新たな始まり
あれからラウラさんに会っていない。ルイスが居なくなったことでひとまずミレーユ様の配下として配属されたと聞いている。
「忙しいのかな?」
エリサはサヨナラとありがとうをもう一度ちゃんと伝えたいと思っていた。このバリエで一番お世話になった人だから…
しかしバルサさんに聞いても最近は会っていないらしい。買い物の時にヘルトさんにも聞いたが会っていないという。
もう会えないのだろうか?
残念な気持ちで後ろ髪を引かれる思いのなか、バリエにあるラージュの屋敷では出立のための馬車が用意されていた。
帰りはバルサさんにカルロス、ルーク、アラン、クロード、アルミン。
それと…エレナちゃんとルイスだ。
「さぁ皆さん準備は良いですね!?」バルサが最後の確認を取る。これからラージュまでの長い旅路には慣れてきているためか余裕が感じられる。人数が少ないのでエリサ達の負担は楽になるのだが野党などに襲われる可能性には若干の不安がある。何より元とはいえ王族であったルイスまで一緒なのだ。
そんな不安を打ち消すように少し大きめの声で「はい」と返事をするエリサ。
見送りのためにカロンさんや一緒にバリエまで来た騎士のみんなが来てくれた。さらにヘルトさんやフェイルさん達も来てくれたのだがやはりラウラの姿だけはどこにも無かった…
誰もがルイスとの別れを惜しんでおり、その人望が手に取るように伝わってくる。私は申し訳ない気持ちでいっぱいだ…
「エリサちゃん、ルイちゃんのことよろしくねっ!」フェイルは仕事明けなため、まだ顔を紅色に染めほろ酔いな感じだ。
「あ、はい…」改めて言われると恥ずかしいもので顔を赤らめるエリサ「あ、あの、これからみなさんはどうなるんですか?」フェイル達はルイスに直接支えてきた者たちだ、ラウラのようにファルネシオ国の騎士という立場とは違う。
「ん?私達はこのままよ〜!私はもともと毎日お酒が飲める生活ができればそれで幸せなの、だから何にも変わらないわ。それに私達はルイス様に忠誠は誓ったけどファルネシオ国に忠誠を誓った覚えはない。だから何かあったら呼んでね!すぐにラージュまで駆けつけるから」
「あ、あの…ラウラさんは、どうしてますか?」
「あぁ、ラウラちゃんのこともよろしくね〜〜!!」ニンマリと大きな口を広げ顔を近づけるフェイル
「え?よろしくってどういう?」
「ここにいないってことはちょっと恥ずかしいのかもね。今度は彼女が夢を叶える番なの!だから帰り道のどこかで待っていると思うから会ったらよろしくね!」再びニンマリと笑うフェイル、少しお酒の匂いがする。
………◇…………
朝も早いため街は静かで人も少ない。エリサ達を乗せた馬車はゆっくりと名残惜しむようにバリエの街並みを抜けていく。
荷馬車の荷台には使用人扱いになったルイスがいた。
エリサは一緒にいられて嬉しそうにしているがエレナにとっては未だに恐縮する存在であることに変わりはない。
揺れる荷馬車の隅で様子を伺いながら緊張するエレナ。
……どうしよう、どうしよう?ルイス様が目の前にいる…何かお飲物でも?いやこの揺れる荷馬車だ、何か座りごこちの良いもの?いや、う〜
「?」ひとりであたふたしているエレナを不思議そうに見るエリサとルイス。
長いバリエでの滞在を終えラージュへと出発した。