんな人なのかも知らないご先祖さま、もっとおじいちゃんに聞いておけば良かったなぁ。

もし私に子供ができたらお母さんやお父さん、おじいちゃんの名前を洗礼名にする事もあるのかぁ!?なんか変な感じだなぁ…



その表情は懐かしみとも悲しみとも違って見えた。



そう言えば洗礼の日におじいちゃんから髪飾りを貰ったっけ…おじいちゃんのご先祖様のものとか言っていたかな…

確か…鳥?のような形をしていたんだっけ…なんだか地味で古臭い髪飾りだったけど…


ああ、あれも燃えちゃったんだ…


私がコンクスの町に行ったなんて言ったらどんな顔をするかな…

ふふ、『なぜそのまま聖地に行かなかった!』なんて言いそうだ。


エリサは幼い頃に祖父から聞かされていた町に行くことを躊躇するような不思議な感覚に襲われていた。



「この先に開けた河原があります、今日はそこで野営になりますのでお願いいたします!」兵士の一人ルークが私達に夕食の準備にお願いに来た。


「はい!」エリサとエレナは声を揃えて返事をした。




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