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酒場のエリサ  作者: smile
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ロジャックの市場へ

昼食を済ませるとエリサ達はいてもたってもいられず、昼寝をしたそうにしている兵士さんを捕まえて街中へ出ることにした。

皆、エリサの料理を楽しみにしているのだから素直に馬車を出してくれるので助かる。


外は陽が高く昇り夏の強い日差しが照りつけている。しかしここは湖と山に挟まれた別荘地、街には涼しい風が吹きぬけていて心地よい陽気だ。

エリサが外へ出た瞬間、高原の爽やかな風がエリサの頬をなでるように優しく吹き抜ける。早く外へ出て正解だったと思わせる。

「ん〜…気持ちいねぇ、エレナちゃん」今という瞬間を全身で全力で味わうようにエリサは気持ち良さそうに優しく微笑んでいる。


「はい!」そんなエリサを見て何故だかエレナも嬉しくなった。


「本当に…気持ちの良い天気ですねぇ〜、では早速市場に行きましょうかぁ」快く馬車を出してくれた兵士のカロンも気持ち良さそうにしている、すでに馬車に乗り準備万端の様子だ。


カロンは兵士の中では一番おっとりしている。物腰も穏やかで間の抜けたようにのんびりとした口調は一緒にいると穏やかな雰囲気にさせてくれる。これで剣の腕前は兵の中で一二を争う程らしいから信じられない。そんな腕前を見ないで済むことを祈るばかりだ。


呑気に鼻歌を歌うカロンと共に馬車は昨夜通った湖畔の通りをゆっくりと進む。エリサが街並みをゆっくり見たいと言ったら「はい〜」と一言だけ返事をして馬車を出したのだ。

エリサ達は買い出しの時だけは荷台ではなく前の座席に座ることができる、二人はカロンの脇に腰掛けこれからピクニックにでも出かけるかのようなはしゃぎっぷりだ。


昨夜、薄暗い中で見た可愛らしい街並みは昼間の太陽に照らされてキラキラと輝いている。エリサの想像以上に美しい街だ。

湖畔に沿って続く大通りは綺麗な石畳が敷かれていて、その脇には楓の木が立ち並んでいる。昨夜は気がつかなかったが建物は様々な造りのものがある。ルヒアナのように石壁で作られた家があるかと思うと土壁の建物や木造の建物もある。しかもどの家も可愛らしくオシャレな家ばかりだ。

エリサ達が不思議そうに見ているとカロンがそれに気がつき鼻歌を止めて話し始めた。

「この街はですね〜、色んな地域の貴族さん達がこぞって別荘を建てるんですよ〜、でもって色んな地域の建築様式がこの街に入ってきたんでねぇ、ですからこの街の人達は数ある建築様式から選べるものだからこだわる人達がおおいんですわ〜、どの家もオシャレでしょう〜?」


「へぇ〜カロンさん、詳しいですね?」まさかカロンさんが答えてくれるとは思っていなかったのでエリサは嬉しそうに言った。


「はい〜、この街には護衛とかで、良く来ますからねぇ」カロンは前を見たまま答える。カロンの目は目尻が垂れていて細いのでどこを見ているのか、そもそも開いているのかさえわからないが多分前を見ているように感じる。


「それじゃぁこの街はいつも人は少なくてこんな殺風景な感じなんですか?」エリサはカロンが以外と詳しそうなので疑問に思っていることを聞いてみた。


「ああぁ…今は丁度夏になったばかりで季節の変わり目ですからねぇ…この街は春夏秋冬、季節ごとに大きなお祭りがありましてその前後は物凄い人で溢れかえってますよ〜〜!特にこれから夏が本番になると暑いバリエを避けるようにここロジャックで過ごす貴族が増えますから、あと10日もすればどんどん賑やかになりますよ〜」カロンは馬車を走らせながら淡々とそしてのんびりと話しをした。


「お祭りだってエレナちゃん!見たいねぇ!?」エリサは疑問が次々と解決される嬉しさとまだ見ぬお祭りを想像し興奮気味になってきた。


「お祭りですかぁ、良いですね!私も見たいです。 でもまだ先なんですよね?」エレナも目を輝かせてエリサと盛り上がっている。


「たぶんラージュに戻る頃はお祭りの最後のほうなので、もしかしたら見れるかもしれませんよぉ」カロンが楽しそうな二人につられ笑顔でこたえた。


「本当ですかぁ?」エリサとエレナは『見れるかもしれない』というカロンの言葉に嬉しくなり、ほぼ同時に言葉を発した。その二人の表情が面白かったらしくカロンは「ははは」と苦笑いを浮かべていた。



市場に到着すると町の大きさの割に以外と広いことに驚く。しかしカロンが言っていたように丁度季節の変わりめなためか人が少なく、置いてある品数も少ない。


「これじゃぁ選べないですね…」エレナが残念そうな顔をしながらエリサの後をついて歩く。


「うん、あるものを買うしかないわね…」エリサもあまりにも品数が少ないことに予想外で拍子抜けした感じだ。

「とりあえず次の町までの食材を確保することが先だね…」


「はい、でもほとんど乾物ばかりですね…」


「ええ、でも仕方ないわ。他に何かあるか一応聞いてみましょうか?」市場を一回りしたがどこの店もほとんど売り物が残っていなかった不安と残念な表情の入り混じった顔で悩むエリサ。

「あの、湖で獲れた魚とかは置いていないのでしょうか?」エリサは魚屋さんらしき人を見つけて尋ねることにした。


「ん?あんたらは…どこかの貴族さんの料理番かい? すまねぇな、この時期は魚は少なくてよぉ、午前中で売れちまったよ」商人の男はエリサ達の後ろに兵士のカロンさんがいるのを見て観光客ではないと直ぐにわかったらしい。


「あ、はい…あの…私達ラージュから来たんです。これからバリエに行く途中で次のコンクスの町までの食材を仕入れに来たのですがほとんど無いので困ってしまって……… 私達は明日の朝出るので今夜はロジャックの新鮮な魚を料理しようと思ったのですけど…… 仕方ないですね…」エリサが辺りを見回しても何も無さそうなので残念そうな顔をする。


「………‥ 」

「ネェちゃんよぉラージュから来たってこたぁ魚料理は得意かい?港町だろう?」商人の男はしばらく考えてから聞いてきた。


「あ、はい、得意というか作り慣れているというか…」エリサは商人のおじさんの質問の真意がわからず少し戸惑っている。


「今夜は家でも魚を食べようと思っててな、売り物以外にとってあるんだが…」商人はそう言うと奥から桶に入った魚を持ってきた。「俺ん家は大家族だかんな、これくらいあればおたくらも足りるだろう!?」持ってきた桶には大きなマスと川海老がたくさん入っている。


「良いんですかぁ?」予想外のラッキーにエリサとエレナは前のめりになって目を輝かせた。


「その代わりと言っちゃぁなんだがな……その…なんだ、何か旨い料理の仕方を教えてくれねぇか?」商人のおじさんは少し照れくさそうに視線をそらした。


「はぃ…?」


「いや、俺たちは魚を獲るのはプロだがよぉ……その…料理は素人だ、いつも塩焼きか唐揚げくらいしかしないもんでな、たまに変わった調理をしようものなら旨くなくてみんな残しちまう。 飽きるってわけじゃ無いんだが…何か旨い食い方がないかって考えてたところだったんだよ!」


「……はい! そう言うことでしたら喜んで」









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