Episode02~獣から人へ、そして過ち~
いつぶりだろうか、転生前のあの時の事を“夢”としてみるのは……
ふと、目を開けると【VR空間】の青々しい草原が視界に映った。
伏せていた躯を起こし、四肢を伸ばす。
オレは四肢に力を入れると駆け出した。
ここは【Animal like】と云う仮想世界で人が動物に触れ合って過ごすVRゲームの中だ。
オレは、この世界で狼に扮して1/3日を過ごしている。
オレはーー 転生した【黒き魔獣】は人生を失敗した。
【朝倉玄斗】として、人としての生を歩み始めたもの……
「母、我 腹がへった」
「玄斗、僕でしょ」
「我、腹がへ…」
“カン”と振り下ろされた包丁が生のカボチャを半分にしたのを見た幼少期
前世の口調で言葉を交わせば、母親に言葉遣いを直され…直した。
「玄斗、どうしてお友達を叩いたりしたの」
「僕は群れの頂点に立つ、その第1…」
「玄斗、お家に帰ったら稽古の時間ね」
「…歩ひゃい!」
群れの長として、幼稚園の男児の頂点に立とうとしては母親お得意の武術で畳の上を転がるハメになり…
「玄斗、あなたって子は」
「アイツ、手下の悪口言った!」
「手下じゃないでしょ、お友達!」
小学生に上がったら、ケンカを吹っかけてきた上級生を拳で殴って泣かせたら、母親の拳骨に気絶をし…
小学校の高学年の頃、販売されたVR格闘ゲーム【ザ・ナックル】
母親に強請って、買ってもらい来る日も来る日も【ザ・ナックル】で遊んだ。
中学2年のジュニア部門で地区大会に出たら優勝し、県大会も優勝して全国大会に出たものの。
その決勝戦にて、問題が起きた……
3本勝負で2勝したオレは何故か不正した事になって、チャンピオンになったとして世間からバッシングされた(後に旧友が調査してわかった事だが、主催者側に不正行為した者がいた。
旧友が直々に処罰したらしい)
学園では【偽チャンピオン】と忌み嫌われ総スカンを食らい、そこから17才の今に至るまで不登校のVRゲーム世界に引きこもりになってしまった。
「……ふぅふぅ…… 今日もいい汗かいたな」
VR空間で汗をかくはずなど無いが、それでもこうして草原を駆けるのは気分が良い。
その時“ガサガサ”と草原を踏みしめて、やってくる者がいた。
いつぞやの女神……天照だったか。
「……やっと、見つけただぉ。ケロちゃん様」
「玄斗です。今はその名で呼ばないで貰えますか、天照様」
「私も今は天ちゃんだぉ、それにしても探すのに苦労しただぉ~。
まさか、人気動物ゲームの人っ子一人も居ないサーバーに隠れていたなんて」
「誰の邪魔も入らない、清々しい草原を一人占め。
それで、何か用ですか?」
「…玄ちゃん様、【世界】に復讐したくないかだぉ」
黒き獣に問いかける彼女の顔は邪悪な笑みを浮かべていた。




