別れ
ルイスへ
……
何から書いたらいいかな?
最近は色々なことを考えます、ルイスのこと、ラウラさん、バルサさん、バリエで出会ったたくさんの人達、いま、一緒に旅をして来たエレナちゃんに騎士の皆さん
そしてラージュの人達
ラージュを出たことのなかった私にとって毎日が刺激的でした。でもちょっと疲れたかな…
明日、私達はラージュに帰ります。今までラージュを出たことのなかった私がバリエにまでこれたことにとても感謝をしています。少しだけ予想外の出来事が多かったですがいつの日か笑って話せる時が来るのかなとも思っています。
ここバリエでルイスは私に最高の幸せを与えてくれました。
もしかしたらラージュにはもう帰らないかもしれない、そんなことを考えたこともありました。でも今は違う。私はこれからラージュに帰り酒場の再開を目標にします。
しばらくはディベスで生活することになると思いますがそれでも私はラージュで生活がしたい。
私が生まれて育った街、そしてルイスに出会えた街。私にとってかけがえのない所です。そこには私を待ってくれている人達がいる。
ルイス…
本当にありがとう。
そして
さようなら
もう、手紙は出しません
もう、二度と会いません
でも、愛してます。私を好きだと言ってくれて幸せでした、本当に今までありがとう。
エリサ
…………
朝早く珍しくバルサが手紙を持ってルイスの所へやってきた。エリサに頼まれてこの手紙を預かったという。
「最悪だ…」ルイスは顔に手を当てそのまま力なく近くの椅子にもたれかかるように座った。
このルイスの反応を見るだけでよくない事が書いてあるということは容易に判断できる。案の定ルイスは項垂れたまま黙り込んでしまっている。バルサが声をかけても返事すらしない。
しばらくするとルイスは無言のままバルサの方へ手紙をずらす。バルサとラウラはゆっくりと近づきその手紙を見る。
「やっぱり…」想像通りの最悪な内容にバルサはそれ以上声をかける事が出来なくなった。
しかしエリサの先走った行動にラウラは軽く舌打ちをした。
全てが終わったような雰囲気を醸し出すルイス。おかげで部屋の中はしばらく暗い雰囲気が漂い誰も口を開こうとはしなかった。
そんな中ラウラは険しい表情を見せながらルイスの方へと歩み寄っていく。
「ルイス様…申し訳ありません…」
「…?」ルイスが顔を上げ不思議な顔をした瞬間パンッと甲高い音が部屋に響く。ラウラがルイスの頬に平手打ちをした。
呆然とするルイスの横で呆気にとられ口を開けたまま固まるバルサ。
「ほんとうに…本当に好きなら…うじうじしないで命がけでなんとかしてください!」
自分のことのように悔しそうにしながらそのまま部屋を出るラウラ。
「おい、あれはないだろう?」バルサがその態度に慌てて引き止めようとするが「大丈夫だ…」とルイスに制止される。
「ラウラだから…あいつだからこそだ。今の言葉はラウラだから言える言葉だ。命がけで守られたあいつだから言えるんだ…」ルイスは叩かれた頬を抑えながら五年前のことを思い出していた
「レイ、お前ならどうするかな?」
ポツリと今は会えない友の名を呟くルイスに気がつきバルサはそれ以上何も言わなかった。
………………
「でも、どうする?今は焦らず時間をかけたほうがいい。エリサさんのことは心配するな俺が説得しておく、だから少し待て!」しばらくしてからバルサは静かに話し始めた。
「………」しかしルイスは無言のまま返事をしない。
再び沈黙が流れる部屋。
バルサの出した答えは時間をかけることだった。ことの原因はエリサがエルであるかもしれないという事だ、ならばラージュに戻りエルでない証拠を見つけ出せば問題は解決する、そう考えたからこそ帰りの日程を早めたのだ。
実際にルイスもそれしかないと思ってはいたがそれではダメな気がしてならなかった。
何よりミレーユは証拠がなかっただけでエリサがスタンフィードの血を引いていることはほぼ間違いないと言っていた、そこにきてエリサからの別れの手紙…
ここで離れてしまったらもう2度と会えないかもしれないという不安しか生まれてこなかったのだ。
ルイスは重苦しい息をゆっくり吐くと、その重い口を開いた。
「いや、一つだけ…」険しい趣で何かを言いかけるルイスだがためらっていることがよくわかる「一つだけ…方法がある…」
「?…」そんなはずはないと怪訝な顔をするバルサ
「バルサ…まだラージュに戻らないでくれ…建国祭の初日にお願いしたいことがある」
「何をする気だ?」鬼気迫るような険しい顔つきのルイスを見て嫌な気しか起こらないバルサ。